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東大陸 エンキドダンジョン 攻略中

やってます。

 彼等はその怪しげな物体を見つめてしまった。

 カラン・カラ~ン・カラララ~ンと言う音を立てていた物体を。


「何だよ、アレ」


「落ち着け。ただの金タライだ」


「待てよ、ここダンジョンだぞ。何であんな物が落ちてくるんだ」


「そうだったー」


「金色、金か?」


「落ち着け、真鍮だろ」


「フム、面白い。持って帰られねば」


「リーダー、そんなこと言ってる場合じゃ無いだろ」


 呆気にとられて若干パニック気味の一行に在って冷静になるのが早かったのは歴戦の軍曹だった。


「鈴出満少尉、大丈夫ですか。怪我は?」


「ベッカー軍曹か。ちょっと驚いたが問題ない」

(頼みますよ。俺はあんたら少尉の世話をするように言われているんだ。始末書は書きたくない)


「それよりも皆さん部屋を出ませんか」


 意外にも落ち着いている鈴出満少尉が言った。


 そうだな。と言って部屋を出ようとしたその時、不用意に壁に手をついた者が居た。マラドーナだ。神の手か?

挿絵(By みてみん)

 スコーンと、手を付いたところのブロックが反転した。入り口に立っていたキャリーの胸部を直撃。


「グファ」


 女子とは思えない声を上げ蹲るキャリー。心配して近寄るマクマスター。


「大丈夫?潰れた?」


「なにが潰れるのよ!痛ったー。このアホ、マラドーナ」


「ご、っごめん。クソ、なんだよこのブロックは」


「変な仕掛けだな。これでは人を殺せるレベルの仕掛けじゃ無い」


 と言って、ランボーがさっと元に戻した。その時である。ブロックが戻した勢いのまま今度は今度は逆向きに回転。キャリーを世話しているマクマスターの後頭部を直撃。

挿絵(By みてみん)

 ランボーの戻した勢いのままである。

 コ~ンと、いい音がした。


「・・・」


 無言でランボーを睨みつけるマクマスター。


「いや、その、なんだ。元に戻そうとしてでな・・・・・、すまん。俺の不注意だ」


「そうだぞ、仕掛けを元に戻してはいけないのは知っているはずだ」


 アルゼンティンが注意する。死んでいた可能性もあったのだ。他の仕掛けが発動したかも知れない。


「本当にすまん」


 頭を下げるしか無いランボー。

 その後ろでムカライが二人の探索役に聞いている。


「サクリエス、ルクレール、もう仕掛けは無いか」


「申し訳ないです。見抜けなかった」


 ルクレールの言。


「俺もだ、危険な物なら見抜けたと思うんだ。そういうスキルだから」


 サクリエスも答える。


「私も見えなかった。と言うことは大怪我や致死性の仕掛けでは無いと言うことか」


「でも、どうしてでしょうね。ここはダンジョン。至る所に致死性の罠が有っても不思議じゃ無い」


「そうだな、まず不思議なのはあの金タライだ」


「経験は?」


「有るわけない」


「我々もです」


「それのあのブロックの仕掛け。まるでわざとやっているようだ」


「そうですね、面白がっているのかも」


「面白がるか・・」


「遊ばれていますか」


「そんな気がするが、かと言って手を抜いて本物の致死性の罠に遭ったら目も当てられん」


「そうですね」


 三人で遠い目をする。

 後ろでは騒がしい。


「リーダー、ムカライ殿。どうしますか。帰りますか。まだ進みますか」


 サブリーダーであるマライアが聞いてくる。


「あそこの交差点まで行こう。サクリエス頼む」


「分かった。交差点まで行く」


 サクリエスは交差点まで行く手前でまた数個の仕掛けを発見。印をする。後方ではマップに書き込みが忙しい。

 サクリエスが交差点まで行き【待て】をする。そして首をひねった後アルゼンティンを呼ぶ。


「なあ、俺ではよく解らんのだが左側通路の先五十メートに何か居そうな気がする。右は見ての通りだ」


「ちょっと待てよ」


 そう言ってアルゼンティンは精神を集中する。集中しての気配探知なら六級の探索よりも上だろう。時間が掛かるのが欠点だが。

 しばし集中する。やがて言った。


「居るな。出来るだけ気配を消しているが居る。複数だ」


「居るのか」


「ああ。居る。どんな奴かは分からん」


「リーダーに相談だな」


「だな」


 と言う事でと、ムカライを中心に相談を始める。


「何が居るのか分からないからな、迂闊なことはしたくないと思う」


 クリントンが言う。


「でも、この階層で今まで出てきた奴を考えるとたいしたことは無いと思う」


 サンダースが言う。


「「変な仕掛けが無ければいい」」


 キャリーとマクマスター。


「「俺たちもだ」」


 マラドーナとランボー。


「「同感です」」


 日本の四人。


「この戦力なら大型上位でもやれるでしょう。上位種も可能かも知れない」


 シモンズだ。


「上位種が単独で居ることは無いからな」


 マクドォウガル。


「でも曲がり角の向こうだと私の魔法は届きませんし」


 マライア。


「日本の、何か言い道具は無いかな」


 ムカライ。


「道具ですか?有ると言えばあります。爆発物ですから五月蠅いですよ」


 獣人達が顔をしかめる。エルフもだ。


「どんな奴なんだ?」


「昨日の手榴弾をあそこの曲がり角の向こうまで飛ばします」


「出来るのか?出来ればやってくれ。昨日の爆発でも混沌獣が来なかったから多分大丈夫だろう」


「どうしますか」


 ベッカーが聞く。実行はベッカーのようだ。


「良しやってくれ。責任は俺が持つ」


 一応上官である鈴出満少尉が決めた。


「分かりました。では擲弾筒を出しましょう」


 そう言って昨日手に入れたばかりの拡張袋から擲弾筒を取り出す。


「弾は手榴弾でいいですね」


「構わないだろう。万が一向こう側が行き止まりだと爆風がこっち側に全部戻ってくるから榴弾の威力だとたまらん」


「何発行きますか」


「いくつ持ってきたっけな」


「四基です」


「全部行ったれ。二基撃ってしかる後2残りの二基だ。それでも榴弾よりは威力が無い」


「了解。弾込め願います」


「分かった」


「水平撃ちでやりますから射程の調整は必要ないです」


「了解」


 四基の擲弾筒に手榴弾を装填する。


「皆は交差点から出ないで下さい。昨日と同じ防御姿勢でお願いします」


「「「分かった」」」


 耳ペタンで布グルグル。今日は帽子も持ってきた。


 ベッカー軍曹は二十キロくらい有る自家製発射台を足下に置き、擲弾筒を四基その横に並べる。チョコチョコ台座を調整していると「撃ちます」と言った。


「皆さん撃ちます。いきますよ」


 皆頷く。

 それを見た鈴出満少尉が


「撃ー!」


「発射、発射」


 と言って二発撃つと手榴弾が最初の奴が着弾する前にもう一発撃つ。普通は出来ない。強化されているから初めて出来る。

 鈴出満少尉とベッカー軍曹はその場に伏せる。


ドドーンと二連発の威力が凄い。爆風が抜けた後すぐに残りの二発を撃つ。何か声がしているが気のせいだろう。


「発射、発射」


 再びドドーンと激しい音がする。

 爆風が抜けた後、上因少尉と土尊少尉が四式小銃を構えて援護位置に付く。鈴出満少尉とベッカー軍曹が後退する。

 

 プギーと言う鳴き声と共にハイシシが数頭飛び出してきた。その後ろにはグレーボア数頭がいた。結構血まみれの奴もいる。

 撃ちまくる二人。と言っても二十発だが。

 二人が撃ち尽くした時、後方からマクドォウガル、ベレナス、アルゼンティン、ランボーの四人が突撃していく。サンダースとシモンズの二人の盾は交差点から出て万が一四人の間を抜けてきた奴の行動を制限する。盾の後ろにはトンプソンとクリントンの魔法使い二人が控える。

 魔法使いが実力を発揮する前に四人で全部始末を付けた。


「混沌獣部屋なのか」


「そうだったみたいね」


「見てくる」


 ルクレールが奥へ向かった。あれだけ突進してきたのだから罠は無いはずだ。それでも曲がり角では警戒してゆっくりと進む。

 ルクレールが奥から出てきて両手で丸を作る。

 皆奥へ向かうが日本人は薬莢を拾って擲弾筒を拡張袋にしまう。奥へ向かう途中で倒されたハイシシとグレーボアを見るが手榴弾の破片を喰らっている物が多く肉用は諦める。魔石だけか。

 奥へ行くとハイシシ数頭が倒れている。手榴弾でやられたのだろう。合計でハイシシ十四頭とグレーボア六頭が倒されたことになる。


「この数だと四級のチームでは苦しいな」


「そうだな。まずやられるだろう」


「この奥はどうする」


「また明日にする。通路が広いせいで仕掛けを見極めるのに時間が掛かる。ゆっくりでいい。確実に行こう。この奥は曲がりくねっている手間が掛かりそうだ。今日は左側を進む」


「分かった。ムカライ」


挿絵(By みてみん)


 一同は交差点まで戻り、左へ進むことになった。直線でよく見える。部屋の入り口らしき物が幾つか見える。手間が掛かりそうだ。

 

ハイシシ十四頭とグレーボア六頭のいわゆるモンスターハウスみたいな?

六級の剣士や重戦士なら一人でもやれます。


肉の供給はかなり潤沢ですから破片入りは持って帰りません。


次回 二月六日 05:00予定

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