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東大陸 エンキドダンジョン 攻略開始?

日本と王国連邦のチョンボが有りました。

たいしたチョンボでは有りません。

分かっていると思いますがダンジョンは最後です。

 その名をエンキドダンジョンギルドとされた臨時ギルドの会議室には、エンキド口、ケネディ口、秋津口の三箇所に入った冒険者達の代表が集まっている。

 一番探索が進んでいるのがエンキド口の草原ダンジョンだった。既に二層への通路を見つけ侵入している。

 ケネディ口は草原部分は早々と探索が終わり今は洞窟部分に取りかかっている。まだ二層への通路は見つかっていない。有るなら洞窟部分だという見解だ。

 秋津口は三十分だけだが、それでも通常のダンジョンとは違うと思われた。


「フェルナンデス殿は銀級ですな。ダンジョン経験も多いと言われる。このダンジョンをどうお思いか」


 臨時ギルド長のベッケンバウアーが尋ねた。


「そうですな。エンキド口の二層はまた草原だと言いましたな。であれば、ケネディ口とも秋津口とも違う。可能性としてはかなりの多階層構造か、全く違う三つのダンジョンという可能性もあります。私の数十回しか無いダンジョン経験で言えることはこれだけですな」


「数十回ですか。あまり多くないような気がしますが」


「そうですな。回数は多くは無いでしょう。探索したダンジョンが六十二ヶ所、ダンジョン侵入回数が八十四回、ダンジョン内滞在時間が四千二百八十日。最深部まで行ったダンジョンが三十三ヶ所です」


 ムカライはこう言って、現地勢を牽制する。


((((とんでもないオヤジだ))))


「エルフで寿命が長いのでな。このような探索も出来ようというものだ。ギルド依頼の期間消化数が少ないので銀級ですな。今回の日本政府からの依頼が成功とされれば金級と伺っております」


 更に追撃も忘れない。


(((((実力者過ぎる)))))


「エンキド口の難易度は通常ダンジョンに比べると低いので探索は順調に進んでいますが、気になる事が有るのですよ」 


「どういう事でしょう」


「それは俺から」


 エンキドダンジョンを調査している幾つかのチームの中から「紅い閃光」のリーダー、レハレッタが発言する。


「どうもエンキドダンジョンはフェルナンデス殿が言うように特異なダンジョンという気がする。俺たちは二層の広さが一層よりも広いと感じている。まだダンジョン外縁に達していないので測量はしていないがどうもそんな気がする」


「広く感じるですか。その感覚は大事ですな。ちょっとしたことを感じ取ることが出来れば危険を未然に防ぐことも可能になる」


「ありがとうございます」


(((こいつ)))


 自分の優位さを示しておいて、相手を褒める。中々やるオヤジだった。


「秋津口は着手が遅かったのでまだ入っただけですが、アイテムは豊富な気がしますな。一部屋であれだけの数だ。奥へ行けば質も上がるという期待も有る」


「アイテムのことなのですが、フェルナンデス殿は日本に全て持ち帰ると?」


「はい。秋津口の権利は日本が100%持っていると言うことですので」


 ざわつく室内。


「五%じゃ無かったのか」

「どうしてだ」

 等の発言が目立つ。


「静かに」


 ギルド長が鎮める。


「秋津口の権利は確かに日本が百%持っている。国外持ち出しにも税は掛からない。外交上の理由と神託が有ったせいだ」


「「神託?」」

「「外交上の理由とは?」」


「待て、落ち着け。今説明する。日本が持っている権利は秋津口だけだ。他の二ヶ所は王国連邦のものだ。日本には権利は無い。これは連邦政府が決定した。税が掛からないのは外交上の配慮からだ。日本は連邦に有る混沌領域への対抗に力を貸してくれることになっている。これに対する礼みたいなものだ」


「それなら判らんでも無いが、神託とはなんだ」


「神託な。お前らランエール神殿は知っているだろ。神殿の祈りの間で信者や観光客が祈りを捧げているときに女神セレーネ様が降臨あそばされたんだ。そこで秋津口は日本の物と神託を下された。もう決定するしかないじゃないか」


「女神様のお墨付きが有るのか」

「じゃあしゃーないな」


「分かってくれたか。お前達が手にしているボラール素材の加工品だが、日本が混沌領域への対抗手段として供給してくれているものだ。しかも、従来に比べればかなり格安だ。とどめだが、ドワーフ作だぞ」


「日本からは知っていたが、ドワーフ作だと」

「俺は日本からなんて知らなかった。確かに従来に比べれば少し安い。しかもドワーフとかウソみたいだな」

「でもこんな良い物が何でこんな値段なんだ」


「それは俺も分からん」


 ギルド長が言ったところで、ムカライが発言を求めた。


「どうぞ」


「失礼する。そのボラール素材だが私もお披露目の時に立ち会ったよ。ちょっと欠点が有るのでな。同等の製品に対して安値になっている」


「欠点?」


「皆まだ気がついていないのか。おかしいな、日本からは説明があったはずだが」


「買った時に説明なんて無かったぞ。手入れの手引き書があったが読めない文字だった」


「見せて貰えるかな」


「今持っているので、出すよ」


 ポーチから取り出した。拡張袋のようだ。


「ふむ。日本語だな。私も読めん。これは日本のミスか。口頭でも説明しているはずだが途中で消えたな」


「口頭で消えるか。よく有ることだ。それでそこには欠点も書いてあるのだろう」


「実はな、全部の製品だが魔力を通せる。魔法使いの手には渡っていないのか?」


「今回のメンバーでは持っていないな」


「そうか、魔力を通すと威力が上がる。剣は切れ味が数段増し。盾は強度が上がるしシールドバッシュの威力が上がる」


「それ、ホントなのか」


「事実だ」


「普通に使っていたぜ。なら次からは魔力を通すか」


「俺の防具がそうだから、魔力を通してみる」


「どうだ?」


「分からん」


「なんだそれ」


「防具だからな。攻撃を受けんと真価が分からん」


「でも、そんな凄いのに何でこんな安い?」


「そうだな、これを見てくれ」


 ムカライは自分の拡張袋からボラールの剣を出す。


「誰かこいつに魔力を通して見ろ。どういう欠点なのか良くわかる」


「俺がやろう」


 ギルド長が手を上げた。


「うぉ!なんだこれ!!」


「綺麗だろ」


「綺麗だけど、こんなに光るんじゃあ」


「それが欠点だ。だから安い」


「それでこんな色が付いているのか」


「塗装して光が漏れないように努力したよ(ドワーフがな)」


「なあ、これ使ってみてもいいか」


 ギルド長はウルウルした目でムカライを見ている。


「はあ、構わない。今試し切りの木材を出すので外に出ようか」


 ギルド長はワクワクしている。

 外の広場で試し切りをする事に成った。

 ムカライが木材を出す。


「この剣は叩き付けるより切る方が威力が出る。刃を滑らせろ」


「分かった」


「フン!」


 ギルド長は魔力を通して光らせてから気合い一閃で木材を横に切った。

 何の抵抗もないように切れた。


「ウソだろ」


 ギルド長が唖然としている。


「ギルド長はなかなかの腕前だな。とても利き手の指が少ないとは思えん」


「知っていたのか」


「見れば分かる。今のは利き手じゃない方だろ。それでその切り方だ。さぞや名のある冒険者だったんだろう。そう言えば我々の方の奴が空中十文字斬りが出来るとかいって遊んでいたぞ」


「なに!おい、誰か今切った木材を投げてくれ」


「やるのか」


「この切れ味なら出来るさ」


 投げるよ、と声がした。


「頼む」


 えい!


「フン!フン!フン!」


 木材は空中でバラバラになった。


「面白い。絶対買うぞ」


 そこからはまた、どこかで見た光景だった。

 途中から話がそれた会議はグダグダに終わった。


 翌日、再びダンジョンに潜る面々。

 ムカライは手持ちのサンプルとして渡された魔法使い用の杖を王国連邦の魔法使いに貸し出してダンジョン内で試して見ろといってある。一応使い方は言ったし欠点も言った。防具を持っている者には付属の紐 ボラールのはらわた製 を肌に触れさせるように指導する。それで魔力が通る。


 一行はたった五〇メータだがマップを見て慎重に歩みを進める。死体が一時間ほどで消えるのだ。既に印は消えていた。

 昨日の部屋にまたダミーを投げ入れる。なにも起こらない。まだ復活していないのか、それとも一回だけなのかは分からない。


 サクリエスを先頭に歩を進め次の部屋に着く。中を見ると昨日居なかった混沌獣が居る。ウザミとハイシシだ。ひょっとして昨日手前の部屋を攻略したせいかもしれない。

 サクリエスとルクレールに覗かせると、仕掛けは無いがアイテムは有りそうだとルクレールが言う。

 ムカライは迷った末、日本人部隊を指名した。四人は四式小銃を置き銃剣や鉈を手にする。もちろんボラール素材だ。

 四人は魔力を通すと刃の部分だけが光る。魔力を通すのを止めると光が消えるのを確認してから魔力を通さない状態で部屋の中に入って戦闘を開始した。

 ウザミは飛んで来た所を柄尻で殴られハイシシは首を切りつけられた。五分くらいで十頭ずつの混沌獣は倒された。

 見ていた一行は「こいつら三級相当と言っていたが四級くらいは力がありそうだ」と思った。

 昨日と同じようにまず魔石を回収する。拡張袋に入れてもいいのだが日本人の訓練だと思い実行させる。

 魔石を回収し大雑把に血抜きをしてから拡張袋に収納する。

 部屋のアイテムは昨日と同様だった。ホクホクの一行である。


 だが部屋を出ようとしたとき、土尊少尉がアレと言った。カチと音がした。


「全員部屋・・・・」


 言い終える前に皆部屋から出ようとするが、反応が遅れた日本人のうち鈴出満少尉の頭に上から落ちてきた。

 落下物は鈴出満少尉の鉄鉢に当たってカンと言う音を立てて地面に落ちた。


 カラン・カラ~ン・カラララ~ンと言う音を立てていた。


印が消える面倒なタイプのダンジョンです。


上から落ちてくる物で

カンと言って

カラン・カラ~ン・カラララ~ン

となれば、アレしか有りません。


次回 二月四日 05:00予定

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