東大陸 エンキドダンジョン
この作者ですから展開は遅いです
ダンジョン発生の報を受けたギルガメス王国連邦の統一ギルドは大々的に冒険者の派遣を行うのだった。
統一ギルド冒険者受付の前には長蛇の列が出来ていた。
掲示板には
エンキド領域が消失しダンジョンが発生した。
新規ダンジョン発生につき周辺探索及び内部の調査を行う
上記に関わる冒険者を募集する
募集期間本日より十日間
1.ダンジョン内部の調査要員
条件 五級以上の冒険者
チームで五級とされている場合は四級以下の人員の参加は認めない。
規定 探索の結果得られた取得物は全量ギルドに提出。後日分配とする
報酬はダンジョン侵入一日につき一人銀貨一枚。
注意事項 内部情報は新規ダンジョンであり無い。
ダンジョン内での安全確保は新規ダンジョンであり行われていない。
ギルド調査部と連邦軍の調査部隊も進入する。
進入口は三箇所確認されている。
共通の入り口か別階層への入り口かは不明。
従来のダンジョンであれば同一ダンジョンへの入り口であるが
未確認であり同一ダンジョンへの入り口とは限らない。
参加者が多すぎるとギルドが考えた場合、制限する場合もある。
ダンジョン権利者 日本
2.旧エンキド領域の資源採取要員
条件 級は問わない。
五級以上の冒険者の参加は四級以下の冒険者の保護を条件とする。
規定 採取物はギルドでも出店で売るも自由。ギルド買い取り価格は通常。
参加者全員に報酬として一日半小銀貨一枚。
注意事項 現地にて混沌獣は確認されてはいないが、居るものとせよ。
安全確保は参加の五級以上の冒険者とギルド保安員が行う。
日本も安全確保に協力してくれる。
共通事項
移動は統一ギルドが責任を持って行う。往復の交通費は必要ない。
現地に宿屋、商店は無い。出店で商業部と協議中である。
出店は確実と思われるが各人最低限の装備を忘れないように。
現地への移動は日本が造った橋を通り直通でいける。
日本も多少の出店は出してくれる。
期間
ダンジョン内調査は最大二週間とする。
旧エンキド領域の調査兼資源採取も最大二週間とする。
出発 本日より。
以上
同じ頃、統一ギルド商業部も混乱を極めていた。
「うちは出すぞ」「儂の店は大丈夫だろうな」「俺ん所は行けるよな」「出店しなくても行くのは自由なのか」
等五月蠅かった。
掲示板には
エンキド領域が消失しダンジョンが発生した。
新規ダンジョン発生につき周辺探索及び内部の調査を行う
上記に関わる冒険者を支援する出店業者の募集をする
募集期間本日より五日間
条件及び注意事項
ダンジョン内部取得物はすべてギルド扱いとする。
旧エンキド領域での採取物は買い取り自由。
出店は非常用店舗をギルドが開設する。
ギルド開設店舗には出店料は無料。
自前の店舗開設は自由。
出店場所は規定の場所が在り、そこならば出店料無料。
出店無料場所は、一辺百メートの四角であり、既に整地されている。
出店料無料への募集多数の場合、公開での抽選とする。
現地への移動はギルドが責任を持って行う。交通費は無料。
日本も多少の出店は行うので商習慣の違いに注意せよ。
宿屋の開設はギルドが行うが、日本も協力してくれる。
出発は本日より。
以上
連邦政府は混乱している。ダンジョン発生の報に。
「エンキド領域消滅、同時期同所にてダンジョン発生」
ダンジョンは数十年前、欲をかいた構成国の国王が領域の混沌獣を全滅させた時以来だ。
記録によると、ダンジョン発生と同時にスタンピートが発生。出てきた混沌獣は領域で確認された混沌獣の二段ほど上だったという。
当然その国は大打撃を受け、現在は連邦自治区だ。その地方では今でも子供の名前にその国王の名前は絶対使わない。人を馬鹿にするときはその国王の名前を相手に付けるらしい。
問題は同時に女神降臨があったこと。神使誕生のためだという報告が来ている。
「なあ、この『神使が生まれた場所のダンジョンはあなたたちにかなり有益と思いますよ』と言う言葉は監視のため派遣した軍・ギルド・研究者の三人と護衛の者達が皆聞いている。と言うことはだ、このダンジョンは絶対に確保して潰してはいけないと言うことであろう。違うか」
「エンメルカ工部卿、確かにその通りだが連邦直轄という意味であろうな」
財務卿のセルネルカが釘を刺す。
「勿論だ。私は王国連邦に忠実な閣僚だ。個人的には凄く手に入れたいが、今はそう言っている場合では無い」
「信じて良いのだな」
「信じて頂きたいものだ。混沌領域に対する対応の仕方が変わってくる。そう思わないかね、諸君」
「確かに変わるでしょうな。ダンジョンの内容にも因りますが」
ダイクストラ商業卿だ。エンメルカ派閥であるが、急進派では無く慎重派らしい。
「それに女神セレーネ様は『ダンジョンを潰すと、近くに増えますよ。凶悪な方に向かいます。絶対ダンジョンは潰さないように』と言われたと言う。『ダンジョンも混沌領域と同じなのです。積極的に間引けば凶悪さは減ります。あくまでも減るだけです』とも。ダンジョンの管理方法も変えなければなりますまい」
と続ける。
「凶悪なダンジョンは間引きを強化すると?」
法務卿メディチ侯爵が問う。
「ギルドと軍と協議しなければいけないでしょう」
「それは軍務卿と商業卿でやって貰いたい」
連邦主席カルロ・デ・マロイスが決定した。
「「畏まりました」」
「ダンジョン権利者は日本か。これなら日本はこの国から離れられまい。諸君よくやってくれた」
「「「ありがたき」」」
「それと連邦議会を至急開催したい。本来は三ヶ月後であるが、ここは緊急開催をすべきと考える」
「「「賛成です」」」
「では法務卿、手続きを進めるように」
「畏まりました」
「主席閣下。此度の日本との接触がすでに、ガンディス帝国とラプレオス公国に知られております。如何いたしましょう」
外務卿リシャール・レスターマイヨが主席に伺いを立てる。
「どういう事だ」
「両国とも日本に会わせろと」
「会わせろなのか」
「はい」
主席を含めほぼ全員がため息をつき、外務卿を心の中で罵る。
((((そこを交渉するのが外務卿の仕事だろう))))
外務卿は派閥から距離を置いた少数の中から選ばれた。どちらの派閥も二つの国に手を出されたくなかったからだ。仕事は二つの国からの風除けである。だから変なことをしなければ有能である必要は無かった。しかし、ここまでとは。
「外務卿「日本とは交渉中であり未だ予断を許さず」と伝えろ。ああ、そうだ。二国のことは伝えておくともな」
「畏まりました」
その後も会議は続いた。
エンキド統一ギルド発着広場では、驚きの集団がいた。
「なあ、馬がいないぞ」
「そうだな、でもここまで走ってきたぜ。見てたから分かる」
「なんか白い縁が付いた赤い丸が付いているがアレは何の印だ?」
「アレは日本の印だそうだ」
「知っているのか、ライダン」
「又聞きだけどな」
そこに統一ギルドの職員がやってきた。商業部と冒険者部の拡張袋持ちだ。しかも大容量の奴だ。
何か日本の奴と話している。
保安部や総務部の工作担当もやってきた。出張所造りとしか思えん。
ドアが開いて乗り込んだ。走り出した。デカい方には後ろから乗り込んだ。
皆唖然としている。
「「「本当に走った」」」
「「「馬いらないんだ」」」
走り出したのは少数持ってきた四式機動乗用車とトラックだ。四式は従来の機動乗用車に比べて倍の馬力と五割増しの車体を持つ最新車両だ。
「ほんとに走った」
「信じられん、馬がいらないとは」
「乗り心地も結構いいぞ」
「馬車より速いぞ」
等と五月蠅い。以前日本の交渉団が乗った馬車は高級仕様である。
やがて仮設橋を超え設営場所へ到着する。
「もう着いたのか」
「速いな」
「おい、あんなとこに橋在ったか」
「いや、知らない」
「日本が造ったらしい」
「まだ一ヶ月も経ってないぞ。ウソじゃ無いのか」
「じゃあ誰が造ったんだ」
「そう言われると」
こちらですと一同呼ばれ向かう。
「ここと後二箇所同じ広さで造ってあります。一応配置はこう考えていますが、そちらの都合がいいよう変えてくれて構いません」
そう言って絵図面を渡される。共通語で書かれているので理解できた。
「まず大通りを確保か。当然だな」
「うん、中々考えられているが、こちらの実情に合わせよう。変えて良いと言っているし」
「そうだな。まずギルドの場所か」
「じゃあ俺たちは地面を見てくるから」
ダンジョンは何故か入り口周辺が草も生えない。そのためすぐ分かる。その入り口周辺の草が生えない大きさが内部の大きさと関係が深いことも長年のデータから関連性が分かっている。
このダンジョン、仮称エンキドダンジョンは入り口周辺が直径三十メートだ。内部はおよそ五十倍の直径で階層は三箇所の入り口から最低三階層と予想される。
大きさ的には中の小だろう。
ダンジョンへの入り口は三箇所確認されている。
普通は入り口の名前なんか付いていない。明らかにおかしい。
それに入り口のサイズが普通じゃ無い。でかい。
小さいエンキド口でも幅八メート高さ七メート近く有る。
ケネディ口では幅十メート高さ七メート近くだ。
それよりも秋津口が異常だ。幅十メート高さ八メートってなんだろう。
話によると女神セレーネ様の祝福があったという。そのせいだろう。気にしてはいけない。
日本が造ってくれた広場に仮設店舗を展開し終えた頃、続々と冒険者や商人を乗せた馬車がやってきた。
ダンジョンの調査はこれからだ。
中に入るのは後で。
作者のダンジョン歴はウィザードリィⅡだけです。8ビットのパソコンでやったっだけです。
後は「なろう」で読んだだけ。
どうなるんでしょうね。
有益とか書いちゃったし。
このお話で出てくるダンジョンは広くて浅いダンジョンです。
次回 一月二三日 05:00予定