美人な彼女の倒し方。
ついったー▶︎飯倉九郎@E_cla_ss
よろしくお願いしますー。
ソウを中心とするあのチームの構成員は、全部で四人だ。
もちろん、僕を除いてね。
彼女たちが構成員をまだ隠していたならわからないけれど、少なくとも僕が知る人間は全部で四人。《黒塵ノ矢》の異名を持つ長刀を持ったソウ。そしてどんな遠くの音も聞き取ることができるオンちゃん。そしてそこにいるんだと認識していなければ見失ってしまう程に気配の薄いインちゃん。そして最後に彼女らのチームのリーダー兼マスコットキャラであるテンちゃん。
この四人があのチームの構成員であり、今回僕を囮としてカイザー様から物資を強奪していった実行犯だ。
彼女らは皆女で、たった四人という数字だけ見れば心許ないチームにも思えるけど、でも実際、彼女たちのチームワークは相当のものだ。
まずはテンちゃん。彼女は見るからに小学生くらいの幼女ではあるが、しかしチームのトップとして皆の信頼は厚い。皆彼女を護るために、という統一意識の中で動いてる。だから彼女たちを根本から負かすには、彼女らのリーダーであるテンちゃんを始末するのが手っ取り早いだろうね。
それ故、まず僕らが取るべき行動は、彼女たちが朝、政府からの物資を取りにポイントに出かけている間に、彼女たちのホームである診療所になだれ込み、一人留守番をしているテンちゃんを見せしめに殺す事だ。
ああそうだ、殺すんだ。そうすればあのチームは精神的に瓦解する。これは必須事項だ。
次はインちゃんだ。もの凄く影の薄い、言い換えれば見えないステルス少女。彼女のその気配の薄さは神がかり的だ。舐めない方がいい。ま、元引きこもりの親殺しだけどね。
でもあの能力はあなどれない。おそらく納屋の中の物資を直接盗んでいったのは彼女だろう。あの子ならあの状況下で、薄暗い納屋の中にいれば誰も気付けない。そう、それほどに見えないんだよ。
第一関門はここだ。
とにかく、おそらく診療所に入ると、その子が陰から襲ってくる。そしてその不意打ちは確実に止められない。あの子に関しては、どこかにいるかもしれない、という認識じゃあ決して見えない。そこにいるんだ、って注視しなければ見えない。
じゃあ彼女をどう対策するか。簡単だ、初めに一人、誰かが襲われれば良い。誰かが犠牲になれば、それをやったインちゃんが確実に姿を現す。殺した人間の側にいるんだからね。彼女は《黒塵ノ矢》と呼ばれるソウみたいに一瞬で動けはしないからね。
それじゃあ誰かが一人犠牲になるって? そうだね。だから? これは致し方がない犠牲だ。別にわざわざ死んでくれと言わなければいい。何も伝えずに、診療所に踏み込ませれば良い。その中で一番最初に殺された人間は運が悪かった。それでいいじゃないか。
それがチームというものだろう?
異論はないね。じゃあこれでインちゃんの件は解決だ。
次はオンちゃんだ。彼女は猫よりも睡眠が好きな、大食い少女だ。起きるときは決まって食事が運ばれてきた時か、敵が近づいて来た時。そう、彼女は異常に耳が鋭い。昔音楽をかじっていたらしくてね、そのせいかあの子はどんな遠くのどんな小さな音も聞き分けてしまう。絶対音感という奴かな。知らないけれど。適当さ。
第二関門はここだ。
オンちゃんのある種完璧な索敵能力があれば、敵――つまり僕らが診療所内にいることを感づかれる。それを回避するために僕らは一旦診療所の外に逃げる。彼女が気に止めないくらい遠くに。そこで彼女たちが戻ってくるのを待つんだ。
そして彼女たちが戻ってきたのを一人だけ張りつけた斥候が確認したら、そこで僕らは動き出す。
いや、音を立てないように静かに近づいても無理だよ。あの子は絶対に気付く。ただオンちゃんは確かに耳はいいけれど、その耳でいくつもの音を同時に聞き分けることはできないという弱点がある。何か一つの音に集中してしまったら、他の音への意識が散漫になるんだ。
だから僕らは、音を出す。そう、あえて大きな音を鳴らすんだ。納屋にあった花火とか、鉄パイプを打ち鳴らすとかして、とにかく大きな音を鳴らす。そうすれば、オンちゃんは確実にその音に気付く。気付いて何事かって注意する。
その隙に、僕らは音のする反対方向から侵入するんだ。もちろんできるだけ忍び足でね。そうすればさすがのオンちゃんもかなりの距離に近づくまで足音に気付かない。でもそれでいい。気付かれても、もう手遅れだ。僕らは診療所に入ると共に、一気に出入り口を塞いで、あとは診療所内に追い詰められたネズミをゆっくりと攻め立てればいい。
これでオンちゃんの件は解決だ。彼女に戦闘能力は無いからね。追い詰めれば何もできやしない。
そして次。最大の難関がここだ。
《黒塵ノ矢》。これを聞いた事はあるんでしょ? そう。まるで矢のように一瞬にして間合いを詰め、瞬く間に人を殺していく、長髪長刀の殺人鬼だ。名前はソウって呼ばれてる。
彼女はチームにおける唯一の戦闘員で、その二つ名の通り、足が異常に速い。十メートル先にいても、瞬きしたら切られている程にね。おそらく仲間をやられて戦意を砕かれても、彼女は最後の最後まで抵抗を見せる。その気になれば十人や二十人なんて一人でやれるのかもしれない。この辺は推測だけれど。
ただまあ、彼女らを壊滅させる上で、最大の壁となることは違いない。
そして彼女を打ち倒す事が、僕にとって復讐を成し遂げた唯一の証となる。だから彼女を打ち倒す事、それは不可避だ。これなくして今回の作戦の成功はあり得ない。
だから君たちには、彼女を、ソウを追い詰めて欲しい。診療所内の、部屋の中に押し込めてほしい。できれば狭い部屋がいい。そこまで追い詰めて、彼女を出れないようにしてくれれば、後はその状態を維持しておいてくれたらいい。
あとは、僕がやるから――。




