わしゃオカンか
まぁパスタくらいは。
ついったー▶︎飯倉九郎@E_cla_ss
まあ偉そうに言っておいてなんだが、料理と言っても僕だってたいした物ができるわけじゃない。
ただ引きこもっていた時、個人的に健康には用心していたため、インスタントものばかりにならないように、自分で昼食などを作ったりしていた。こっそりと。
ソウが言ったように隣の部屋には取ってきた物資の中から、使えそうにないもの――正確に言うならば、使わないもの――をため込んでいて、そこから僕は今夜の料理のレシピを考えた。
でもそれにはたいした時間は掛からなかった。
まずは生卵や角切りベーコンと言った新鮮食品を処理しなければならない。冷蔵庫もないこの環境で、それらは一日も置けば腐ってしまうから。そこで僕は不要品の中から見つけた乾燥パスタの山を見つけて、レシピを決定する。
カルボナーラを作ろう。
乾燥パスタは常温で置いておいてもすぐに腐ることはない。こういったサバイバル環境に置いてはかなり重宝される食材のはずなのに、彼女たちはただお湯をわかしてパスタを茹でるという行為すらもできなかったようで、それは大量に不要品となっていた。
それを茹でて人数分のパスタを用意し、ガスコンロで熱したフライパンの上で角切りベーコンや、その他の使えそうな食材を塩こしょうと共に炒めた。ほどよく焦げ目が付いてきたところで、そのパスタを投入する。
そこに別の容器で、生卵、生クリーム、バルメザンチーズを混ぜ合わせたカルボナーラソースを投入し、軽く混ぜ合わせる。
これだけで美味しいカルボナーラの完成だ。
最後に緑色をふりかけたかったが、さすがにそんな気の利いたものはなかったようで、僕はソウが持っていたブラックペッパーを振りかけて彩りをつける。
サイドメニューには先程とってきたインスタントスープを作り、パスタにの横に添えてやる。
「ふわぁ」
そう、絞り出すような声を上げたのはオンちゃんだった。
彼女はキラキラと目を輝かせてテーブルに並べられた料理を見つめ、今にも飛びつかんとしていた。本当に猫の様な女の子だ。
「作ってて思ったんだけど、おそらくこれを最初に取った人たちも、カルボナーラを作ろうとしてたんじゃないかな。まるでそれを作るための必要な食材だけを選んでたみたいだ。そしてこれはきっとこの物資を詰め込んでくれている政府の人間の意図でもあるんだろうね。出来合いの物ばかりじゃなく、きちんと料理すれば一つの料理になるように食材を用意してくれている。なかなか考えられてるよ」
そう言って僕は自分の席へと座り込んだ。
まあ今の僕の言葉を、誰一人として聞いていなかったのは気付いたが。皆腹を空かせた落ち武者のように、目の前の料理に意識を奪われていた。
「じゃあ皆さん手を合わせて。いただきます!」
言うか言い切らないか、僕の作った料理に彼女たちはかぶりついた。
今まで碌な物を食べてこなかったのだろう。まだ暖かい料理は、彼女たちにとって至高の贅沢だろう。
彼女たちにそんな気持ちを与えてやれただけでも、満足な気分になれる。
ようやく役に立てた、そんな気がする。
「うまい! うまいじょシュン公!」
ばくばくと、小さな身体のどこに詰め込んでいるのか、テンちゃんがカルボナーラをかきこみながらそう叫ぶ。
オンちゃんも無心で食べていて、インちゃんはゆっくりとではあるが、少し嬉しそうに口に運んでいるように見えるのは、僕の願望か。
「どう、ソウ。美味しいかな?」
「シュン。君は天才か……ソクラテスも倒せるぞ」
そこまで言われることだろうか。しかもその例えはピンとこない。
でもソウもまた、美味しそうに美味しそうにパスタを口に運んでくれている。
「ところでテンちゃん。どうかな、僕をチームに入れてくれないかい? 僕なら食材を無駄にすることもないし、こうして炊事役ならうってつけだろう?」
「んぐ、おう! 好きに、ん、はぐ、しぇい! シュン公は、今から、幹部じゃ!」
こいつ簡単だなあ。偉そうな口調だけど、やっぱり子供なんだな、彼女も。
男の心を掴むなら胃袋を掴めと言うけれど、それは女にも当てはまるらしい。
「おかわり!」
一番に食べ終わったオンちゃんが皿を差し出してそう叫ぶ。寝言でもいろいろ言っていたが、この子は食べることが趣味なのだろう。
僕は改めて気合いを入れ直し、再度台所へと向かった。




