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一冊目『物語の説明は丁寧に』



スペリオ王国

世界の中心であり、完全中立国として存在するこの王国は『人材育成国』とも呼ばれている。

他国のありとあらゆる物や文化が入り交じり、色々な考えを持つ人種が集まるため、他国を学ぶには充分過ぎる環境である。

故に学園の数もかなり建っており、それぞれが異なる専門分野を持って活躍している。

現在他国を襲う『戦争』が限りなく減ったのはスペリオ王国が中立国として存在しているからでもある。


しかしそれは『表の顔』だ。

裏の顔、それはこのスペリオ王国が『マフィア国』だという事だ。

昔からこのスペリオ王国にはマフィアが存在し、その影響力は他国の上流貴族を操るまでに至っている。


スペリオ王国に存在する巨大マフィアは三つ。


マフィア『ネアトル』通称『詐欺師』

主に人身売買を生業とし、貴族の中心にまで影響力を持つ巨大組織である。

頭領の名はグリフィン・ヤンガステン。

金の亡者であり、度の越えた変人という噂である。


マフィア『黒猫』通称『戦争屋』

主に傭兵業、魔物などを狩るハンターを生業としているマフィアである。

頭領の名はリテナ・ブランツェコ。

伝説の傭兵キリテナ・ブランツェコの娘であり、戦争狂いの戦闘狂。彼女のマフィアは一つのファミリーであり、異常な統率をみせる軍隊である。


マフィア『シーレンス』通称『密売人』

スペリオ王国に『混じってはいけないもの』の輸入を商いとしているマフィア。

他国の魔法陣や魔道機構などの運び屋をする。

しかし、麻薬の密売に関しては禁止を徹底している。麻薬の存在はマフィア自身を破滅に向かわせるものであるため、麻薬の使用や密売はマフィア界の暗黙の掟とされている。

もし、麻薬に手を染めたマフィアがいるならば即座にほかのマフィアに潰されるだろう。


エナレスはそんな王国の現状を把握していた。


『異能力者』前世、エナレスが浅倉闇頭として生きていた世界では異能力者が世界を支配していた。

そんな『異能力者』の中の一人にエナレスは入っている。


エナレス自身も半信半疑ではあった。

『能力は魂に宿る』とされていた。もし本当に魂に宿っているのだとしたら転生しても使えるのではないかと思ったのだ。

結果は想像通り、エナレスは前世の異能力を扱うことが出来た。


しかし、それは『記憶を持ったまま転生した自分が特別だった』だけかもしれないが。


何はともあれエナレスは前世の力を用いて情報収集を行い、頭の中でスペリ王国内の勢力図を広げていた。


(マフィアはそれぞれが商売の縄張りを持ち、干渉することは無い)


マフィアの縄張りは上手に組み合わさっているが、王国だけは何処か浮いている。

貴族を抑えることも出来ず、民衆の支持も得ていない。最近では他国から来るハンター達に商売を荒らされて、マフィアに従属することを決めた商人達もいると聞く。


「王家の崩壊、ですか…。

やってみる価値はありますね」


エナレスはポケットから黒いナイフを取り出す。

全長30センチ、刃渡り15センチで柄は14センチ、小さな鍔があり、厚みは1センチ。

ナイフを包む柄の色は黒布。

彼はそのナイフを額に押し当てながら祈るように歌う。



「罪深き罪人に救済を」


エナレスは優しく傍らに置いてある色も文字も無い真白な本の表紙を撫でる。













▼▼▼


『さて、今日の特集はこれです!

《マフィアのボスに迫る!》

さて、今回は元マフィア、あの《ブラックウルフ》のボスに最も近かった存在、《東城久秀》さんにお越しいただきました!

宜しくお願いします。

いやー、それにしても、とても70歳には見えませんよ。筋骨隆々でとても逞しい、それに失礼ですが、毛もしっかりと生えて若々しさを感じます』


『ハハッ、お兄さんテンション上がってるねぇ。まぁ、最近は白髪も増えてきたから染めてはいるんだけどな。

身体の方はマフィアをやってた頃の癖で毎日欠かさず筋トレしている』


『なるほど。

さて、そんな東城さんには《ブラックウルフ》についてとことん語ってもらいましょう。

先ずは映画の話ですね。今年の夏に始まる《ブラックウルフ》の映画についてどう思われますか?』


『なかなか良い作品だな。俺や京都屋なんかも出てきて笑ったよ。迫力もあって震えたね。

ただマフィアを《よく見せよう》としている節が若干感じられたからそこはマイナスだな。マフィアはクズの集まりだ』


『確かブラックウルフはペテロから生まれたマフィアでしたよね』


『あ、いや、さ、酒場で俺と京都屋と笹島で飲んでてな!笹島が急に俺達でマフィアを作ろうって言ったのが始まりだったかな?いや、うん!そうだった!そうだった!』


『東城さんから見て、ボスであった笹島さんはどのような人物だったのでしょうか?』


『あー、難しいなぁ。それ。

例えば俺なんかは腕っ節が強くて現場で働いてたとか、京都屋だったら頭がよかったから参謀ポジションで戦術を考えただとかエピソードとして語られるが、アイツはなぁ』


『どうだったんです?』


『独特の雰囲気を持っているつぅのかな?

力があるわけでもなく、頭が言い訳でもない。それでもアイツは俺達のボスだった。


そうだなぁ。何つぅか。





悪の救済者?みたいな存在だったな。

俺はマフィアをクズ野郎共だと思ってるが、ブラックウルフでいる時だけはそんな人生を救われた気分だったよ。


そう言えば、アイツはいつも真白で題名も書いてない白紙の本を持ち歩いてたな。アイツの話だとそれに従って生きてるらしいな』

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