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始動

俺が城咲と協力関係になってから早1週間。流石に1週間も経つと友達が出来た人も多いようでクラスの雰囲気もだいぶ変わっていた。俺はというと友達は未だ翔真一人。翔真以外とはまだ話したことすらない。いや、城咲とも話したか。一方、翔真は俺とは違い何人か友人もできていた。


「市宮くん、このままじゃ西条くん以外には友達出来ないんしゃない?」


隣の席の城咲が馬鹿にするように話しかけてきた。


「ほっとけ。そういうお前はどうなんだよ」

「心外ね。市宮くんとは違って友達も数人いるけど」


返答にトゲがある。ここ最近の城咲は誰に対しても優しく接していた。どう考えても俺に対しての態度は裏の一面だ。


「そうかよ。で、俺は城咲の裏の一面を知ってしまった訳だ」

「それがどうかしたの?」

「他の人にばらされたくなかったら協力することをやめようと俺がもし言ったらどうなる?」


城咲は明るい笑顔で、


「笑えない冗談ね。大体市宮くん、西条くん以外に話せる人いないのに誰に話すの?」


くっ、正論すぎて何も言い返せない。


「それに仮に市宮くんが言いふらしたとしても信じないでしょう。それに比べ私は市宮くんと違って友達も数人いるわけだしノルマのことを言ってしまえば広まるのは時間の問題ね」


あー、もう何を言っても言い返される気がする…。

どうやらもう協力関係の取り消しは諦めるしかないようだ。


「俺の負けだ。素直に従うよ」

「当然協力してもらうわ」

「あまり面倒くさいのは勘弁してくれよ」

「約束はできない。そもそも市宮くんが何を基準に面倒くさいと思っているのか知らないし」


それもそうだな。何を基準にと言われても困る。その時に俺が面倒くさいなと思ったものがめんどくさいのだ。ただそれだけだ。


「面倒くさいことになったな」

「そうね。この学校のルール、かなり手こずりそう」


いやいや、面倒くさくしてるのは城咲なんだが…。


「それで今後俺はどうすればいいんだ?」

「とりあえず私と一緒にクラス運営委員になってもらうから」

「嫌なんだけど」

「市宮くんに拒否権はないしさっき素直に従うって言ったでしょう」

「でも面倒くさいことは嫌だ」

「やっぱり市宮くん、私にノルマのことバラして欲しいの?」


城咲に俺のノルマを知られた時点で俺の平和な学校生活は終わってしまったということか。


「はぁ、俺このままずっと城咲に脅され続けないとならないのか」

「恨むなら自分のノルマを他人に知られた自分の失態を恨むのね」


そんなこと言われても何故城咲にノルマのことがバレたのか分からないから自分の失態だったのかも定かではない。


「で、クラス運営委員って何をするんだ?」


俺はもうこれ以上は抵抗できないと感じ城咲に質問する。


「やることは中学までの代表委員と変わらない。1つ違うことはクラスメイト達のノルマの手助けをすること」

「仕事が多そうだけど2人でやるのか?」

「春野先生に毎年クラス運営委員は立候補者があまり出ないと聞いたから最悪2人でやることになるわ。私の方で何人か適任だと思う人に声はかけるつもりだけど。市宮くんも何人かに声をか……やっぱりなんでもない。ごめんなさい」


いや途中で察したように言うのやめないで。あと謝らないで。


「友達はまだ翔真だけだけどまだ1週間しか経ってないから。これからだから。それで城咲は誰に声をかけるつもりなんだ?」

「私は黒宮さんと唯川さんに声をかけるつもり」

「そっか、俺も翔真に声をかけとくよ」


聞いたはいいが正直誰か分からない。まだ入学して1週間だし、俺は翔真と城咲以外とはまだまともに会話していないから無理もないか。


その日の帰りのホームルームの時に城咲と俺がクラス運営委員に立候補したことを友野先生がクラスメイト達に伝えた。特に反論もなく俺達はクラス運営委員となった。友野先生には、「まさか市宮くんがクラス運営委員に立候補するとは思わなかったよ」と言われたが全くその通り、俺もまさかクラス運営委員に立候補することになるとは全く思わなかった。友野先生には

「まぁたまにはこういう事もやってみようかなと思いまして」などと適当に誤魔化した。


「遥喜、お前クラス運営委員やるんだな。そういうタイプじゃないと思ってたよ」


教室を出ようとした瞬間、翔真に声をかけられた。


「まぁな、本来なら俺もこんな事は絶対やらない」

「ん?何か事情があるのか?」

「いや、気にしないでくれ」

「そうか?困った事があったら相談しろよ」


声をかけるなら今がチャンスだ。


「じゃーさ、相談なんだけどさ」

「おう、何でも言ってみろ」

「翔真もクラス運営委員のメンバーに入ってくれないか?」

「俺がか?んーでもな、部活もこれから入るつもりだし」

「それなら空いてる時間だけでいいんだ。手伝ってくれないか?」

「まぁ相談しろって言ったのは俺だしな。いいよ、あまりできないかもしれないけどやるよ」

「ありがとう!」


翔真は本当にいい奴だ。友達になれて心底よかったと思う。


「じゃー明日言っておくよ」

「りょーかい」

「本当にありがとうな、翔真。心強いよ。じゃーまた明日」

「気にするな、友達だろ。じゃーな遥喜」


俺は気分良く自転車を漕ぎ家に帰った。


「ただいま、ってまだあゆ姉帰ってないか」


翔真を誘えたのはよかったが今日はなんか疲れた。いきなりクラス運営委員やるはめになるし。そんな事を考えながらも俺は着替えてキッチンに行った。

我が家、市宮家では家事のほとんどはあゆ姉がしてくれていて俺が唯一やっている事は夕飯を作る事だ。


「じゃー早速飯作るか」


2年くらい前から夕飯を作っているから俺は飯を作るのに慣れている。それから1時間ほどで俺は夕飯を作り上げ丁度その頃にあゆ姉が帰ってきた。


「ただいま」

「おかえりあゆ姉。丁度今夕飯できたとこだから」

「オッケー、すぐ着替えてくる」


あゆ姉はそう言うと2、3分で着替えてきた。


「いただきます」


こうしてあゆ姉と夕飯を食べるのがいつもの市宮家の光景だ。


「遥喜、なんか凄い疲れてる顔してるけど」


そんなに顔に出てるのだろうか。まぁでもいきなりだったし今思うと不安しかないしな。


「そ、そうかな」

「うん。何かあったの?」

「まぁね。実は訳あってクラス運営委員になることになっちゃってさ」

「え!!!遥喜が⁉︎そういうことからは遠ざかってたのにどうしたの急に」


あゆ姉が驚くのも無理はない。俺は今までクラス運営委員とか、キャプテンとかそういう立ち位置にならないように避けてきていた。その事はあゆ姉もよく知っている。周りの人達からは能力はあるのに勿体無いとか色々言われたがガラじゃないし何より面倒くさいと思ってたからやらなかった。


「まぁ色々あってね」


俺は言葉を濁らせて答えた。正直、あゆ姉にもノルマのことを知られたくはない。色々余計なことしそうだし。


「まぁやるからには頑張りなよ」

「まぁちゃんとやるさ」


やらないと城咲にノルマの事をバラされるし。ノルマの事がバレれば当然達成しにくくなる。俺の将来がかかってるんだ。そりゃ嫌でもやるさ。




俺がクラス運営委員をやることになってから一夜が明けた。


「おはよう市宮くん」

「おはよう城咲」


教室に入って席に座った俺に城咲が話しかけてきた。


「城咲、翔真に声をかけたんだけどさ。あまりできないかもしれないけどやってくれることになった」

「こっちも黒宮さんと唯川さんがやってくれることになったわ」


どうやらこれで大量の仕事を2人でやるという心配はなくなった。


「今日の放課後にでも一度集まりたいから市宮くん参加して」

「俺は特に予定もないし問題ない。翔真はどうする?」

「西条くんは部活もあるだろうし強制はどきないけど声をかけるだけかけてみるから」

「わかった」


城咲は西条くんは強制できないって言ってたからもし俺が断ろうと強制的に参加させるつもりだったのか。



放課後。今日は部活が無かったようで翔真も俺と一緒にクラス運営委員の集まりに参加することになった。


「じゃー全員揃ったから始めさせてもらうね。まずクラス運営委員に入ってくれてありがとう。流石に私と市宮くんの2人だけじゃ厳しかった。じゃーもう知ってるかもしれないけど私は城咲緋織、よろしくね。じゃー次は市宮くん」

「えっと、市宮遥喜です。よろしくお願いします」

「西条翔真、よろしくな」

「私は黒宮鈴紗っていいます。よろしく」

「唯川茜でーす。よろっしく!」


俺は黒宮さんと唯川さんのことは全く知らなかったがなんかこの自己紹介で大体キャラが掴めた気がした。


「じゃーこれからこのメンバーで頑張っていきましょう」


城咲がそう言うと一同が頷いた。







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