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理不尽な始まり

素人で初めて書いた作品です。文章力がなく下手くそですが徐々に文章力を向上させていければと思っています。どうぞよろしくお願いします。

桜が舞い散る校門の前で俺は立ち止まっていた。周囲には学校の中へと入って行く大勢の人達。


「ハァ……」


俺は深く溜め息をついた。俺はこの時期が嫌いだ。

新しい事が必然的に始まってしまう。入学、クラス替えなど何回やっても慣れることはないだろう。人は皆、期待と不安を胸に秘めているかもしれないが、あいにく俺には不安しかない。それでも学校には行かなければならない。将来の安定の為に…。










入学式が終わり、俺は発表された自分のクラスへと移動する。黒板に貼ってあった座席表を見ると俺の席は窓側の一番後ろの席にあった。運がいい。俺は中学時代から席替えの度に一番後ろの窓側の席を狙っていた。

結局、中学時代はその席になることは一度もなかったが…。

心の中で喜びながら自分の席へと腰を下ろした。流石に初日ということで静けさがあり、緊張感が広がっている。

無理もないだろう、俺自身もかなり緊張している。

というか不安でさっきから少し腹が痛い。

正直、友達をつくるのは苦手だ。

それでも誰とも話す事が出来ずにぼっちになるのは嫌だ。まずは席の近い人から仲良くなろう。そう思い隣の席の方を見てみた。

そこにはかわいいというよりは美人という方が正しい大人びた女子が座っていた。

俺のコミュニケーション力ではいきなり女子と話すのは無理だ。

俺は一瞬で結論を出し前の席の方へ向く。

前の席には後ろ姿で顔はよく見えないが男子が座っていた。

よし、とりあえず話しかけてみよう。

いざ話しかけようした瞬間、教室のドアが開いて教師らしき人が入ってきた。


「みなさん、おはようございます。このクラスの担任の友野 瑠璃です。よろしくね」


見た目からして20代中盤くらいの若い女教師が自己紹介を始めた。


「じゃー、早速これからみんなに自己紹介をやってもらいまーす。じゃ窓側の列のひとから順番に名前とあとなんか一言くらいお願いします」


友野先生の一言でいきなり自己紹介が始まった。俺の席は窓側の一番後ろの席だから6番目に回ってくる。

こういうの苦手なんだよなぁ…。

とうとう俺の前の男子まで回ってきてしまった。


「西条 翔真です。好きなことはスポーツ全般、よろしく」


西条という名前の男は元気よく自己紹介をした。

明るそうなヤツだなぁ。とりあえずさっき話せなかったからあとで話しかけてみよう。


「じゃー次、市宮くん」


名前を呼ばれ席を立つ。


「えっと、市宮 遥喜です。えー…」


ヤバい、何を言うか全く考えてなかった。でもなんか言わなければ…。


「えっと、友達募集中です。話しかけてくれると嬉しいです。よろしくお願いします」


よっし、なんとか自己紹介を終えた。改めて思うがこういうのは苦手だ…。


「えっと、次は城咲さん」


友野先生が次の人の名前を呼び、隣の席の女子が自己紹介を始めた。


「城咲 緋織です。私も友達募集中です。よろしくお願いします」


隣の席の城咲は自己紹介を終えると少しこっちを見て微笑んだ、ような気がした。


「じゃー自己紹介も終わったし本格的にこの学校のことについて説明していきます。まず皆さん知っての通りこの学校には入学試験は存在せず、アンケートを書いてもらい合否が決まりました」


昇颯学園、この学校には入学試験がなくアンケートで合否が決まる、俺がこの学校を選んだ理由の1つでもある。

当然、俺もアンケートを記入し結果的にこの学校に受かった。正直どういう判定で受かったのかは定かではないが。


「さらにこの学校を卒業するだけで基本的には希望した進学先に進むことができます」


俺がこの学校を選んだ最大の理由だ。卒業するだけで条件を満たすことができる。何より普通の学校に行って勉強して進学するよりも安定している。


「ここまでは皆さんの知っている通りです。ここからはこの学校で3年間過ごすに当たって必ず関わってくることについて説明していきます。まずこの学校では3年間のクラス替えは存在しません。なので卒業までの3年間、このメンバーで過ごすことになります。よろしくねー。じゃー今から学校からの連絡ができるようにメールアドレスを登録してもらいます。今から黒板に書くので皆さん登録してください」


友野先生は黒板にアドレスを書き始めた。


そういえばアンケートに携帯電話を持っているか、という質問があっけどあの質問はもしかしてこういうことだったのか?俺は携帯電話を持っているが、仮に携帯電話を持っていないと答えていたらもしかしてそれだけで落とされていたのだろうか…。だとしたら思っていたよりこの学校は…。


「今後、学校から連絡があるときはメールが届くから

ね。じゃーこの学校の最大の特徴は卒業するだけで基本的に希望の進学先にいけることだけど、世の中そんなうまい話はないよねぇ。当然、卒業するには単位を取る他にも1つ条件があります」


今まで静かだった教室がざわめき始める。


「それは1人1人に与えられたノルマを達成することです。もし達成できなかった場合は退学です。ノルマには大きく分けて3つのパターンが存在します。1つ目のパターンAは学期ごとに変わっていくノルマのパターンです。この場合は、他の2つのパターンに比べ比較的簡単なノルマを1年に3回、つまり卒業するまでに9回達成してもらいます」


教室にいる皆、不安な表情をしている。ここにいる全員がノルマを達成できなかった場合のことを考えているだろう。達成できなければ即退学。何のリスクもない学校だと思っていたら急に大きなリスクを背負うことになった。


「2つ目のパターンBは1年ごとに変わっていくノルマでパターンAよりは数は少ないが難易度は上がっています。最後に3つ目のパターンCです。もう察している人もいると思いますが卒業するまでの間に1つのノルマを達成してもらいます。難易度は1番高くなっていますがたった1つです。大体の生徒はパターンAかパターンBでパターンCになる確率はほとんどありませんからなった人は幸運と言えるでしょう。じゃーこんな感じで説明を終わります。何か質問はあるかな?」


「自分のノルマのパターンはどのように決まるんですか?」


俺の前の席の西条がおそらく皆が疑問に思っていたであろうことを質問した。


「ノルマはこの後1人1人さっきの自己紹介をした順番で別室に入ってそこで決まります。どのように決まるかはお楽しみ!」


いやいやいや、全然楽しみじゃないんだけど。

これからの学校生活がかかってる。とにかく不安だ。


「他に質問が無いみたいだから質問終わり。これから休み時間だから次の授業が始まったら順番に別室に案内するから」


友野先生はそう言い残し教室を去った。


「なぁ、大変なことになったな」


前の席の西条が俺に話しかけてきた。


「あぁ、そうだな」

「俺は西条 翔真、よろしくな」

「あぁ、よろしく。俺は市宮 遥喜」

「市宮はさっき言われたノルマのパターン、どれがいいと思ってる?」


西条は切り替えが早い方らしい。周囲では頭を抱えている人がいたりと受け入れられていない人が目立つが西条はどうやらもう先を見据えているらしい。


「そうだな、俺はパターンAがいいかな」


俺は特に理由も言わずに答えた。


「そっか、ちなみにパターンCじゃない理由は?」

「うーん、1つとはいえ難易度が高いからかな。リスクを負うことになるし、それだったらパターンCよりは簡単なノルマを数こなす方が安定してると思う。まだノルマの内容がどういうものなのか分からないけどね、えっと…西条…はどうなんだ?」

「翔真でいいよ。俺も遥喜って呼んでもいいか?」

「あぁ、いいよ翔真」

「それで、俺はどのパターンがいいと思うかだったな。俺はパターンBかな」

「パターンBか、理由は?」

「まずパターンCはさっき遥喜が言ったのと同じ理由だな。パターンAは数が多いからな。例え簡単でも数をこなすのは正直面倒臭いし」


確かに翔真が言ったように数をこなすのは面倒臭いな。


「まぁ、ノルマの話はこれくらいにして違うこと話そうぜ。遥喜はなんか部活入るのか?」

「いや、今のところ入るつもりはないかな。翔真はどうなんだ?」

「俺は陸上部に入るつもりだ。一応、中学生のときに100メートル走で全国に行ったことがある」

「凄いな、そんなに足が速かったら体育祭は頼もしいな」

「体育祭のときは任せとけ。だけど仮にパターンAになったとして最初のノルマを達成できなかったら体育祭すら出れずに退学だけどな」

「おいおい、縁起でもないこと言うなって」


俺は一応そう言ったが翔真が言ったことは十分に可能性があることだ。難易度が他の2つに比べて簡単だとしても他の2つがかなりの難易度だったらパターンAでも中々難しいかもしれない。

翔真と話していたら10分が過ぎていたようで授業の始まりを告げるチャイムが鳴る。そして再び教室のドアが開き友野先生が入ってくる。


「今から1人ずつこの教室の向かい側の面談室に来てください。前の人が教室に帰って来てから次の人は来てください。終わったら今日は解散!帰っていいよ」


友野先生と1番前の窓側の席の人が向かい側の面談室へと向かった。教室はまた静まり、緊迫した雰囲気が広がる。


「なぁ、遥喜。さっき聞くの忘れたんだけどさ、遥喜はなんかスポーツやってた?」


この空気の中話しかけてくるとは。それに緊張しているようにも感じない。普通なら緊張するのは当たり前と言ってもいい状況だろう。翔真は緊張とは無縁なタイプなのだろうか。それとも慣れているのだろうか。どちらにせよメンタルは中々強いことが窺える。


「一応、小中と野球をやっていたけど」

「おー!そっか、野球か。俺も小学生のときやってたよ。遥喜とは結構気が合いそうだな」

「そうだな」


話が盛り上がっていたところで翔真の前の席の人が教室に帰って来た。翔真はじゃあ、行ってくる、と言い教室を出た。それから5分前後で翔真は教室へと戻って来た。


「俺は狙い通りパターンBだった。遥喜も狙い通りになるといいな。じゃあ俺は家帰るからまた明日」

「また明日」


俺は教室を出て面談室の前まで来た。

2回ドアをノックする。


「はーい、どうぞ」


中から友野先生の声が聞こえ俺はドアを開ける。中は自分のクラスと同じくらいの広さだった。真ん中に椅子に座っている友野先生の姿があった。


「市宮くん、ここに座って」


友野先生に言われ椅子に座る。


「じゃーこれひいて」


箱を差し出される。くじに使う箱みたいな箱だ。


「え?もしかしてくじでパターンが決まるんですか?」


俺は驚き友野先生に質問する。


「そうだよ」


えっと、何の間違えだ?これは。くじで決めるとか何言ってんの?こんな大事なことくじで決めちゃうの?

おいおい、おかしいだろ。


「さぁ、ひいて」


どうやら引かなければならないらしい。

俺は何とも言えない感情で箱の中に手を入れる。そして1枚の紙を引いた。


「開いてみて」


言われた通り紙を開く。そこには短くこう書かれていた。


『パターンC』


あれ?パターンCになる確率はほとんどなかったんじゃなかったっけ…。


「嘘!すごい幸運だね市宮くん。パターンCおめでとう」

「え?あ、はい」


この場合、幸運と言っていいのだろうか。パターンAを狙ってたから何も嬉しくないんだけど…。


「じゃあ、ノルマの内容についてはこの後学校から連絡がくると思うから」

「分かりました」


俺は実感が無かったがとりあえず面談室を出て教室に帰った。そして荷物を持ちゆっくりと家に向かって歩く。家までは歩きで20分くらいの距離だ。家から学校にまでの距離が近いことも選んだ理由の1つだが今はそんなことはどうでもいい。10分くらい歩いたところで俺の携帯が鳴った。学校からだ。


➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖


差出人 昇颯高校

宛先 市宮 遥喜



ノルマについて



あなたはパターンCとなりました。卒業までの3年間、ノルマ達成を目指し頑張ってください。

あなたのノルマは


『彼女をつくれ』


ではよい学校生活をお過ごしください。


➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖



「おかしいだろー!!!」


俺の叫び声が周囲に響き渡った。










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