ウソル ルート
「なんでもお話してくださいねウソル王子」
私は彼の後ろについていくことにする。
そのためなら壁にへばりつくことだって、蟹<キャンサー>歩きだってしてみせる。
そういえば某シェイントシェイヤでは蟹は雑魚ポジションらしいけれど、なんでかしら。
「あ、コン……」
「!」
コンハーの野郎……じゃなくて、お糞野郎が鼻歌を歌いながらながら廊下を歩いていると思えば、通りがかりでイセリーに取り入ろうとしている。
イセリーにしっしと追い払われた。コンハー様<ざま>を見よ!
ちょっぴり気分がよくなった。
見つからないように私はウソルに続いて城の外壁にへばりつきながら移動する。
神の国ゴルダーンなら他神に笑われることだろう。
だがここの人間は武道派だから、幸い周りは鍛練かなにかだと解釈してくれる!
―――――――
「移動販売です。入り用なものはありませんかー」
城内に他星からの商人がやってきたようだ。
「珍しいものがありそうですね。いってみませんか?」
「そうだね」
私達は販売所へ向かう。
「お菓子はある?」
「はい各種取り揃えてありますよ~」
「天からの飴にスライムグーミか……悪魔のポテーチのほうがよかったな」
私は天から降り注いだ飴を、ウソルはマクシデミアンの詰め合わせを買った。
「まいど~」
――――
私は好きなリンgo味しか食べない派なので、飴を配ることにする。
アスライラにはわざとあぶって絶妙に溶けて冷え固まったクレーヴ味。
イセリーにはデモン味を、カルクスにはコラァ!ゴ味。
門番にはソウダ味でウソルには二番目に好きなメロン味をあげた。
アスライラやイセリーは他の星から外交に来る王族を出迎えるらしい。
城内の使用人たちは慌ただしく、準備におわれている。
「暇だね」
その点ウソルは外交に参加しなくていい。むしろ部屋にいろと言われている。
「はい」
なので楽であり暇でしかたない。
「そういえば……外交の相手はどこの星だったっけ?」
「たしかヴィサナスだったと思います」
美形しかいないという怪しい星だ。きっと整形でもしてるんじゃないかしら。
ちょっと窓から王子の顔を見てみよう。―――金髪のチャラチャラした軟派そうな男。きっとあれが王子ね、タイプではないが顔はいい。
「あ、あれは女好きで有名なルセンタ王子だよ。プリマジェール魔法学園の三年でヴィサナスの裏側に住んでるんだって」
メモなしで暗記までして、本当に噂に詳しいのね。
ウソルはアスライラとイセリーのどちら派なのだろう。
いや、頭が廻るところからして、ウソルが王位を狙っていないわけがないわ。
ちょっとそれとなくどの派閥にいるかを自然に言わせてみよう。
「私、ウソル王子のような優しい方が王になればいいのでは。と常々思います」
「え? オレが王なんて無理だよ優しいというよりボンヤリしているだけし……それに政治的な争いとか向いてないと思うんだ」
――いえ、お世辞抜きに情報通なのは結構向いていると思うわよ。
まさか二人が共倒れしたところをかっさらうつもりじゃないでしょうね?
最近はナンバー3が怖いというし。
「それに王位を継ぐのは王女という習わしだろう?」
「他の星は大体の王は男性だと思いますが……」
「昔はそうだったみたいだけど、星歴4000年の今はジュプス大王国、ポイゼェン女教皇、ウィラネスの女公爵、アテラスの大頭領、グリテアの妖精王などが女性で、半々になってきているね」
―――なんということだろう。
私が女神から人になるまで2000光年以上経過している。
星によって時の流れが違うのかしら。
でも10数年人間をやっていたのに誰も星歴とか言わなかったような?
周りが大雑把というのもあるし、いちいち言わずともカレンダーをみればわかる事という認識だろうが―――気分的に1900年代だったわ。
記憶がカツラ、父神<ふしん>激怒、天界からの一時追放からの変な人間ばかりの星。
なのだから基準やらをまともに考えていたらだめよね。
そもそも下界のなんて宇宙ドームの天界から見下ろして軽く観察する程度だった。
人間の考えることなんて視ただけでわかると思っていたけど、さっぱりわからないわ。
―――そういえばこの宇宙の反対にある地球<ちきゅう>とやらはこちら側のミーゲンヴェルド神と争い、破壊されテラネスに吸収合併されたそうだ。
発端は地球の神がこちら側に使いを送り込み人々やアカシックレコォドを消しこちらの形を壊滅させようとした事。
またとある神は気に入った人間の女を地球から連れ出すために天災を起こしてさも自分が救ったかのような火消し行動をした。
神は自分が楽しむ為に人間を創ったわけでそんな神だから無責任で身勝手なのは当然だ。
「大丈夫?」
「ええ」
つい悶々と考えこんでしまったようね。それも仕方ない、こういう事情を知る者はエルゼルの他にいないから。
自由に話せる相手がいない為、自分の頭の中で思考を巡らせる他ないのだ。
この王子が人の良さそうなフリしてオレが王になる!とか言い出さない保証はない。
アスライラばかりに気を取られていたら伏兵やらダークホースやらにやられる。
―――何もしていないのにだんだんウソルが怪しく見えてきた。
「そういえば君たち姉弟は似ているね」
「え?」
「リグナンドも以前、王になる気はないのか聞いてきたよ」
「そうなんですか?」
「アスライラやイセリーの二極化状態なのにいきなりオレが参戦して王になったら印象最悪で暴君扱いなんてことに……」
ああ、この人デブッサイにびびるくらい小心なんだったわ。
性別の風習はしたがないにしても、あの二人が王になるより政治的にはマシじゃないかしら。
まあでもウソルは情報通だから、補佐のほうが向いているのかもしれない。
「あの、この国の王位を継げるのは必ず女のみなのですか?」
彼に素朴な疑問を投げ掛けてみた。
「ああ、例外みたいなのはあるらしいよ。王子は王になれないけど、伴侶となる人が王族か公爵位くらいの女性ならその人が女王になる前提で」
要するに女王になれる可能性があるのは、あの二人だけではないということね。
――――これはいい情報を聞いたわ。二人に王位を継がせたくないなら、彼の妻を次期女王にすればいいのよ。
「それは、他星の王族からの乗っとりもありうるのでは?」
ウソルが他の星から王女を迎えては計画に支障がでる。
それとなく牽制して、彼にふさわしい女を探そう。
ウソルに王位を継いでもらおうとしているリグナントにも協力させなきゃね。
「そうだね、だから例としてはあるけど今まで他の星に王子がいっても取り込んだことはないみたいなんだ」
「そうなんですね」
一先ず安心―――いいえ、彼が第一人者にでもなったりしたら笑えないわ。
「というわけで、リグナント。協力してもらえないかしら?」
―――意地っ張りのリグナントのことだから、どうせ断られるに決まっているわよね。
「いいよ。いい感じの女を探せばいいんだろ?」
「え、ええ?……そうよ。お願いね」
なんということであろうか、あの意地悪口悪性悪リグナントに二つ返事で協力されてしまった。
「でもさ、こういう策略とかは兄さんのほうが得意だと思うんだよね」
「そうかしら?」
マレクロンは私の縁談を探し、コンハーみたいな事故物件を呼んだのだから、今一信用できないわね。
「……いや、兄さんに頼むのはやめておいたほうがいっか」
私をちらりと見て察したのか、彼はやれやれと呟いて去った。
―――――さて、これで少しはリグナントも油断したかしら。
私がウソルの侍女になった事を怪しんでいたようだし、敵を騙すにはまず味方からというのでたとえ相手が弟だろうとウソルを王にする目的の妨げになられたら困る。
でもリグナントがウソルを王にしたがってたからといって私がそれをしようとしているのを当人に知らせたのは迂闊だったわ。
それにリグナントに怪しまれればマレクロンの耳にも入ることは間違いないので先手をとってそちらにも言い訳を仕掛けることにしよう。
リグナントとマレクロンがウソルを王にしようと手を組んでいたなら、やはりマレクロンにも私がウソルを王にしたいと話しておくべきだ。
それにウソルから彼を王にしたいとリグナントが言っていたと聞いたわけなのだから、隠す必要はない筈だ。
だいたい私は侍女になったとき、リグナントに理由を聞かれウソルを応援していると言い訳をしたのだ。
最初は政略争いからの逃避ではあったが、もう大々的に首を突っ込みまくりである。
―――政敵であるあの二人からはウソルは眼中にない筈。
まさか舞台にあがるなど頭にないこと間違いなし。
これはアスライラやイセリーの二人と幼馴染である私にはわかる。
アスライラはまず政敵はイセリーしかいないと考えている。
奴はいかなるときも脳筋なので力業で真っ直ぐ正々堂々決着をつけるタイプだ。
イセリーは頭はいいがターゲットを一人に絞ると多が見えなくなるタイプ。
そして自発的に行動はしないため、私が話しかけたりキーワードなどを出さないと興味を持たないのでウソルを政敵だと私が言わないとその警戒範囲に入らない。
ウソルは赤子のときから城に住む二人とは違って、10才ほどになってから城に来たそうだ。
理由は彼と暮らしていた平民の父が亡くなり、住む家がなくなったからだという。
アスライラがウソルをどう思っているかは知らないが、気に入らなければ弟であれ王子なら殺すだろう。
イセリーはやはり眼中にないといった様子だ。彼女の口からウソルの名を一度も聞いたことがない。言わないだけで少しは考えてはいそうだが、ウソルが王位を継げない事は彼女なら知っている筈だ。
この計画がウソルの為になるかはわからないが、最後の最後にギョウザ布海苔とやらを仕掛けてやろう。
個人的にあの二人は嫌いである。百歩譲りどちらにも女王の才覚があったとしても、ウソルに女王の夫が向かなくても彼を王か彼の妻を女王にするのだ。
別にウソルでなくてもいいだろうが、残念ながらこの国で女王になれるのがあの二人かウソルの妻しかいない。
他の王子は会ったことない行方知れず。しかもその意中の相手が他国の女や霊界の死神女という噂で王位争いの駒としてはだめだ。
しかしリグナントがウソルを王にしたいと言うのはよくあるパターンだと別の誰かを王にしたいからとかベタな感じの理由もありそう……なんて考えすぎかしらね。
「こんなところでどうしたの?」
後ろから声をかけられ、振り向くとウソルがいた。
「あ、王子。少し考え事をしていただけで、特になんでもないんです」
「この時間はよく武装メイド達が食事を運びで激戦しているから危ないよ」
ウソルに促され部屋に避難すると、すぐに廊下をバタバタ世話しなく通る使用人達の足音が聞こえ始めた。
私はこの時間はいつも彼女の部屋にいて本を読む彼女の横でお茶をしていたのでこういうのに遭遇したことがない。
いつも走っているのは聞いていた気がするが、今は本当に危ない所だった。
「ウソル王子は周りをよく見ていらっしゃるんですね。貴方ならやさしい王様になれますね」
やっぱりマジで王位とか狙ってる腹黒系なんじゃないかしら。
でもなかなか本性表さないわねこの男はきっと野菜巻き肉系よ。
「え、またその話?王様にはならなくていいよ。衣食住が安定していれば……王になったら暗殺とか怖いし」
目立たずちゃっかり美味しいポジション狙いときたわね。
「不躾な事をおたずね致しますが、情報にお詳しいのは……」
「ずるい考え方だけど君が想像したように、あわよくば王座についたどちらかの参謀になって住み処を守りたいからだよ」
これはある意味無謀な賭けではないだろうか、力任せのアスライラが王になれば政敵のイセリーは排除、ウソルに知能があれば利用するだろうが、頭脳派のイセリーが王になればウソルは捨て置くか城を追放が妥当だ。
ウソルがどうであれあの二人は王になることしか頭にない筈だ。
「……王位争いに区切りがついてオレが生きていたならまだしも、君はどうしてこの難しい時期に侍女になったの?」
彼は自分が消えれば侍女になった私の立場も危ういと心配しているのだろう。
政略から離れているが、王がどちらになっても消えるであろう一番不安定な立場だから。
◆なぜ私は彼の侍女をやろうとした?
→【争いから遠ざかるため】
【スリルがあって楽しいから】
「以前お仕えしていた王女がもしも負けてしまった場合、などの心配から逃げたくなったのかもしれません」
「君もオレと同じだ」
「そうですね」
彼は私に微笑んだので私も笑みを返した。
「ハキサレーラ様、簡単なクイズに挑戦してみませんか?」
エルゼルに問われ、クイズをやってみることにした。
「ええ、やるわ」
◆つぎのうち正しい事をいっているのは二人。他は嘘をついている。
{アスライラ=私は馬鹿}
{イセリー=他の三人は信用したらだめ}
{ウソル=オレは嘘はつかない}
{エルゼル=そもそも、彼等の言葉全てが嘘です}
この中から正解を一人選べ。
→【ウソル】
【エルゼル】
【アスライラ】
【イセリー】
【いない】
「……なかなかベタな問題を出すのね。答えはウソル王子かしら……」
正解の答えはエルゼルだとわかっていたが、立場上彼を選ばざるを得ない。
「不正解です。残念でしたね」
口では残念というエルゼルだったが、うっすら笑みを浮かべていた。




