共通②のC ウソルの侍女になる
私は短期間だけウソルの侍女になることにした。アスライラの場合情報を頂いてから辞めるときに円満な去り方はまず無理である。
ウソルなら情報を楽にくれそうだし、あの腰の低さからして辞めても文句は言わない筈。
丁度彼に侍女はいないよう。それとなく近づき、話を聞けそうだ。
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「え?」
ウソルは驚いたようで、ぽすりと、軽く壁から落下した。
理由は適当にイセリーに暇を出されたと言っただけだ。
「お嫌でしたら無理にとは言いません」
「嫌なんて、でも驚いたよ。君に嫌われていると思っていたから」
「え?」
そんなことはないのだが、なにか彼に勘違いされることをしただろうか?
「ついこの前に婚……あ、もしかするとこれは杞憂だったのかな?」
ようやく気がついた。
ウソルが勘違いをしたのは、私がコンハーの話をされそうになった際
目を細めて笑顔とは真逆の顔をしたからなのだと。
誤解はすぐに解けたようでよかった。
―――
「あれ、姉さんが自分から近づいてくるなんて珍しい」
リグナンドが嫌みったらしくヘラヘラしている。なんかこの雰囲気、誰かににているのよね。
「私、今日からウソル様の侍女をやるから」
「え?」
目を丸くして鳩<バード>が豆鉄砲<ビーン・ピストゥル>をくらったように驚いている。
いつも余裕で人をからかうリグナンドが、本気で度肝を抜かれたような反応をしているのだ。
私は少し楽しくなり、リグナンドにとう。
「なによ、私が近くにいたら何かこまることでもの?」
つい素の天上から下界の人間を見下ろす癖が出たわ。
「べつに、姉さんこそ揚げ足とられるの嫌そうにしてたのに、どういう風のふきまわし?」
カンのいいやつだわ。ここは意地でもごまかさないと。
「私まえからウソル王子につかえたかったの。イセリー様の侍女をしていたのは母様から薦められたからだもの」
と、ウソルに心酔しているテイ。
「ふーん」
それ以上は追求されずに済んだが、あまり信じてはいないかもしれない。
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帰宅する時間となり、門番たちが労いながら私たちを見送る。
「おつとめご苦労様でした」
門を抜け、リグナンドとマレクロンと馬車にのった。
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馬車にゆられながら今日あったことを振り返り、先の方針をきめる。
ウソルから情報をきくか、リグナンドを牽制するか。
【とにかくウソルから情報を聞き出す】
【まずはリグナンドに知られないようにしよう】
【こまったときのどっちつかずだわ。決められないから後回しにして、今はさっきの門番がちょっと格好よかったことを考えよう】