カルクス ハッピーエンド
→[記憶が曖昧]
「私の記憶は完全に戻ったわけじゃないわ。もし足早に結婚して後からなんか思ってたのと違うとか言われたくないもの」
―――せっかく自由だったのに自分から恋人に縛られにいくなんて嫌。
ヤオヨルズは亭主関白が多いと聞くし、そういうのイライラするのよ。
「その顔、他にもなにか理由があるのか?
カルクスは心配そうに見ているが言ってもどうせ男はわからないわ。
勝手に頭の中で都合よくシナリオつくって悲劇のヒーロー気取るどっかのだれかしかり。
これは偏見が過ぎるが、世の中の大半はこういうのしかいないに決まってる。
結婚しないと人類が滅ぶとか、それなら滅べばいいんだわ。
「とにかく俺は待つさ。ハッキリ断られない限り望みはあると思ってる」
顔と性格の両方がいい奴なんているわけない。
百歩譲って顔が良く性格が悪いほうが顔が悪く性格も悪い奴よりマシだろう。
――それはともかくこの男は酒飲み友達くらいが丁度いい気がするのよ。
「そこまで言うならわかったわ……じゃあ賭けをしましょう」
「賭け?」
「一週間してお互いに好きという気持ちが同じくらいだったら貴方と天界へ帰るわ」
「いや、俺はお前が好きで後はお前の気持ち次第なんだ。賭ける意味はないんじゃないか?」
―――この間読んだ物語だとヒーローは賭けに乗るのに。さすがに状況は人間と神では違うからしかたないわね。
というか、カルクスが私を好きなんて今はじめてハッキリ聞いたような気がする。
さっきから結婚しようしかいわないんだもの。神には結婚という概念はないが大抵好きだから夫婦になるものだ。
「私が好きって本当?」
そういうとカルクスはハッとし、赤面すると目線をあわせようとしない。
「……結婚するっていったら、そういう言葉もついてくるものだろう?」
ヤオヨルズの神は噂通りのシャイボーイだわ。
私まで言葉が足りないのはよくないわね。
本当の理由をカルクスにちゃんと言おう。
「カルクス、この約束をしてくれるなら結婚するわ」
「どういう心境の変化なんだ?……それで約束って?」
カルクスは先ほどまでしぶっていた私が譲歩したことにとても驚いている。
「私は弓をひくこと、つまり狩りが好きなの」
「ああ、よく知ってる。いつだったか一緒に森を散策したこともあったな」
「だから狩りを取り上げないで」
「ちょっと待て、いつそんな話になったんだ?」
―――あれからなんだかんだで結婚の話は延期になった。
しばらく人間界で恋愛というものを一から学ぶことになる。
夫婦は幼馴染という関係から延長するわけではない。
冷静になってみれば、お互いに違う方向へ暴走していた。
「だがお前、人間界であまり弓を引かないどころか怠けていなかったか?」
カルクスが来たのは丁度コンハーが婚約破棄したときだ。
「うっ……だって機会がないし、女神に戻るには神力のある花を集めればいいと思ってたからそれでよ」
「父君がお前を人間界へ落としたのは浮いた話のないお前に伴侶を探させるためで、別に花をチマチマ集める必要はないんだぞ?」
「えええええ!?」
「まあともかく。それを教えられたのがついこの間。
お前が他の男と結婚するのが嫌で来たんだ」
カルクスとの記憶が戻ったわけではないので以前の私の考えはわからないが、今の私は彼がただの幼馴染よりも好ましい。
【二人の未来はこれから】




