カルクス ルート
なんだかカルクスを見た時から、どこかで面識があるような気がしてならない。
「ねえカルクス。私達廊下ですれ違うよりもっと昔に会ったことないかしら?」
「無いよ」
―――即答されてしまった。
ハキサレーラの私と会っていないなら前世のアミテルナの私と会ったモブ、もしくは出会う前から運命の相手として決められているというパターンも捨てきれない。
「なに、あなたたちどういう関係?」
アスライラは私とカルクスを交互に見ている。
「彼女と俺は幼馴染です」
カルクスは突然嘘をついた。私もアスライラも驚いてあいた口が塞がらない。
―――カルクスが私の幼馴染なんてあり得ない。
私とアスライラ、イセリーは幼い頃から付き合いがある幼馴染だからだ。
「……きっと前世の彼女とは幼馴染だったと思うんです」
「ふーん」
何いってんだコイツ感が半端ではない。アスライラは何も言わずにソファでくつろぎ始めた。
―――で、何をすればいいのだろう。本を読むわけでもお茶を用意しろとかいうわけでもない。
でもイセリーと違って勝手にいなくなったら怒りそうだ。
いやそれが普通なのだが、すごく移動したい。
「そういえば今日は広場で祭りがあるんだった。いくから二人とも準備して」
「祭り?」
今日開かれる祭りが何かなんて検討もつかない。
アスライラが変装し、私達が後ろを歩く。すると広場の噴水のまわりにカップルが仲むつまじく集まっていた。
しかもみなはコインを噴水へ投げている。ああ、これはなんて嫌なイベントだろう。
なんて思っていると、アスライラがMっぽい男にむらがられてうんざりしているのが見えた。
「今のうちにいこう」
「え!?」
傍観していると耳打ちしたカルクスが私の手をひき人通り少ないような静かで狭い場所につく。
「まって、彼女をおいていいの?」
彼はアスライラが好きなんだと思っていたのだけど、なぜ放置して私を連れてきたのだろう。
「俺はお前に会う為に城へ来たんだ」
「なにをいって……」
カルクスは私を抱きよせ後頭部をかきいだく。まるで愛しい恋人に再開したかのような強くもあり慈悲で加減された力。
「俺を忘れたのか……アミテルナ」
「……カマルナクス?」
―――名を呼ばれ、ハッとする。“カマルナクス”頭に浮かんだそれは目の前の男の名だろうか。
「俺は前世、ワコクの人間によって祀られるヤオヨルズ神の一柱だった」
ヤオヨルズはゴルダーンと同じく天界だが形成が異なっている。
「……貴方は悪いことをしたようには見えないわ。どうして人間界に転生させられたの?」
神が人間になって人間界にくるなんて余程のことがなければないはずだ。
「させられてはいない。自分で望んだことだからな」
「なぜ!?」
「なんでだと思う?」
◆彼が神をやめ転生した理由
→[私に会うため]
[長い刻に飽きた]
「私に会うため?」
もしそうなら嬉しいと思うが、彼と私の関係がいまいちわからない。
だって私にはカマルナクスといた記憶がほぼないのだから。
「お前とは幼馴染でもあったんだ。きっと俺はゴルダーンの主神に嫌われていたからそれを消されたんだろう」
「……そう」
アスライラが私たちを探す声がすると口をふさいだ。密着し身を潜める。背にあたる固い壁でじわじわと痛みがきた。
「まだ……だめなの?」
小声でたずねると、壁からはなされる。
「もう行ったみたいだ」
「……って私達アスライラ連れて帰らなくていいの?」
そもそもなんで隠れていたのよ。
「……会えたんだからもうここにいる必要はないだろ。一緒に天界へ帰らないか?」
「え……?」
自分から転生したカルクスはともかく追放された私がそんなことできるのだろうか。
「かつて義理の兄貴が何者かに殺され、お前の結婚は破談になったが俺と結婚すれば一応ヤオヨルズとゴルダーンの不可侵協定は結ばれる」
私の結婚相手が殺されたなどそんな話は記憶にないが、とにかく天界に帰れるというのは本当らしい。
「わかったわ、私天界に帰りたい……でも」
「俺と結婚するのは嫌、そう言いたいんだろう?」
私がこくりと頷くとカルクスは仕方がないと悟った顔をする。
「……その理由は?」
◆どうして嫌か?
【幼馴染だから】
【記憶が曖昧だから】




