アスライラend A 赦す心で滅亡回避
→〔アスライラのところへ行く〕
「ハキサレーラ嬢?」
門番のモンマージェンが訝しんで私を止めるのも構わず城に入る。
すると私が危惧した通り、賊が内部を荒しまわっていた。
イセリーにはエルゼルと眼鏡の侍女がついている。
それにカルクスがアスライラの近くにいないかも。それなら私が行くしかないじゃない。
アスライラが賊に殺され戦わずして勝つ。そんな美しくない勝利を女王は望んでいないだろう。
「王女!!」
「貴女さっき帰ったはずじゃ……」
私が呼ぶと、すでに敵を倒したアスライラはこちらを向く。
どうしようか、もうここに敵はいないようだが武器を――――
「フハハ!!死ねぇ!!」
そんな……上からふってきた賊が私の眼前にいるではないか、なにも身を守るものがない。
武器を拾うことも間もなく、道中にチャンスはあったのに、なにも考えずここへ来てしまった。
「まったく……」
アスライラが即座に背後から剣を投げ、賊は倒れた。
私はアスライラの元へ走る。
「なんで来たの、私が嫌いなんじゃなかった?」
眉を下げて困ったように笑うアスライラ。
「だって……まだ貴女に本当のことを聞いていませんから」
さっきの眼鏡の男を信じたわけではないが、コンハーの件について真相を知るまでこいつを死なせるわけにはいかない。
「はあ……とにかく城を出ましょう」
私たちは部屋を移動しようとした。
しかしアスライラが私をソファへ飛ばす。
パーン、軽い銃声が耳へ届く。
アスライラが撃たれ、発砲した者は逃げていく。私はアスライラの元へかけよった。
近くにチョーカーが飛んでいるということは、首を撃たれたのよね。
きっと私をソファへ飛ばしたのは銃を持った者に気がついていたから。
「なんで……」
私をかばう理由もメリットも、こいつにはないのに。
ついさっきまでこいつが憎かった筈なのに、どうしてこんなことしたのよ。
もう無駄かもしれないけど、私はアスライラを背おって移動することにした。
「……重い」
背に乗せようとしたアスライラを一旦そこに寝かせる。
女同士だし体重はそんなに変わらないだろうと思ったのだが、あんがい重いわ。
「もういいわ無理をしないで」
「……?」
男が女言葉でしゃべった。ここには私とアスライラしかいない。
なら一体誰が―――
「ふー死ぬかと思った」
そう思っていると、アスライラがむくりと起き上がった。
「ちょっとおおお!?」
アンタ生きてたの!?まさかゾンビ!?
「背負ってくれないの?」
「怪我してないじゃないですか……ていうかその声」
ハスキーとかじゃなくて、どう考えても男だ。
「ああ、チョーカーとれたから調整ができない様だな」
アスライラはほつれたドレスを着替え始める。
「また狙う男がいたから咄嗟に避けた」
またということは、私は以前にも狙われていたのだろうか?
「……まさか貴女いや、貴方―――」
「私、実は男なんだ」
バサリと脱いで、上半身が壁のように平らなアスライラ。
「え――」
「しっ!人が来たらバレる!」
私は叫びそうになるが着替え中のアスライラに口を塞がれた。
「なぜ女装をしているかは後で話すから、今は黙って後ろについてこーい」
私は口を手で塞がれたまま頷く。
「あ、替えのチョーカーを買うまでしばらく風邪で声がでないってことにしておくから」
まだ手がはなれないので苦しくなった。
アスライラが着替えを済ませ、イセリー達、ウソルを連れたリグナント等に合流した。
入り込んだ賊は制圧され、一先ずなんとかなった。
「あっという間だったわね」
私はエルゼルに話す。
「元々ここは戦闘部族ですから、こういう事には慣れている為でしょう」
負傷した者もいるが、賊は大した事がない雇われ一味だったようだ。
「――まさかアスライラのところにいたなんて予想外だった」
イセリーが相変わらずの無表情でいった。
「ちっ違うんです!エルゼルがしっかり貴女を護衛しているだろうと信頼して……」
王位争い的には混乱に乗じてあいつを始末すればよかったのかしら。
「もう戻ってこなくていいから」
それは屋敷を継ぐなり、アスライラの元へいるなり勝手にやれという意味なのか。
イセリーはそれ以上何も言わず去った。
――とにかくアスライラに詳しく聞かなければ。
「……と、ある男が教えてくれました」
アスライラの部屋にいった私が真っ先に尋ねたのはコンハーについて。
奴を脅し、婚約破棄させたのはアスライラでなくイセリーなのだと言っていた。
そもそも私がアスライラを憎むようになったのは、コンハーがアスライラに迫られたと言っていたのが発端なのだが。
「なぜコンハーはそのような嘘を?」
「まああながち嘘でもないけど……」
どういう意味なのだろう。
「なぜ私が女だと偽っているか。先にこっちを知っておいたほうがわかると思うんだが……」
「は、はあ?」
とりあえず話してくれるなら聞いてみる。
「私のアスライラという名は人工母機の名からとった偽名、本当の名はアスライルだ」
人工母機生まれということは女王とは血が繋がっていないのね。
「ただし他の王子も同じ母機から生まれている。父親が違うだけで兄弟ということに偽りはない」
「……はい」
「この星の王位は女でなければ継げない。というのはわかるな」
「ああ……だから女装ですか」
アスライラは王位継承の為に女装した。だがそれとコンハーはたいして関係ないと思う。
「結論から言うと好きな女がいて私が王位を継いだ後、その女を伴侶として女王に据えようと思った」
「せっかく王位につくのに話してしまうんですか!?」
ていうか好きな女って誰よ。
「……鈍いな」
「え?」
「私は貴女が好きだから、コンハーが邪魔だったんだ」
アスライルは扇子の先で私の頬を撫でた。
「……私、この国の女王になんてなりたくありません」
私は女神に戻るのだがら、この国にとどまるわけにはいかない。
「いや、もう王位争いは止める」
「なぜ?」
「女装がバレたら継承を退く。そうあいつと賭けてたからな」
「つまりイセリーが女王に!?」
本当にそれでいいのだろうか。
「……出会った時からずっと貴女が好きだった。結婚しよう」
「……!」
――――――――――
「兄に勝ち、王座を得られよかったのでは?」
「いいや、負けたよ……まったく、本当にほしいものはいつも兄に奪われる」
―――――――――――
私はアスライラ改めアスライルと結婚することになった。
アスライルは私の夫としてザーマァ家に婿入りし、女神に戻る願いは来世に託す。
方々への結婚の報告から一ヶ月後。
「ゼレスティーヌ女王にジュプスへ招待された?」
「そう、一週間後。自家用宇宙船つきでだ」
「一週間後!?」
「断ったら死ぬかもな」
「……」
「どうしたハキサレーラ、綺麗な顔が歪んでいるぞ」
改めて考えるとアスライルは男、つまり美しさを張り合っていたゼレスティーヌは異性にして異星の王だったわけね。
あのときの私は天井裏に潜んでいたことを思いだし、笑いが込み上げてきた。
「……ハキサレーラ、きっと貴女はまだ私が嫌いだろうが――」
「そんなわけないでしょう。私が貴方を嫌いならこの星を滅ぼしてたんだから」
【ベスト...アスライラ=ザーマァ】




