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全員共通 一周目 アイウエ

「別れよう」

「え?」




私は前世で女神だった。転生したら悪名高い星のアクヤーク星の公爵令嬢・ハキサレーラ=ザーマアに転生してしまい。

コンハー・キークソンという同じく公爵家の婚約者がいたのだが、今日突然、婚約破棄されてしまった。


「なぜ、どうして!?」

「王女様に求婚されてしまったんだ」


このカレプレンTHEアクヤーク星の王女といえば二人しかいない。


次代女王で第一王女のアスライラ=オザナリーナか妹のイセリー=ケオトシーナだ。


私は女神だった前世の頃から勝ち気で、負けず嫌い。

こんな男もうどうでもいいが人間の小娘ごときにとられるのは癪だわ。



――――――この星、滅ぼすことにしたわ。


_____________


なぜ私が女神から人間に転生したか――――


『ふふふ……グースカ寝てるわ』


あれは今から十と数光年前。


『娘神アミテルナよ、ワシのカツラしらんか?』


私は少しふざけて父神のカツラを隠した。


『なんのことかしら?』


ポロッ。


『人間界で修行してくるのじゃ!!』


それがバレてしまったからなのだ。


「あーらあらあらハキサレーラじゃなーい」

「アスライラ様~ホホホ」


私は第二王女イセリーの侍女であの思い出すのもいまいましい元婚約者の男は王子ウソルの従者。


なので、毎日城に来ているが、アスライラは超絶大嫌い。

いつぞやの巡りで、イセリーと皇の座を争っていたが、この次限でもまた姉妹のようだ。


面倒だ。イセリーには特に感想もなにも無いが、このさいだから二人とも消えてもらおう。


「貴女の婚約者がどうしてもというから、夫の一人に加えようと思ったのよ。ごめんあそばせ」


この女、始末するわ。

_______




女神に戻るにはこの世界で何かをしないといけない。

まずは女神力を集めなければ。


「いくわよ!」

私は頭巾をかぶり、女神の力を宿す植物を摘みに森へ出る。


「えー」

お供には従者のエルゼル=ヒイロカネン(元天使)を連れていく。


「なにか文句でもあるの」

「ないです」


さあついた。木々生い茂りたる木漏れ日の森。


「元女神のアミテルナ様、なんで今さら元に戻るなんて言い出したんです?」

「このまま人間として死ぬのも悪くないかなーと思った矢先に婚約者が裏切ったからよ」


「……」


さて、なんかいい花があったのでまわりに絡まっている雑草をチョキチョキ。


森から出ないと、ここは暗すぎて色が判別できない。


「濃い紫の花ね」


ギリギリ黒にはなっていないので、これなら大丈夫。


後で屋敷の部屋に戻り、瓶詰めにして魔力を抽出しよう。

___________



「ふう忙しい忙しい」


なにやら腹を揺らしながら歩くおデブ男。ンナンフェ女王の正夫<せいふ>デブッサイだわ。


アスライラの父で昔は格好よかったらしいが、いまいち信用できない。

女神に戻ったら時渡りの泉鏡<せんきょう>で見てみよう。


見つかって目をつけられたら計画がオジャンジャジャーンになってしまうので、壁にそって隠れながら移動しよう。


―――蟹歩きをしていると、なにかにぶつかった。


「やあ」

「ウソル王子、ここでなにを?

私に言えたことではありませんけれど、仮にも王子がこそこそと壁に隠れるのは、いかががなものかと……」


第三夫の息子ウソル=サナーン。壁にはりついてなにしてるのこの男。


「ほら、オレこの国じゃ大した権限ないからデブッサイ怖いし」


この星は元々アッゾマネス系で、ここ最近では異星のテラネスから買い取った人間製造マスゥイーンで、更に男のいらない世界だからしかたないが、夫はとりあえず女王様に愛される。


「そういえばうちの従者が婚約を……」

「……」


私はつい目を皿のようにしてウソルを見た。


「なんでもないよ!!さらば!」

_________



さて、いつまでも遊んでいる暇はない。一先ず奴の世話をしなくては。


「姫様、ご本でもお読みしましょうか?」

「別にいい」


第二王女イセリー。アスライラよりマシだが、女王の座を狙っているため目がギンギラしている。


「……でアスライラの同行は?」

「はい?」


いきなりなにを言い出すんだろう。


「さっき窓から話してるのを見たの。

甲高い笑い声がこっちまで聴こえてきて、イーライライラする」


あっちが直情なら、こっちは神経質みたいね。めんどくさいのでやはり星ごととまとめて消そう。


「失礼いたします」

ドアがノックされる。エルゼルだ。いったいなんの用かしら。


「ンナンフェ女王陛下がお呼びだそうです」

「……わかった」


イセリーはしぶしぶ立ち上がり、しゃなりしゃなりと歩く。

そういえば背が高いから、ヒールの低い靴を履いているみたいだわ。

普段はドレスに隠れて見えないがコンプレックスなのかしら。


まあどうでもいいけれど、私はここで待っていよう。


「ところでエルゼル、なぜ貴方が女王の伝令をしているの?」


「アミテルナ様の所へ向かっていた際に、通りかかったアスライラの従者から押し付けられました」


アスライラの侍女は数回程度だが顔を見ている。

おちついていて、一言で言えばキレものといった印象の妙齢の女。

ただの人間にしては、まあすごい。よくアスライラに仕えられるな、というくらいの感想。


だが、アスライラには従者もいたのか――――


「従者なんかいたかしら?」

「最近城に入ったそうですが、まるで作り物のような美形だそうで、アスライラが顔を見て一目で気に入ったとか」


「なるほど、作り物のような美形……

人間にもそんな突出した者がいるのね。会ってみたいわ」


それはそうと、女王はなぜ二人を呼び出したのかしら。

どうも気になり、私とエルゼルはこっそり天上の柱にのぼる。

普段から会話を聞き耳するためのクリアタイプ補聴器があるのでつけた。


「それで二人とも、王座争いはどうなっているの?」


現女王ンナンフェが玉座から二人を見下ろしている。

ようだが、カーテンの中にいて顔は見えない。


「条件を忘れたわけではないわね?相応しい伴侶を先に見つけた方が女王よ」


と女王はいうが、デブッサイがこの国の女王の伴侶に相応しいとは思えないのだが。

さすがのアスライラも十八番の高笑いどころか、声すら出ないようだ。

同様にイセリーも発言しようとはせず。ひたすら沈黙に徹していた。


「もう下がってよろしい」


二人はそそくさと去る。私たちも見つからぬよう即座に逃げた。

こんなときは飛べたらいいのに、やはり人間は不便ね。


それにしても、水面下でなにかやっているとは思っていたが、本格的に女王の座を争うようになっていたのね。


王位争奪戦が激化されたら、イセリーの侍女の私は動きにくて困る。。

アスライラを勝たせるのは万が一にもあり得ないので、イセリーを勝たせるしかたない。

しかしアスライラは頭が回らないだろうが、優秀そうな侍女はついているのがどうも油断ならない。

それに、いくら条件が女王の認める伴侶をつれてくることでも、長子のほうが優位そうに見えるわ。


女王争いが先か、女神に戻り星を滅ぼすのが先か――――



昨日つんだ花を処理するのを忘れていた。まだ黒にはなっていないので大丈夫だが、完全な黒になると魔力しか残らない。

本当は神力の強く含まれたピンクか淡い青がよかったのだが―――花から邪魔な魔力を抽出し、水溶した神力を吸収するために瓶へつめる。


それにしても、昨日は婚約に女王争いなど多様なことがあった。

とくにこの星のンなんとか女王の姿を見ることは滅多にない。

いつもカーテンの向こうにいて、遠くから眺める程度だったわ。

いずれにせよ、女神に戻るのが遅くなった場合、星を滅ぼす前に女王を倒すことになるわね。


「お嬢様」


女中<メイド>が起こしにきたようだ。ああ、もうなれたけど面倒だわ。

女神だったときは好きなときに起きて好きなときに寝ていた。


飲食はネクスタルやペリペリスの金林檎。泉の水を浴びる。

要するに好きなものを食べたり、好きなことをしたりが人間はできないから不便。


はやく女神に戻りたーい!


「おきていらっしゃいますかお嬢様……!」

「ええ、起きているわ」


今起きたということにしておこう。着替えボタンを押し、パパッと着替えを済ませる。


ドアをひらいて優雅に歩き、食事をしにいく。


「ハキサレーラ、お早う」

「お早うございます。お兄様」


兄のマレクロン。穏和で人畜無害といった男だ。


「聞いたよ、昨日は酷い目にあったね」

「……ええ」


彼の前では可愛らしい妹を演じている。


「姉さんがなんかしたんじゃない?」


弟のリグナンド。後から入ってきて早々、嫌味なやつだわ。


「まあ酷いわ」


こいつの前では頼りない姉を演じる。ある意味どちらも素の自分をマイルドにしたようなものだ。

嘘をつくときに少し本当のことを混ぜるように、偽りの性格に、ほんの少しの本音で語る。


いくら壊すまでの余興とはいえ、全てが嘘なんて悲しいもの。



「聞いたか?」

「ああ、聞いた聞いた」


なにやら城前を守る門番たちがヒソヒソと話している。もしや女王争いのことだろうか、聞き耳を立てよう。


「どんな話なんだよ?」

声変えマイクで、会話に割り込んでみる。


「アンヴァート星が滅びたらしいんだよ」

「まじか?なんでだよ?」

「皇帝オルヴェンズが闇の魔術師リグルスによって倒されたらしいんだ」


この星が滅ぶより先に他星が滅ぶなんて、皮肉なものだわ。


「後継ぎいなかったんだなー」

「まあ皇帝の寵愛する姫が国を建て直すって噂だ」


もう用はないので去る。たいした収穫ではなかった。


「お前さっきからなに一人で会話してんだ?」

「あれ、俺たち誰と話してたんだ?」

―――――



いつものように侍女の立場を利用して城の中を一通り歩いてみたが、騎士や使用人達の間ではまだ王位争いのことは大して噂になっていないようだわ。

さすがに神官や政をする者達の場には立ち入れない。

この先、右手に大臣室、左手に宰相室がある。

―――この星、大臣と宰相が同時にいるのよね。


他星には大頭領と首相が同時にいるが、魔法学園でいう学園長と副学園長、校長と教頭のようなものかしら。


女神に戻ったら、他星にある学園とやらに行きたいわ。


……私何かを忘れている気がするけれどなんだったかしら。

ああ、そうだわ。思い出した。アスライラの新しい従者とやらを見に行きたいんだった。


きっとアスライラの部屋にいることは間違いない気がする。

城の外にいるならこんなに城を歩きまわっているのに、会っていないのはおかしいもの。

だけどアスライラなんかの部屋に近づきたくもないわ。


さてどうしたものか、気長にばったり会うのを待つしかないかしら。

どうせ星ごと潰すのだし、そのときチラッと見ればいいわよね。


とは思ったが、さりげなくアスライラの部屋の前を通りかかってしまった。


「あら、貴女はイセリー様の侍女の……」


冷ややかな眼差し、眼鏡の女。名前は興味ないから知らないけど、アスライラの侍女だわ。

向こうもどうやら名前を覚えてはいないようだし、ここはごまかそう。


「あら、ごきげんよう。アスライラ様の侍女の……」


なにやら紅茶を運んでいるようだ。メイドの仕事なのに、侍女が運ぶなんて、ご苦労なことだわ。

アスライラは要心深いのか、いや……この侍女が有能なだけね。

いちいち毒味用の魚なんて使っていられないというところかしら。

……そんな細やかなこと私には関係ないわね。なんだかイセリーが暗殺されやしないか心配になってきた。

けれど不在の間はエルゼルに見張らせているもの。元天使でも彼には堕天使の力がある。


ならきっと大丈夫ね。


「では、私は御茶を運びますので」

「ええ……」


何も問われなかったが、絶対怪しまれていたに違いない。

ラッテンマイアさんを若くしたような厳しそうな眼鏡だったわ。となると……アスライラがおしとやかなアララなんて笑えないわね。


一旦イセリーの元へ戻ろうと、移動をはじめた。イセリーの部屋はアスライラの部屋と同じ3階にある。

出入り口は反対側についていて、二人が鉢合わせるとしても遠方から。

なんらかの皮肉をこめているのかしら。


踵をかえすと、ドン!と誰かにぶつかった。


「あら、ごめんなさい……」

「いやこちらこそ」


見かけない顔の黒髪男、どこかであったことのあるような雰囲気がある。

だれだっただろうか。

もしかしたら、アスライラの新しい従者?

軽く振り返ると、男はニヤニヤと笑いながら手を降っている。

なんなのかしら、人を笑うなんて失礼しちゃうわ。



「失礼いたします」


イセリーの部屋へ入る。こちらをチラリと見て、手元の本へ目線をうつす。


「さっき男と話してたのが見えたけれど」


イセリーは本を読みながら、先ほどの私の行動について話そうとしている。

話したらなにかイセリーに都合が悪いことなどあるのだろうか?

政敵ならまだしも、私が誰と話そうと勝手である。


「いけませんでしたか?」


本音の毒を隠しつつ、あくまでも無知を装いながらたずねる。

イセリーは馬鹿なアスライラと違って、どちらかと言えば、百歩譲って知的な印象。

身内欲目の甘いレモン、敵に対したすっぱい葡萄ではないと思いたい。


「べつに……さっきの男のことだけど、アスライラの従者。名はたしか……」


いいところでドアがノックされた。イセリーは本をベッドの下へスライディング。


「姫様、夕食の用意ができました」


メイドが報告にくる。


「そうなの~じゃあ部屋に運んで頂戴な~」


相変わらずの豹変ぶりに、脱帽ものだ。

メイドが去ると、ほっと息をつく。このスライディングは久しぶりに見たわ。侍女になってしばらく経過したときに見て以来ね。


私といるときはイライラしながら本を読むが、なぜか使用人やアスライラ達の前では猫を被る<キャットキャップ>。

私のことを信頼しているということかしら。

星を滅ぼすときに先の関係次第では友人として助けてやってもいいが、まだこいつが友人とは断言できないわね。



今日は茶会、貴族令嬢たちがテラスで恋話や愚痴などをしている。


「まったく男の分際で……」

「姫も姫ですわよね……なんでそんな男をハレムに……」


私は周りから同情され、婚約者のことをコケオロシていた。


「まあ、お陰であの男がダメンズだと知れたのだからそれはよかったわ」


「そうですわ、ハキサレーラ様聞きまして?」


侯爵か伯爵の娘か忘れたがとりあえず公爵令嬢の私より身分が下の女が私に声をかける。


「なにかしら?」

「近頃、他の星ではレディのハートを盗む怪盗が出るんですって」


心臓を盗む怪盗、なんて恐ろしい。心臓なんてとられたら死んでしまうわ。


「わたくしのハートも盗んでほしいですわ~」


なにやらきゃあきゃあと沸き立つ。この子たち正気なの!?


茶会も終わり、私は侍女の仕事へ戻る。この星に怪盗なんて早々現れるわけがないわよね。

イセリーの部屋へ入る。窓からスコープで何やら観察しているみたい。

なんかこいつ、ニヤついている。そんなに面白いのだろうか。

こっそり近づいて、私も手元にあったオペラスコープを使う。


「ふ……面白い……」


なにやら女と男が喧嘩している。ああ……そういうこと、趣味悪いわね。


よく見たら女は、アスライラの侍女のナントカだ。

後でなにかに使えそうだから、写真を撮っておこう。

それにしても、クールさんでも痴話喧嘩をするのか。

外面を冷たく装って、内側では熱を持っている。これだから人間って面白いわね。

――――


「あ、そうだ」


アスライラがやってきて、イセリーはなにか閃いたらしい。


城のテラスでイセリーの話相手というテイで、同じく茶を飲むアスライラの偵察をしてすることになった。


インドアのイセリーが外出など滅多にしないが、周りは薄幸の妹と勝手に考えてくれるであろう。


悪評など広めなくとも、アスライラは自らヘイターをバキュームしている。

あるときは婚約者を奪った。

またあるときはしれっと被害者の前に顔をだす。

その実態はこの星の王女、実にアクヤーク。


それにしてもここは華=女ばかりなので華の対義語=男が現れないものか。



「アスライラ様~」


そう思っていると、丁度良い頃合いに男が現れた。黒髪の男と、憎きコンハー。


黒髪の男は、こちらに軽く微笑む。

やはりなんだか、私はあの男を知っている気がする。


「よくきたわカルクス、コンハー」


あの男はカルクスというのか……知らない名だわ。


「そこに座りなさい」


アスライラは足を組み、ふんぞり帰る。まるでデブッサイのようだ。

女は父親に似るというから、将来は豚<シュヴィアン>姫になること間違いなし。


婚約者を奪われたことも然ることながら、わずかながらの罪悪感もないような奴らの態度に腹が立つ。


アスライラが横目でこちらを見て、にっこりと微笑む。

まるで私を嘲笑うかのようで、沸き立つイライラを沈静しつつ微笑みを返す。


女神に戻ったときにやりたいことが増えた。

殺すノートに100ポイントたまったときは死神界<ディウラス>の局員に頼んで善人になるまで輪廻転生できないようにしてやろう。

永久ではなく善人になったら許すという私の慈悲深さたるや。

――――


少し前までこの星の周りの情勢など、興味すらわかなかった。

だが以前アンヴァート星が滅んだという話を聞いて、この星は私が女神に戻る前に滅ばない保証はないと気がついた。


他星の情勢とこの星の情勢、双方を維持しつつ、女神に戻るための細かな作業。

それらを平行してやるなど、女神だったときの私には片手で足りることでも、今の非力な細腕では無茶がある。


私が無事にここを出るまで星が滅ばないことを祈るしかない。

一応なにもしらないよりはいいので、他の星の特徴を本で大まかに調べよう。

――――――


(まずはここから……)


【カレプレン・アクヤーク】総じて女の為の楽園である。男はすべからく女を崇めるべきである。そうでないものは死あるのみ。表のカレプレンと裏のアクヤークがあり、子が一人なら一人で全体を、姉妹が争う。勝者は表、敗北したら裏側を管理する。カレプレンはマイルドでアクヤークはボンテージだ。


(ここカレプレンだったのね。というかどの辺りがマイルド?……まあいい続きがあるので読もう)


第2王女ンナンフェは戦いに負けるも、第1王女ヲトヲヒゥは裏側を希望した。


(なんですって……?)


【テラネス・ジャポナス】

女神ガイアースの加護を受ける。海が陸より多い。医学が進んだ星。


【マージルクス・チャイカ】

カレプレン・アクヤーク同様、軍神アーレウスの加護を持つ女系アッゾマネスがいた。戦闘狂いの――人ような部族と争いつつ調和していった。今では陸軍最大機関となっている。


(いかないわね)



【マキュス・ヴリタリアン】

マージクスと敵対する理性派の眼鏡が多い星。知恵の女神メティシアの加護により知力が高いため科学者や賢者も多くいる。ただし、飯が不味い。


(賢者って興味あるわ)



【ジュプス・ディーツ】

全能の神ジウスの加護を受ける大惑星。都星である。全惑星を従属させる宇宙軍がある。たまにアニモニアの雨がふる。


(気に入らないけど、ジウスが相手ではこの星はさすがに破壊できないわね)


【ヴィサナス・ウラナイナ】

原星人は開放的で、美男美女のみがいる。魔法軍最大基地がある。硫酸の雨にご注意。


(テラネスから水分を持ってきたら、海が二酸化炭素を吸収するからシーオーツーは減るわよね)


【ドゥーブルフロマージェ・フランポーネ】

魔法学園はここにしかない。メシウーマである。


【プルテノ】

冥界のゲートがあると恐れられる。王侯貴族のみが在住を許される星。他星の攻撃により何度も破壊されたがそのたび魔法使いによって直される。


【ウィラネス・バアブル】

高威圧、高プライド、高姿勢の三高。表は公爵が納める格式高い雰囲気。裏はナウい。空軍最大基地がある。


【マニュ・アルダケダシナン】

全星の共通通貨コエマドゲルポを作る最大銀行がある。


【ポイゼェン・バタカンチン】

シクリス神の加護を受ける。別名死の星。十字軍最大基地がある。


【ミューン・カグア】

竹とウサギのアイスが主に生産される星。


【サニュ】

神に見放された星。新興宗教があったり教祖を名乗る詐欺の多い星。地面からの日差しがハンパない。


……いけない、きがついたら寝てしまっていた。他の星について調べるのはまた今度にしよう。




起床し、植物からわずかに採取したものを飲む。

メイドが来る前に着替えを終わらせて、早めに城へいこう。


「おはよう」

「お兄様、おはようございます」


相変わらず早起きね。マレクロンはいつも一番最初にここにいる。

使用人より早起きらしく、誰も彼を起こしに行くものがいないらしい。

いつ起きているのかしら……むしろ寝ていない?

人間が寝ないなんてことはないわよね。


私は席について、食事を始めることにした。


「あー眠い……」

リグナンドがあくびを噛み殺しながら入ってきた。私があまり眠っていないのに気楽なものだわ。


イライラしながら、ささっと食事をすませる。


「早食いは太るんだぜ姉さん」

リグナンドはニヤニヤとしているが、怒る気にもならない。

私を怒らせたかったなら残念ね!女神に戻ったら太らない体になるわよ。

――――


ペガッタコーンの馬車で城へむかう。しばらく景色を眺めていると、城前についた。門番には顔パスだ。


「あ、ハキサレーラ嬢…どうぞ」

「……」


婚約者を王女にとられたことからか女のほうは笑いをこらえ、男のほうはあわれんだような目で見ている。


「失礼いたします」

「入って」


イセリーの部屋にいくと、丁度本を読んでいた。イセリーがなんの本を読んでいるかというより、その本の中身が気になった。


要するに背後から覗き見がしたいのだ。さりげなく背後にまわる。


~王とはなんたるか~という文字がパッと目に入った。

国の納め方とか、兵法、王位争い系の大全だろう。


「お茶は要りますか?」

「うん」


読書しながら生返事されたが、偵察もかねてメイドにお茶と言うため城内を歩く。

通りがかった場所で、メイドたちが会話をしているのが聞こえる。


「そろそろね……」


そろそろ、なにがあるんだろう。


「メイド採用試験、気が抜けないわね」


ああ、新人募集の時期なのね……いまのところ特に粗悪な下働きはいないが、彼女達の選定のたまものか。


「ねえ聞いて、アスライラ様がまたメイドクビにしたんだって」

「また~?」


アスライラはあの通り、メイドが気に入らないとコロコロかえている噂なので、しかたない。


「やっぱり使えるならイセリー様かなー」


私の知るかぎりイセリーはメイドが仕事をやればいいだけなので、自分から頻繁に変えたりはしていないようだ。


「でもさ、イセリー様はマシだけどなんかあのブリブリがムカつく~」


それ、演技よ。って言いたい。


「フライドチキンはやっぱり骨付きのほうが美味しいらしいよ」

「なんでだろうね」


そろそろ話題も変わったし、いいわね。


「お茶を用意してもらえるかしら?」

「イセリー様にですね、はい」


メイド達はすっと構えた。すごいきりかえぶりだわ。


よしイセリーの部屋に行こう。本当はいきたくないが、魚にスポイトで茶を飲ませるだけの簡単な作業をしなくてはならない。


私が定位置につき、すぐメイドが茶を淹れにきた。メイドが去ってから、毒味させる。


しかたなくても自分の淹れたお茶が毒を疑われるとメイドが悲しむ。というのはたて前。

メイドが見ているときにやると、イセリーの印象が少し悪くなるからでしかない。


私は役目を終えたので、警備をエルゼルに任せて庭を見に行く。


最近森へ行っていないので、花を探せていない。あの花はどこに生えるか、いまだに謎で見つけたらラッキーな代物。


その花が話に出てくるのが大惑星ジュプスにあるパレッティナという大陸。病持ちで厄介払いされた皇子が、昔この国に婿<とつ>いできたが、村娘が彼の病を治すため、その花を求めて崖に登ったという。結果的に王女は村娘に皇子を奪われたという話。

女神だった頃に、他の女神達から聞いたので真偽は定かではない。

とにかく頭巾をかぶって庭を探そう。


「あれー姉さんドジョウすくいしてるの?」

「リグナンド!?」


なぜここに――――


「オレ、ウソル王子の新しい従者になったんだ」


―――最悪だわ。


「あら~ハキサレーラ~」


げっ……ゲスのアスライラまでわいてでた!!


私は笑顔で庭を去ってイセリーの部屋へ避難しよう。


「ごくろう」


ドアの前にいるエルゼルに労いの声をかける。


「あ、もういいんですか?」


彼はやれやれと去っていく。そういえば、堕天使は羽があるわよね。こんど崖の探索を頼もう。


「ハキサレーラ」

「あ、お兄様」


兄は城内の司書をしている。時刻的にいまから交代みたいだ。


「いまの彼とは親しいのかい?」

「私がこの場を離れる間、見張らせたの」

「そうなんだ」

「……あ、ついさきほどリグナンドに会ったわ」

「また嫌なことを言われた?」

「そうなの。……じゃあお仕事頑張って」


私はイセリーの部屋のドアノブに手をかける。


「あ、丁度いいところに」

「なんでしょう?」

「アスライラの弱味を探ってきてよ」


なんで今それを言い出したのかしら。偶然でも嫌なのにわざわざ会いにいかないとならないなんて。


憂鬱になりつつ、アスライラを探しにいくことにした。

奴は庭のベンチに一人、どっかりと座っており、周りに人気はない。

私が暗殺者なら確実に殺っているくらいに油断しまくりだ。

木に隠れつつ、背後から観察する。


「ハキサレーラ」


奴は後頭部に目をつけているとでもいうのか、気がつかれてしまった。

しかたなく、私は姿を見せにいこうと牛歩する。


「いるわけないか……」

「きゃあああああ!?」


気がついていないことに拍子抜けし、足を木の根にひっかけ、転びそうになる。

なんとか踏みとどまるが、時すでに遅し。


「ふふ~やっぱりいたわね」


計算か偶然かはわからないが、すぐに立ち上がり平静を装うしかない。


「ねえ、私のこと殺そうと思ってるでしょ?」


いきなり予想外なことを言われ、あいた口がふさがらない。


「なんのことやら……」

「とぼけてもバレバレよ」


残念ながらピンポイントでアスライラを殺そうとしているわけじゃない。お前を星ごと潰すってことよ。


「今日から私の侍女になって、近くで殺してみたら?」


―――冗談だろうが、敵の弱味を握るには最適な場所よね。不本意だが、すぐに断るわけにはいかない。

まずはイセリーに聞いてみないことには。



「あ、ウソル王子」

「やあ」


またカタツムリみたいに壁にへばりついている。今度は第四夫のゼニクーレから逃げているみたいだ。第三夫が平民だったため、しかたないのかもしれない。


「ゼニクーレはマニュ星の財閥ゼニクラーウ伯爵の弟らしいんだ」

「そうなんですか」


「あ、デヴッサイだ……元サタナス王で息子に星を奪われてから拾われたんだよね」


「あ、第五夫の……」


ただのヘタレ王子かと思っていたが案外内部に詳しいみたい。アスライラの弱味をそれとなく聞きたいわ。

―――――


イセリーに意見を聞いてみると、やれやれといった顔をされた。


「好きにしたら?アスライラの弱味を握れるなら、どんな手を使ってもいいんだよ」


イセリーはそう言うが、私は―――――。


◆【変更しない】

【イセリーの侍女でいる】


◆【変更する】

【アスライラの侍女になる】

【ウソルの侍女になる】

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