6話 家族になろうよ。
「生まれてすぐに別々に貰われていったって聞いて…それからはお兄ちゃんに会いたいという思いが募っていったの。お婆ちゃんになってガクってなって…変なお爺ちゃんが生まれ変わらせてくれるって」
「ほぅ、輪廻転生はあるんだな」
「りんりんてんてん?」
「違うよ…違うけど君って可愛いね」
「えっ…そうですか?可愛い?…ホントに?」
しずくさんはうつむいてモジモジする。妹に子供ができたら溺愛しそうだな、と思う。このぐらいの子は可愛いんだな。そして、更に猫耳が猫好きの俺の心に響いてくる。
「お兄ちゃんも転生してるって、そこに連れて行ってくれるって言うから来たのに…お爺ちゃん、間違っちゃったのかな」
うつむくしずくさんは悲しそうに微笑んだ。
ハナとクロはそんなしずくさんを見上げながら鳴いていた。
「えー、妹になりなさいって?」
「え?」
「ハナちゃんがここんちの妹になりなさいって言ってます。クロちゃんも賛成って」
「まさか、猫が何言ってるか分かるの?」
何でそんなことを聞くの?みたいな顔をされても。普通は猫が何を言ってるかなんて分からないのだよ。
「だって、私猫だったから」
ハナとクロが胡座をかいた上に乗ってきて、しきりにニャーニャー鳴き始めた。
「えーと、これは?」
「しずくを洗ってあげなさいって…」
恥ずかしそうにまたうつむく。
「えっ?どういう事だろ」
「ハナちゃんもクロちゃんも家族になったら洗われたって言ってます。二人共アレですよね、野良ちゃんだったからキレイにしようとシャンプーされたんですよね?」
野良猫だから、やはりノミとか気にしますしね。そりゃあ洗いますよ。
「しずくさんも洗って欲しいですか?」
「はい…」
「ふぁっ!」
聞いておいてアレだが、ま、まぁ、お父さんだと思えば中学に上がる前ならギリセーフかな。あ、しまった、家にあるシャンプーは男性用だぞ。
「ちょっと待っててな。買い物してくるから」
こんな時に目の前がコンビニだと助かるね。女性用シャンプーとコンディショナー、歯ブラシやタオル、し、下着を買ってきた。
「ちょっと大きいかもしれないけど、とりあえず使って。明日になったら服とか買いに行けるからね」
「はい、ありがとうございます」
こうして、今迄で一番緊張するお風呂タイムになった。




