5話 来訪者。
ドアを開けるとフードを深めに被った人がいて、もじもじして何か言いたそうにしている。
ポンチョみたいな感じで、身体をすっぽりと隠しているのでどんな人間か分からない。
「あの…」
言葉をかけた瞬間だった。
「お兄ちゃん!」
フードが捲れる勢いで胸に飛び込んできた。高い声だから女の子だ。それに…それに、耳が頭の上にある!?はぁっ?
「お兄ちゃん!会いたかったぁ!しずくだよ!」
「えーと、どちら様?」
しずくと名乗った女の子は、俺の顔をじーっと見て言った。
「あなた、誰?」
「賢司ですけど…しずくさん?」
「あっ!」
女の子はスルリと部屋の中に入っていった。
「ちょっと、アンタ!土足、土足!」
流石に土足は困る。
「これ!この写真!」
「ああ、その写真は前に飼っていた猫だよ」
特に暴れる様子もなかったので、抱き上げてソファに座らせ、靴を脱がせて玄関に置いてくる。女の子はその間も写真を見つめたままだった。
「そっか、前に飼っていたって事は…お兄ちゃんはここにはいないのね…どこに行ったの?」
写真をなでながら言う
「病気で亡くなったよ」
「そっか…間に合わなかったんだ…神様も手違いするんだね……ううっ…」
女の子は泣き出してしまった。そおーっと近づいてくるハナとクロ。座っている膝の上に二匹とも乗ってしまった。
「ありがとう、慰めてくれるんだね…そう、お兄ちゃんには会ったことないのね」
「あのぅ、しずくさんでしたか、落ち着いたら説明してくれますか?」
しずくさんは静かに語ってくれたのです。




