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7話

【悲報】依頼に来た新米冒険者が酷すぎる件。

 日本だったらこんなスレッドがすぐに立っていただろう。

 俺でも立てる。

 それ程までに新米冒険者の態度は悪かった。

 ハーレム男とゆかいな仲間たち。

 この時点で察しがつく。

 依頼中に乳繰り合うし、語尾にハートマーク付いてるし。

 終いには「君も手伝いたまえ(はぁと)」とか言い出す始末だ。

 俺には付けなくていいんだよッ。

 ムシャクシャしたから報酬半額にしてやった。

 天誅だ。ざまあみろ。


 〇


 小さい頃、キャンピングカーが夢だった。

 大きくなったらキャンピングカーで暮らそうと本気で思っていた。

 誕生日プレゼントにねだった事もある。

 買って貰えなかったけど。


 そして今日、俺は幌馬車を手に入れた。

 言い換えたら動力と鍵の無いキャンピングカーを手に入れた事と同じになる。

 風通しも抜群だ。夜風が身に染み込む。

 しかもそんな素敵なキャンピングカーでしばらくお泊まり会だ。

 やったよ、姉ちゃん。俺、異世界で夢が叶ったよ。



 突然にピューと風が吹き抜け、急に冷める。

 折角いい夢が見れそうだったのに。


 異世界の夜はまだ長そうだ。



 ○


「ごめんください。ごめんくださーい!!」

 んぁ?うるさいな。

 誰だよ朝から。

 まだ10時だぞ。

「ここで修復屋をしていると伺って来たのですが」

 昨日ギルドに貼っておいたビラをもう見たのか。

 俺は首だけ馬車から出して応対する。

 魔術師の様な格好のおじいさんだ。

「お客さんですか?」

「この壺を修復して頂けるのでしたら」

 おじいさんは風呂敷を広げた。

 鮮やかな色で剣を掲げる英雄が描かれた蓋付きの壺。クビレの部分には麻を編み込んだ紐が巻かれている。

 ………………これ、絶対高いよな。

 腐ったような鼻をつく激臭と、ひび割れから溢れ出る真っ黒なオーラを無視すれば高値で取引されるだろう。

「このひび割れを直せばいいのですか?」

「えぇ、報酬は百万パルお出ししましょう」

「ひゃ、ひゃくまんえん?」

 確かにビラには『壊れたもの、どんな物でも直します。価格は時価』と書いた。

 しかし、こんなハエがたかっているクセぇ壺に百万パルとは、怪しいな。

 俺は昔から壺関係は全部詐欺と教わってきた。

 五十万円の開運の壺を売っていた本人が言っていたのだ、間違いない。

「これ何の壺ですか?」

 邪神とか封印してないよな。

 おじいさんのローブの背に『I♡邪神』とか書いてあるし。

「あなたにそれを知る覚悟がありますか?」

 えっ、まじなの?

 邪神封印してるの?

 これでも俺は元・勇者だ。

 邪神の恐ろしさも教わってるし、それなりの正義感も持っているつもりだ。

 おじいさんが邪神の壺|(仮)をどうするか知らないが一応聞くべきだろう。

「あのぅ…………邪神、お好きなんですか?」

「勿論!」

 うはっ、いい笑顔。

 サムズアップしてるし。

「もしかして、あなたも?」

「えっと……あの……俺は」

 邪神。ダメ、ぜったい。

 この人の為にも世界の為にもきっぱり言っておくべきだ。




「邪神。だ、ダ…………だーい好き!!」

 俺には無理でした。




「いやぁー、意外な所に邪神仲間がいるものですな」

 ギルドで貰った大樽と小樽を机と椅子にして即席の応接セットを作った。

 座り心地は最悪だ。

 しかし俺の向かい側に座ったおじいさんは嬉しそうに言った。

 話を聞いたところ、彼はこの国の邪神研究の第一人者で名前はスワンズと言う。

 怪しんですみません。

 俺、邪神復活を企んでると勘違いしてました。

 ちなみに持ってきた壺は家宝だそうだ。

 一度盗難に遭ってから警戒してあんなことを言ったそうだ。まったく、紛らわしい。


「それにしても邪神は奥が深いですね」

 スワンズさんは邪神について色々教えてくれた。

 邪神は神が地上に堕ちた時に使う呼称で、全てが悪い奴とは限らないとかだ。特に人間と恋に落ちた邪神の物語は面白かった。

「おっともうこんな時間です」

 気付けば二時間も話してしまった。

「十二時位ですね、そろそろ壺の修復を始めましょうか」

「よろしくおねがいします」


 今回は五センチ程のひび割れだ。

 馬車の時ほど血液は要らない。

 左手の人差し指の先を切り、樽の上に術式を書く。

 前回と同じく円形だ。

 俺はこれを『魔術陣』と呼ぶことにした。

 俺しか使う人いないし勝手に決めても問題ないと思う。


「 術式展開、魔力属性『無』、行使魔術『修復』」


 魔術陣が輝く。


「我、世界の理を破壊する 」


 やった、成功した。

 でもなんだ、この違和感は…………

 今、ハエがバックした様な気が…………


「素晴らしいです。悠太さん、ありがとうございます」

 ともあれ喜んで貰えてなによりだ。

「これで孫に私が漬けた漬物を食べさせてあげられます」

「これ中身漬物だったの?」

「ええ、自信作です」

 お孫さん、ショック死するかもしれないな。

 流石に臭いで分かるだろうけど。

「それでは孫の所にいってきます」

「また来て下さいね」

 ルワンズさんは風呂敷に包み直して帰って行った。

 コミカルなスキップをしていた。




 お金は当初の予定通り十万パルしか受け取らなかった。

 やっぱり、ぼったくりは良くないからな。

家宝de漬物

これが言いたかっただけです。


次話は明後日になりそうです。

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