6話
本日二回目です。
この世界の薬は効果が高いものが多い。
特に『薬師』が作ったものはポーションと呼ばれ高値で取引されている。
「ポーション使って良かったんですか?」
俺も使ったが直ぐに傷が塞がった。
「大丈夫ですよ。経費で落とせますから」
俺の左腕には包帯が巻き付けてある。
まるで厨二病患者だな。
一刻も早く外したい。
「ところで、悠太さんはこの馬車をどこにどうやって運ぶつもりですか?」
「馬は持ってないし、どうしようかな」
俺が押したところで動くはずがない。
馬を買うにも俺は無一文だ。
難儀なもんだな。
「冒険者ギルドに依頼を出してはいかがですか」
「そんな事できますかね?第一、俺は金持ってないですよ」
「お金は私が立て替えておきます。あそこの低ランク冒険者は街で雑用依頼をしていますから、直ぐに駆け付けて来ますよ」
低ランカーは大変らしい。
安い賃金で働いて武器を買う金を貯めているとか。
「店はどこに出そうか」
待ってましたと鞄を漁りだす。
「そんな悠太さんに朗報です。営業ですがいい場所がありますよ」
そう言ってネイシャさんはチラシを見せてきた。
空き地、貸します。
毎月二万パルで貸出。
一般居住区画に近く、毎朝人通りが多く商売に最適
また、近くに水路あり。
購入の方は要相談。
商人ギルド。
「ちゃっかりしてますね」
「私も商人の端くれですから」
ネイシャさんは小さく笑って、
「料金は月末でいいですよ」
「じゃあそこにします」
そこまで言われたら借りるしかないだろう。
用紙にサインをする。
「契約成立です」
嬉しそうに紙をしまい込んでから、ネイシャさんは冒険者への依頼用紙を作る。
「日が暮れるまでには冒険者が来ると思います」
そして後ろに控えていた子供に依頼書を渡した。
小柄な体型で黒の上下セットの服を着ている。
それに顔も整っている。
「この子は?」
「ギルド所属の『運び屋』の子です。とっても足が速いんですよ」
そんな仕事もあるのか。
俺の依頼を運んでもらうのだ、労っておくべきだろう。
「頼むぞ坊主」
「むぅ。ボクは女だよ。Eランクの底辺商人さん」
女の子だったのか。
それにしても、なんだこのクソガキ………………
人間はこんなに小憎らしい顔ができるものなのか。
「お前だって大したことないだろ」
ランクも胸もな。
そんなんだから男と間違えてしまったんだ。
「悠太さん、この子はBランクですよ」
ネイシャさんがこっそり教えてくれる。
「こいつがBランク!?」
「そうだよ。Eランクの底辺商人さん」
うわー凄いドヤ顔。
全く、そんなんだから胸が育たないんだ。
「今ボクの胸に欲情したね。Eランクの底辺商人さん」
「してねぇよ」
ずいずいと詰め寄ってくる運び屋。
顔が近い。
「そろそろ行ってきたら?サラノ」
ネイシャさんがガキの背を押して俺から引き離なしてくれた。
サラノと言うのかこのクソガキ。
「うん、行ってきます。お姉ちゃん」
オネイチャン? どういう事?
サラノはネイシャさんに対して言った。
つまりガキは、
「この子は私の妹なんです」
マジか…………
姉妹でここまで違うものなのか。
似ているのは胸だけだな。
「……………………また、変なこと考えませんでしたか」
「底辺商人さん、お姉ちゃんの胸見てた」
俺を指差しニヤつくサラノ。
嫌われてるな、俺。
もしかしてこいつ……
「なぁお前、男と間違ったこと根に持ってるのか?」
こくり。
「それは悪かったな」
男の子と間違えられる事はサラノにとってデリケートな問題だったのかも知れない。
「お前は元がいいんだ。ちゃんと女の娘らしい格好したら可愛いはずだ」
だからしっかりとフォローを入れておく。
でも、嘘は言っていない。
俺マジ紳士。
すると、サラノはあたふたと手を動かし、俺と姉の顔を交互に見やって、
「えっと、あの、その、いっ、行ってきます!!」
予想していた反応と違ったけどまあいいか。
俺は出口に走っていくサラノを見送った。
「私も仕事に戻りますね。悠太さんは馬車の前で冒険者さんを待っていてください」
ネイシャさんは依頼賃を俺に渡してくれた。
「今度ご飯でも奢って下さいね」
「分かりました」
「では、またのお越しをお待ちしております」
受付に戻った途端に表情が変わる。
少しキリッとしている。
「また来ますよ」
俺は受付を後にして馬車に向かった。
ネイシャさんの様ないい人に出会えて本当に良かった。
異世界も捨てたもんじゃないな。
貧乳は希少価値です。
みなさん大切にしましょう。
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