2話
作者の勝手な都合で、話を大幅に変更しました。
前回上げていた分の1話を見た方はお手数ですがもう一度読み直しください。
変更点などは1話の前書きにまとめています。
俺は今、長い廊下を引きずられていた。
二人の騎士に両手を掴まれてズルズルと。
我ながら情けない限りだ。
それにしてもこの二人は力が強いな。七十キロくらいの俺を早歩きで運んでいる。
これが『騎士』か………戦ったら一瞬で殺られるだろうな。
そんな俺を意識してか、右の騎士が左の騎士に話しかける。
「なぁ、こいつどこに捨てようか」
「国王様にはつまみ出せと言われただけだからな」
「そこら辺に捨てるのは良くないだろうしな」
「殺るか?」
「それは流石に良くないだろ」
「冗談だよ」
高らかに笑う騎士達。
突然右の騎士が閃いたという顔をする。
「いや、いっその事俺らでヤッてしまおうぜ」
おいっ、今の会話からなぜこの選択肢が出てくる。
俺は左の騎士に助けを求めて見上げる。
吟味するように俺を見つめている左の騎士。もしかしてこいつら……
「良いなそれ。イケメンだし」
やっぱりホモか、まぁ薄々気づいてたけどね。
左右ともホモ顔だし。
それに日頃から姉ちゃんにも言われていた。
「悠太はかっこいいけど、ホモに好かれる系なんだよね」
これは本当だったのか。自分では黒髪長身系のスタイリッシュ男だと思ってたのに。
「じゃあ宿に行こうぜ」
「おう!」
マズイな……俺の貞操の危機だ。
何とかして逃げないとヤられる。
しかし俺の力ではこいつらの拘束は破れない。
今の気分は暴漢に襲われる街娘だ。
目からは涙が滲んでくる。
涙が頬を伝い床に落ちた瞬間。
「おやめなさいッ!!」
俺の目の前に女神が降臨なされた。
○
「いやーマジで助かったよ」
「気にしなくていいですよ、ユータさん」
俺は庭園の椅子に腰掛ける。
俺を助けてくれたのはこの国の王女のミスティオ。俺より四つ年下で、可愛らしい容姿をしている。
また『召喚術師』でもあり俺達を召喚したのもミスティオだ。
彼女には召喚されてからかなり世話になっている。
「この国の事情に勝手に巻き込んだだけでなく、この様な仕打ち、本当にごめんなさい」
そしてこの健気で真面目な性格。
しかもただ真面目なだけでなくその言葉には彼女本来の優しさがこもっているのが分かる。
正しく女神だ。
抱きしめたくなる。
あのジジイの娘だとは思えない。
「ミスティオはどうして俺のとこに?」
流石に俺の心の叫びが通じたとは思えない。
それに彼女が持っている大きな包みも気になるところだ。
「ユータさんは城から追い出されたのでしょう?」
「残念なことにね」
「私も父様に掛け合ったのですが話を聞いて貰えませんでした」
ミスティオにとって父の言うことは絶対だとこの前に話していたのを思い出す。
「だからせめて何か役に立つ物でもと思って」
そう言っておずおずと包みを差し出してくる。
「数日分の食べ物と生活用品が入ってます」
ミスティオの優しさが身に染みる。
おっと危ない、また泣きそうになってしまった。
ここで泣いたら十三歳の女の子に情けをかけられて嬉し涙を流す男の完成だ。
それは流石に情けなさ過ぎるので上を向いて涙を堪える。
「あの……余計なお世話でしたか?」
「いや、助かったよ」
空を見上げながらミスティオの頭をぽんぽんと撫でる。
これもすっかりと癖になってしまったな。
少し犯罪臭がするが彼女も嫌がる素振りを見せないので大丈夫なはずだ。
「それと他の勇者様方にはどの様にお伝えすれば良いでしょうか?」
あいつらか…………
「確か今、騎士団長達と遠征に行っているんだよな」
騎士団長のゲイブ。俺の苦手なタイプの男だ。
名前からしてお近付きになりたくない。
「はい、後一週間後には帰って来るとおもいます」
「じゃあ自分から出て行ったと伝えてくれ」
最後くらいカッコつけても罰は当たらないはずだ。
「分かりました。もうこんな時間です、そろそろ皆が私を探しに来るでしょう」
確かに城の中が騒がしいな。
「俺のために抜け出してくれたのか」
「えっとその……はい」
「お前は優しいな」
城の門からこちらに走ってくる騎士が見えた。
そろそろ行かないとまずいだろう。
「行かれるのですか?」
「あぁ、今までありがとう」
ミスティオは泣きそうになっている。
「また、会えますよね」
「当たり前だ」
もちろん俺も涙腺が崩壊寸前だ。
「じゃあ今はいってらっしゃいですね」
「そうだな」
俺はミスティオに背を向けて歩き出す。
「いってきます」
そうして俺は城下街に繰り出した。
世界観の説明などは小出しにしていくつもりです。