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19話

読みやすいように行間開けてみたのですがいかがでしょう。

こっちの方が良かったら前の話も書き直します。

 むっくりと白い頬を膨らませて目の前に座っている宮護八千代は指をちっちっと横に振る。


「ゆーちゃん、まず初めに僕に言うことがあるんじゃない?」



 簡単に言うと久しぶりに会った俺の幼なじみは怒っていた。

 顔を赤くして両手を上げて全身で怒りを表現している。


「いや、あれだろ八千代?突然来て悪かったな」

「そうじゃないよ!!どうして僕に何も言わずに王城(ここ)を出ていったのさ?」

「そのことか、あれは仕方なかったんだ」

「じゃあ、書き置きくらいしててよ!!」

「それじゃカッコつかないだろ?」


 すると八千代は頭痛の時のようにこめかみに手を当てて続ける。


「あぁー、やっぱり、ミスティの言う通りだった。そんなのかっこいいわけないじゃん、ゆーちゃんのあほ」


 ミスティ──ミスティオのことか。

 話しちゃったんだな、あいつ。

 八千代が質問攻めにしてあわあわ言っているミスティオが頭に浮かぶ。


「んー。すまんかったな」

「軽っ、軽いよ。ほんとに心配したんだから」

 八千代は手をグーにしてぶんぶんと上下に振る。

「まぁまぁ、落ち着け」


 俺は紅茶を勧める。これも八千代が出してくれたものだが。

 香り高くすっきりとした味わいのそれはさすがは王宮の備品だと感じさせる。


 八千代は紅茶をこくりと飲んで、


「うん。ちょっと焦りすぎたね。この事は今度ゆっくりと聞くよ。で、今日はなんで僕のところに来たの?ゆーちゃんが城門にいた時はびっくりしたよ」


 城に入る方法が無くて城門でこそこそしていた時に偶然八千代が通りかかり、バレないように八千代の部屋に入れて貰った。

 俺はクッションの上で足を組み替えながら話す。


「ほら、お前強いだろ。だから戦い方教えて貰おっかなて……」

「戦い方?ゆーちゃん戦うの、あれだけイヤイヤしてたのに」


 スーパーマーケットでお菓子をねだる子供よろしく、ひっくり返って「やだやだやだ」をしたのは秘密だ。


「こほん……ほら、あれだ。心境の変化だ。急にバトルに目覚めてな」

「ほんとー?まあいいけど、僕にできることなら手伝うよ」

「ありがとう。さすがは『雷纏う猛獣の槍(ゲイボルガ)』さんだな」

「そのあだ名恥ずかしんだよね」

「あははっ。厨二丸出しだからな、それ」


 二つ名やあだ名は大体の場合王宮専属の詩人が決める。

 そのセンスが厨二病的で、聞いてるこっちが恥ずかしくなるような物が多い。


「よし、じゃあ、外の演習場で練習しよっか」


 八千代はぱん、と手を合わせて提案する。


「いや、俺は状況上王族に見られるのがまずいんだが」


 正直、今ここに居座っているのもかなり危うい。

 なにしろ敵の本拠地だからな。


「んー。そしたら、街の外はどうかな?」

「街の外?嫌だよ。危ないだろ」


 街の外には魔物と呼ばれる危険極まりない生き物が住み着いている。


「もしかして魔物の心配してる?」

「当たり前だ」

「ここら辺はゴブリンとスライムしか出ないから大丈夫だよ。それに本当に危ない奴が出てきたら僕が殺るから」

「スライムは酸吐いたりしないよな」

「少しだけ吐く種類もいるみたい」

「うえっ。俺はまだ骸骨にはなりたくない」

「あはは、そこまで強くないよ。せいぜい服を溶かすくらいだね」


 同人誌とかでよくあるスライムでべとべとぬめぬめのやつか。

 大体最後は百合展開になるんだよな、あれ。


「あ、ゆーちゃん今えっちなこと考えたでしょ」


 なぜ、分かった。

 もしやこいつは超能力者かそれっぽい何かか。


「そんなの幼なじみだからに決まってるじゃん。ゆーちゃんとは幼稚園からの仲だからね、そりゃ分かるよ」

「まぁ、そうだな。服溶かされないように気をつけろよ」

「もし僕が洋服溶かされても……ゆーちゃんなら見ても……いいよ?」


 俺はぽんと軽く八千代の頭をはたく。


「ばーか。お前はその見てくれなんだから、もし勘違いした奴がいたらどうするんだ」


 最後に俺は無いが、と付け加える。


 八千代の容姿は昔なじみの俺から見ても整っている。

 短めのボブカットにしてある少し癖っ毛の髪からは常にいい匂いがするし、童顔で小柄な体型はぎゅっと抱きしめたくなるだろう。

 そして、誰にも分け隔て無くフランクな性格は同性から人気があった。


「むぅ。それなら今日はゆーちゃんの家でお泊まり会したいな」


 なんにも改善されてないが、お泊まり会は日本でもよくしていた。

 それに今日の俺は教えてもらう側だから八千代の希望を聞くことにする。


「一回だけな。あと、俺は明日忙しいから早めに寝かせて貰う」

「うんうん。全然いいよ」

「それと今は事情があって家には帰れないから、冒険者ギルドの区画の鍵付きで防音で安全な宿に泊まろう」

「えっ?」


 馬車では防犯面に不安がある。

 暗殺とかされたらたまったもんじゃない。

 それと、ロアと鉢合わせにならないようにしなといけない。

 やっと驚いてフリーズしていた八千代が復帰した。


「宿っ?それって……ホテルなんじゃ……」

「嫌か?」

「いやいやいや、そんなこと全くないよ!それにしてもホテルか……ゆーちゃんと行くのは修学旅行以来だね。楽しみだなぁ」

「さっきも言ったけど、俺は忙しいからトランプもリバーシもできない」


 決闘前にのほほんと七並べするほどの余裕はない。

 でもトランプという言葉に目を輝かせた幼なじみは俺の手を引いて、


「それじゃあパパッと戦い方勉強して、宿に行こう!!」

「きゅ、急に引っ張るなって。巻物(スクロール)持ってかないと」

「こんなの僕が持つから、ほらっ!行くよ、レッツゴー」


 重いはずの巻物(スクロール)を現役勇者の腕力でひょいひょいと担いだ八千代は、とてつもなく頼もしかった。


「お前は頼もしいな。物理的に」

「精神的って言ってよ!!」


 こうして俺の半日限りの戦闘訓練が始まった。

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