13話
「ほら、焼きそば二つだ」
「いただきます」
「……………ありがと」
ルーコスの親父さんが焼きそばを渡してくれた。
軽い陶器の皿に二人分が盛られているので、ボリュームが凄い。ふんわりと上にまぶされた鰹節が踊り、香ばしいソースが鼻をつく。
皿の端には木製のフォークが二本添えられてある。
この国の食文化は日本と似通っている点が多い。
昔の召喚された勇者が伝えたそうだ。
勇者グッジョブ。
しかし、文化が似ていると言ってもこちらの人は食事の時はスプーンとフォークを使う。
焼きそばにフォークなんて有り得ない。
俺は箸を使いたいのでマイ箸を持ってきていた。
これは城にいた時から使っていたもので俺の手作りだ。
片一方がやたらと鋭く尖っているが、愛着があるのでいつも常備している。
「あそこに座って食べよう」
俺は屋台から少し歩いた所にあるベンチを指さす。
ベンチは緑の葉を茂らせている木の下にあり、差し込む春の木漏れ日が気持ち良さそうだ。
ここは噴水を中心とした造りになっていて、噴水から離れている俺の位置からだと広場を見渡すことが出来た。
「ここには色んな人がいるな」
昼食を取る人や、談笑をしている人、音楽を奏でている人、それを聴く人。
それぞれが自分の好きなことをしている。
忙しい日本とは違う、のんびりとした雰囲気がこの広場にはある。
「うーん、平和だなー」
腕を組んで感心していた俺の裾をロアがちょんちょんと引っ張る。
「……ゆーた………やきそば」
「おっと、忘れかけてた。急がないと冷えちまうな」
俺は空いている片手でロアが座る部分を払う。
「座っていいぞ」
ロアはいつも通りこくりと頷いて腰掛けた。
俺もその隣に座る。
「それじゃぁ、いただきます」
「…………いただきます」
この国にはいただきますを言う文化は無いのだがロアは最近俺のまねをしていただきますをするようになった。
「美味いな、これ」
細麺にソースが絡まってしっかりとした味だ。
本当は紅生姜があればよかったんだけど、贅沢は言うのはよくない。
隣ではむはむと焼きそばを食べているロアを見ていると何倍にも美味しく感じる。
ロアはじっと見つめる俺の視線に気付いたようだ。
「………………なあに?」
「いいや、何でもないよ」
「………………そう」
ロアはそう切り上げて焼きそばをまた食べだした。
数分後俺達は焼きそばを食べ終わった。
ロアが半人前位で俺が残りを食べた。
空になった皿の底には『ルーコスの焼きそば』と書いてある。
店の名前か…………
そう言えばうちの店には名前が無いな。
炊き飯屋も『炊き飯バンザイ』と言う名前があったし。
考えた方がいいだろう。
「うちの店って名前ないだろ?なんかいい名前ないかな?」
「………………わからない」
「そう……だよな。何か思いついたら言ってくれ」
「………………うん」
俺はロアが店舗名を決めてくれたら絶対その名前にすると決意した。




