10話
間に合いました。
今回は少しいつもと違います。
食事処『炊き飯バンザイ』は今日も賑わっています。
「店長ー!肉増しと山菜入りましたー!」
「あいよ!みぃちゃん、二番テーブルに酒追加だ」
「はーい!」
みぃちゃんこと私、ミィハは出稼ぎに来ています。
「お酒追加でーす」
「ありがとよ」
「おーい、みぃちゃん!こっちには肉増しもうひと皿貰えるかい?」
「お肉たっぷり炊き飯でよろしいですか?」
「おうよ!」
ここの人は皆いい人達ばかりです。
獣人の私が受け入れて貰えるなんて夢みたい。
里の兄弟にも教えてあげたいな…………今度、手紙を出そっと。
都会は素敵な所ですって。
カランコロンと来客を知らせる鐘がなりました。
足音からして二人のようです。
「いらっしゃいませー!」
私はいつものように席に案内する為に、お客さんの傍に向かいます。
「何名様でしょうか?」
知っているけどこれは必須です。
「大人一人に、子供一人で」
「……………………」
はわわー、何なんですか、この人たち。
背の高いイケメンさんと無表情で細っぽっちの女の子です。
ここまでは普通のお客さんです。
でも、この人達は普通じゃありません。
おかしいです。
――なんで、イケメンさん服着てないですかぁ。
いや、正確には茶色い革のベストだけ着ています。
裸の上に。
これが里で聞いた都会の変態ですか。
初めて見ました。
「席はあそこでいいかな?」
「はっ!すみませんボーッとしちゃって」
私のした事がびっくりして固まってしまったようです。
「それでは、ご案内しますね」
席が分かっていても案内する。これもここのルールです。
私はへんた……イケメンさんにお品書きを渡します。
「………………メニューになります」
「ありがとう」
「………………あのぅ、お子さん、付いてきてないんですけどぉ」
「まだ拗ねてるのか。ロアー、こっちおいでー」
「………………………………」(ぷいっ)
あっ、そっぽ向いた。
お客さん無視されていますね。
俯いてしょぼくれちゃいました。
「私がお連れします」
入口の前にずっと立たれても困るので私はロアと呼ばれた女の子を抱えます。
――軽っ!?
ロアちゃんはとても軽いです。
食事を十分に取ってないのでしょうか?
飢えはとても辛い。私も里で体験したので分かります。
だから、おいしいご飯をお腹いっぱい食べて欲しいです。
「注文いいかな」
「お伺いします」
「お肉たっぷり炊き飯二人前。この子には取り皿を下さい」
「はいっ!」
もしかしたらイケメンさんがロアちゃんを虐めているかと思いましたが違ったようですね。
肩口の凄い痣を見た時はびっくりしました。
でも、安心です。
取り皿の事まで考えている人がそんなことする訳ありません。
「店長ー!肉増し二つ入りました!!」
「みぃちゃん、五番テーブルに肉増し配膳してくれ」
「はーい!」
五番テーブル、イケメンさんの所ですね。
私は肉増しを受け取りフロアに出ます。
「お肉たっぷり炊き飯二人前お待たせしました。取り皿はこちらに」
「おおっ、待ってました!」
イケメンさんは紙を折って鳥?を作っていました。
とってもよく出来ています。
イケメンさんはこれを使って「ロア~ほら、鶴だぞ~笑ってくれ~」とか言っていました。
ロアちゃんは相変わらずの仏頂面でしたけど。
「それじゃ、いただきます」
手を合わせてこう言います。何か意味があるんでしょうか?
「ロアも熱いうちに食べろよ」
取り皿にロアちゃんの分を小分けにしてあげてから、イケメンさんは自分の炊き飯に集中してしまいました。
ロアちゃんはゆっくりとした動きでご飯を口に運びます。
その口元は少し上がってます。
これは笑っているのでしょうか?
「…………………………」
机の下のロアちゃんの足は交互にぶらぶら。
………………相変わらずの無表情ですが、これ、絶対喜んでますよね。
――イケメンさーん、気付いて下さーい。ロアちゃん喜んでますよー。
イケメンさんは一心不乱に炊き飯を食べてます。
気付きそうにないですね。
しかし、何だか私が教えるのも筋違いのような気がします。
この問題は二人だけで解決した方が良いでしょう。
「ごちそうさまでした」
ロアちゃんの手を引いてイケメンさんが帰って行きます。
これなら二人の問題もすぐ解決ですね!
「みぃちゃん、今日はもうお店閉めるから」
「少し早く無いですか?」
「今日はもうお客さん来ないだろう。明日は遠征に行っていた勇者様方が帰って来るから、皆早く寝るだろうからね」
「勇者様ですか。一度は会ってみたいです」
多分、かっこいい人でしょう。
憧れます。
カランコロン。
入店を知らせる鐘がなりました。
もうっ、お客さん来たじゃないですか。
厨房は既に掃除をしています。
お客さんには悪いですがお引き取りねがいましょう。
「申し訳ありません。本日の営業は終了しました」
「いや、そうではない。探し人をしてしてな」
相手は鎧を着た騎士さんでした。
「探し人……ですか?」
「あぁ、レゴール様の命令でな。十歳前半の黒髪の女で、無表情で身体中に痣があるそうだ」
それ絶対ロアちゃんの事ですよね。
「無表情とか痣の情報は匿っていた疑いのある奴隷商を尋問して得た情報なので怪しいがな」
騎士さんはそう付け足します。
「お前はこんな奴知らないか?」
「いいえ、ぜっんぜん知りません、はい」
「そうか、見つけ次第騎士団に報告しろ」
そう言って騎士さんは帰っていきました。
咄嗟に嘘ついちゃったけど良かったのかな?
大丈夫ですよね、うん、大丈夫です。
そんな事より、この事件は嫌な感じがします。
私達獣人は第六感の様なものが生まれつき強いのです。
だから、気を付けて下さいね、イケメンさん。




