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9話

本日二回目になります。


「………………どうしたもんか」

 小樽に座ってぼっーと宙を眺める少女。

 俺の悩みの種。

 ロアちゃん。御年十三歳。

 保護者が分からなくて、依頼である以上、一ヶ月は俺が面倒を見る必要がある。

 依頼主からの手紙には『壊れている』とあった。

 それは身体的な事もあるが、おそらくは精神的な事を依頼主は言っているのだろう。

 ロアの精神は崩壊している。

 年端も行かないこの少女が絶望に至る様な出来事があったのか………………

 俺の『修復』は人には使えないが、ロアには生きる目的を持たせてやりたい。


『可愛い子には優しく』これが俺の信条だから。





「よし、ロア」

 怯えさせないように目線を下げて話しかける。

「今日はもう遅いから俺の家に帰ろう」

 俺のマイホーム。

 すぐ後ろの幌馬車を指差す。

 時刻は五時。もう晩飯を食ってもいい時間だ。

「ロアは何か食べたい物ある?」

「……………………………………」

 うーん、反応無しか。

「じゃあ、何かしたい事ある?」

「………………………………………」

 少し瞳が揺れた。

 したい事があるのだろうか?

「何かな?」

「…………………………」

 言わないか。

 でもここで引いたらいけない気がする。

「怒らないから言ってごらん?」

「………………………………おふろ」

 ロアは小さく呟いた。

 それはほんの小さな呟きだったがこれは大きな進歩だ。

 コミュニケーションの成立。

 その事がとても嬉しい。

「風呂かー。どうしようかな」

 当然の事ながら馬車に風呂は積んでない。

 ちなみに俺は風呂の変わりに手前の川で体を洗っている。

「今日は水浴びで我慢してくれるか?明日銭湯に連れて行ってやるから」

「……………………………」(こくり)

 やった。

 頷いてくれた。

「俺はタオル取ってくるからそこで待っててくれ」

「…………………………はい」



 俺は小走りで馬車に戻る。

 お風呂か…………やっぱり女の子だな。

 ロアの身体は泥や血で汚れていた。

 本当は石鹸が欲しい所だが、あれは高級品だ。

 とてもじゃないけど買えない。

 馬車の中に代用品が無いかな…………


 俺の馬車の中は二畳程の大きさがある。

 一畳半は昨日買った布団セットが占領。

 半畳は極小テーブルと食料が置いてある。

 相変わらず汚ねぇな。

 テーブルには依頼で預かった品物が、布団の上には蜜柑の皮が転がっている…………みかん?

 確か蜜柑の皮は汚れを落すとか言っていたな。

 昔テレビで観た。

 蜜柑の皮の汁が汚れを分解するとか何とか。

 よし、これを石鹸替わりにしよう。

 汚れも綺麗になるし、柑橘系の香り付きだ。

 一石二鳥。

 我ながら名案だと思う。





「…………いたい」

 結果から言おう。

 蜜柑の皮作戦は失敗に終わった。

 ロアの身体を蜜柑の皮(これ)で洗ってやったのだが、傷口に染みるという。

 この作戦考えた奴誰だ。

 普通に考えたら蜜柑の汁が染みる事くらい容易に考えつくだろうに。

 よほど頭が悪いんだな。

 まぁ、俺だけど。

「…………ばか」

 ロアはご立腹だ。

 抑揚の無い声には感情は篭っていないが、雰囲気で不機嫌なのがわかる。

「ごめんな。痛かったろ?」

「……………………」(こくり)

 俺はロアの身体を拭きながら謝る。

 しかし、この子は泣かないな。

 汁をつけた時にも痛いとは言ったが泣かなかった。

 目に蜜柑汁が入ったのと同じようなものだ。

 俺なら泣きながらのたうち回ると思う。



 新たな問題が発生した。

「替えの服は…………持ってないよな」

 着替えが無い。

 元々着てきたワンピースもどきは俺が洗ってしまった。

 俺も替えの服は一着しか無い。

 それも洗濯中だ。

「これはまずいぞ…………」

 川で痣だらけの全裸の幼女を洗ってる男…………

 騎士団が飛んできそうな光景だな。

「……………………さむい」

 ですよねー。

 もう六時ですもん。

 まだ春先だ、夜は冷え込む。

「取り敢えずこれを着て」

 俺はランクバッチ付きのベストをロアに着せる。

 全裸にベスト。

 いかん、余計に犯罪臭くなってしまった。

 だがこれはこれで…………

「…………………………へんたい」

 やばい、ロアに嫌われたかも知れない。

 何か解決策は…………

「そうだ!俺と着ているものを交換しよう」

 ロアは小首を傾げている。

 しかたがないから説明してあげる。

「まずそのベストを俺にくれ。そして俺がいている長袖をロアにやる。おーけー?理解出来たな?」

 ベストを脱いでいるところを見るに理解出来たようだ。

 俺も長袖を脱いでロアに着せてやる。

 俺ベストを受け取り腕を通した。

「これで完璧だ」

 長袖の女の子とベストの男。俺は男だから全裸ベストでも問題ないだろう。

 これは健全極まりないな。


 逮捕の心配が無くなると急に腹が減ってきた。

「飯を食べに行くか」

 一昨日見つけたうまい炊き飯屋がある。

 あそこの店のお肉たっぷり炊き飯を食ったらロアも元気になる筈だ。

 もしかしたら機嫌も直してくれるかもしれない。


 俺はロアの手を引いて夕焼けの映える街に繰り出した。

日常パートが続きます。


明日は更新お休みです。

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