四話 守り石
新年明けましておめでとうございます。
「石?」
「此方は金剛石の原石になります。所で、ショーン様守り石は今お持ちでしょうか?」
「まもり石?これのこと?」
そう言って差し出したのは首から下げている袋から丸い三センチ程の晴天色の石を取り出した。
「そうです。私達人間は産まれた際我々教会の祭司からの占いと瞳の色から一人一人の宝石が手渡されます。この石は守り石となり持ち主自身の分身として将来の結婚相手や大事な仲間などにジュエリーなどに加工され渡されたり致しますが、水晶や月長石の様に無色透明の石は通常一般には守り石としては出回りません。それはこの世に無色透明の瞳を持つ人間が居ないからです。ここまでは解りますか?」
「はい」
「しかしこの無色透明の石は一部一位神官又は一位巫女が神より啓示を受けた者に与えることも有ります。最近ではショーン様の従兄であるライアン殿下が与えられています」
「らいあんでんか?」
「ええ。そしてショーン様。あなた様には今お渡し致しました石を」
「こんごうせき…」
「の原石でございます。通常であらば丸くカットして持ち主へ渡しますが此方は原石のままでお持ちになってもらいます」
「なぜ?」
「それはあなた様が大人になった時に役に立つものです。ですから今はその守り袋に一緒に入れて肌見放さず持っていてくださいませ。そしてこの石は誰にも見せてはいけません」
「どうして?らいあんでんかももっているんでしよ?」
「そうです。代わりに此方の方解石を必ず見せてくださいね」
「ショーン。一位様の言う事を必ず守るんだぞ?」
(…どうしてだれにもみせちゃだめなんだろう?なぜ?どうして?)
「ショーン。今は難しく考えなくても良いんだ。一位様が言った約束だけを覚えておくんだ」
「石はだれにもみせちゃだめなこととそのかわりにこっちの石をみせればいいの?」
「そうです。約束出来ますか?」
「わかりました」
「有り難う御座います。さて、話は代わりますがリアン様。貴方様に至急国王様へ渡して頂きたい書状が出来たのですがこの後のご予定は?」
「予定ですか?そうですね。後1日は居る予定でしたが其ほど緊急の案件ですか?」
「はい。此方の書状ですが御願い出来ますでしょうか?」
「一位様が、それも国王への急ぎの書状とあれば仕方が無いですね。引き受けましょう」
「すみません」
「えぇ~!?とうさま!きのうきたばかりだしもっといたいよ!」
「おやっ?その昨日は帰りたいと言っていたのは誰かな?」
「うっ…だって…」
「これも私の仕事なんだ。諦めなさい。其では一位様此にて失礼致します」
「頼みましたよ」
バタン
「あれで宜しかったのですか?」
暫く彼等が出ていった扉を見つめていた一位巫女はそう言うと後ろの窓辺の分厚いカーテンの先へ声を掛けた。
??「…昨晩付近の森で《バンジー》が現れました。此処が襲われるのも時間の問題でしょう。恐らく今夜には彼等が現れるかと…。貴女も今ならまだ間に合います。彼等に頼めば…」
「いいえ。私も一緒に最期まで貴女様と一緒におります。どちらにしろこの命はもういくばくも余せん。先が少しだけ短くなっただけですわ」
??「…ありがとう…」
「グレース。またすぐにあえる?」
「直ぐには無理ですね。私は今回一位様の付き添いとして此方に赴いて下りますので。しかし一位様の体調が良くなり次第王都へ戻りますのでその時はライアン殿下と一緒にいらしゃって下さいね」
「でんかと?いや!!ぼくひとりであいにいく!それから、あのね…」
「何ですか?」
「グレース。ぼくのおよめさんになってくれる?」
「それは無理ですね」
ガーン…そのからぼくはグレースがなにかいっていたけどショックのままとうさまにばしゃにのせられてきょうかいにサヨナラをした。
あれから王都でへ急ぎ引き返し其のまま父のリアンが王と謁見している間ショーンは第一王子のライアンに会い彼に落ち込んでいる理由を聞かれ、グレースとのやり取りを話すと彼は、
「ぎゃはははは…ば、馬鹿だなお前。巫女は結婚出来ないんだぞ」
「わらうな!ぼくはほんきだったんだぞ!」
「悪い悪い。はは…しかしお前も彼女に惚れたのか。ライバル出現だな」
「…でんか。さっきみことはけっこんできないっていったじゃないか。ライバルにもならないよ…」
すると彼はニヤッと笑うと、
「確かに巫女は普通結婚出来ない。しかし還俗すれば違うんだ」
「げんぞくってなに?」
「還俗って云うのはな巫女や神官を辞めて普通の仕事や結婚が出来る様になるんだぞ」
「えっ!?じゃあグレースもげんぞくすればけっこんできるの?」
「その通り。でも僕が彼女と結婚するけどね」
「そんなのわからないよ!ぼくもまけない!」
「じゃあどちらが先に彼女に結婚してもらえるか競争だな」
「うん!」
「そう云えばお前一位様に会ったと言ってたがもしかしてもう一つの守り石を貰ったのか?見せてみろよ」
「えっ?…これだよ…」
「方解石か…僕のより劣るな…。僕なんか神官の一位様から頂きたいた石は雷水晶を貰ったんだ。この石は天から雷が落ちて出来ただけあって雷の精霊が宿っているんだぞ。格好いいだろ!」
「ぼくだって「ショーン!」…とうさま!おはなしはおわったの?」
「…ああ…ショーン。至急お前を屋敷に送っていくぞ。その後父様はまた王宮へ戻る」
「とうさま?こわいおかおをしてどうしたの?」
「何でもない。申し訳ございませんが殿下、急ぎの為此にて失礼致します」
そう言うとリアンはショーンを連れて城を後にした。
(…とうさまどうしたの?)
書状を読んだ後の王の様子が明かに変化した…。あの時深く考えずに一位様より受け取って戻ったが戻らぬ方が良かったのか?あの書状には何が書いてあった?とにかく急ぎショーンを送り届けた後王宮へ戻らなくては…。
同じ時刻王座の間
「至急一位様の養生先へ兵を。其から神官一位から三位殿、二位巫女殿へ至急此方の書状を。同時に緊急の貴族会議を行う為召集を」
そう侍従長へ告げると、
「もう彼方は間に合わないかも知れぬが…」
と誰にともなく呟いた…。
「ただいまぁ~かあさま。ねえさま」
「お帰りなさいショーン。お父様」
「お帰りなさい。ショーン。あなた。随分早いお帰りですね。予定では明日の午後でしたのに」
「一位様より急ぎの書状を王宛に頼まれ予定よりも早く戻って来たのだ。しかし服を着替えてまた急ぎ王宮へ戻る」
「まぁ、随分忙しいですね。では今着替えの用意を手配いたしますわ」
「頼む」
そう言うとリアンは自室へ向かって行った。
「ねえショーン。向こうはどうだった?彼処はとても大きな湖があって風景も綺麗で夏は保養地にもなっている位だから私も学園が無かったら一緒に行きたかったわ」
「とてもきれいでおおきかったよ。それからきれいなこにあったんだ。かみがきれいなぎんいろなんだけど先がなぜかきんいろなんだ!それにひとみのいろがきれいなむらさきいろ!」
「銀髪で毛先が金色?珍しい色合いね」
「あらっ?その方の御名前はもしかしてグレース様と云う名ではなくて?」
「かあさま。グレースをしってるの?」
「知っているも何も…『何だって!?』あらっ?」
「とうさまのこえだ!」
「父様どうしたのかしら?」
バタン!!
「一位様の静養先が昨晩魔物に襲われたと報告があった。急ぎ王宮へ向かう!!」
「「「えっ!?」」」
「あなた…」
「父様…」
母と姉が父を心配げに見つめる中、ショーンだけは恐怖の為震える手を父の服を何とか掴むと、
「とうさま…グレースは?グレースやいちいさまはどうなったの?」
「わからない。それにグレースの事はお前には言っていなかったが本当は三位巫女様で将来巫女や神官の上位である聖女候補の方なのだ。今回三位様が一位様の体調を大層お気になさって身分を偽って同行されていた。しかし魔物が現れたとなるともしかしたら彼らの目的は三位様のお命なのかもしれない…」
「そんな…」
「聖女様候補?」
「やはりショーンから容姿を聞いた時まさかとは思いましたが三位様でしたか…」
「とにかく今から急ぎ出発する。もしかしたら暫く戻らぬかもしれない」
「あなた。お気お付けて…」
「行ってらっしゃいませ父様」
母と姉が父を見送る中無言でたたずいていた…
バンシー
アイルランドやスコットランドの神話に出て来る嘆きの妖精とも言われている。この妖精は死を予言したり、死を知らせる不吉な妖精とも言われ、鼻の穴が一つ、緑の歯を持ち、真っ赤に目を泣きはらしたら女性で老婆、又は長い髪をなびかせ、緑の衣に灰色のマントを着た若い女性の姿をしているとも言われています。北欧では一族、又は高貴な者が亡くなる前には大勢現れるとも言われ、又、違う国では泣き叫びながら家々の戸を叩き周るとその村が滅ぶとも言われています。