三話 面会
12/30一部文章を追加しました。
「う~ん…よなかにおんなのひとのなきごえがきこえたような…。」
「お早う御座います。ショーンぼっちゃま。何をぶつぶつ呟いているのですか?」
「あっ!マーサ!あのね、よなかにおんなのひとのなきごえがきこえなかった?」
乳母のマーサにそう言うと、
「いいえ?私は聞きませんでしたわ。第一、ぼっちゃまは昨夜夕食後寝てしまっていたではありませんか。夢の中で聞いたのでしょう」
「いっかいおきちゃったんだもん。でもやつぱりゆめかなぁ~?」
「其よりもうすぐ朝食のお時間ですよ。父君ももうお待ちです。さぁさぁ大至急お着替え致しますよ」
マーサは彼の話には全く取り合わずショーンに着替えの催促をすると彼も諦め、
「は~い」
「返事は伸ばしてはいけません」
「はい!これならいい?」
「大変良くできました」
トントン。
「お早う御座います。お着替えは終わりましたでしょうか?終わりでしたら食事の間へご案内致します」
「あっ!!そのこえはグレース!まって?いまきがえてるから!」
「其れでは扉の外でお待ち致しますので終わりしたら声を掛けてくださいね」
少しだけ落ち込んでいたが彼女の声を聞き機嫌が良くなると、
「マーサ!はやく!はやく!グレースがまっているから」
着替えの催促を逆にし始めた。
「まぁ。ぼっちゃまは本当にグレース様を気に入られたのですね」
「うん!おおきくなったらけっこんするんだ!」
「あら、ぼっちゃまの中ではもう決まっているんですね…ふふ…、さぁもう着替えも終わりましたよ。行きましょう」
ガチャツ
「おまたせ、グレース」
「いえ、では参りましょうか」
「そういえば、グレース。よなかにおんなのひとのなきごえがきこえなかった?」
「いえ…私は聞いてませんわ」
「まぁ、またその話を!夢に決まってますわ」
「…私も夢だと思います…」
「え~?」
「ぼっちゃま。この話はもう終わりです。さぁグレース様場所の案内を…グレース様?」
「え?あっ、はい。此方になります」
ショーンの話を聞いた後何か考え込み始めていたグレースだったがマーサに声をかけられ、少し慌てて案内をしたのであった。
(グレース…?)
グレースの案内で食堂の部屋へ辿り着くと既に父のリアンはテーブルについていてショーンに気が付くと、
「お早う。ショーン」
「おはようございます。とうさま」
「其れでは私はこれで…」
「有り難う。グレース。其れでは後ほど」
「またあとでね」
「はい。では失礼致します」
パタン
「ショーン。昨晩は熟睡してたけど疲れは取れたかい?」
(とうさまにもなきごえのこときこうかな…?あっ、でもマーサにこのおはなしをしたらこんどこそおこられちゃう!)
ちらっとマーサの方を見た後、
「はい。よくねむれたよ。つかれもとれた!だからきょうもグレースとおでかけするんだ」
にっこり父に向かって微笑むと、
「今日はお出掛けは無しだよ。昨日会わせたい人がいると言っただろう?朝食が終わった後その方と面会が待っている」
「…わかりました…」
ガックリするショーンであった。
面会の時間。
教会建物の南側の一室の前で滅多に父が見せ、心なしか自分まで緊張していると、扉の前まで案内してくれた15才ほどの巫女見習いが、扉を、コンコンと叩き、
「ダリオン公及び御子息のショーン様をお呼びました」
『お入れなさい』
「失礼致します」
扉を開けてもらい室内に入ると其処には背中にクッションを敷きベットに上半身を上げ、座る50代程の一人の女性が居た。
「ショーン挨拶を。此方の方は王都の教会の一位巫女イザベル様になる」
「はじめましてイザベルさま。ぼ…わたしはリアン・ベンジャミン・ドウナ・ダリオンのじなんでショーン・ウィル・ドウナ・ダリオンともうしましす。」
ぎこちないながらも右手を胸に当てお辞儀をする姿にイザベルは微笑みながら、
「小さな紳士さん。私の事は一位だけで呼んでくださいな」
「いちい、さま?」
「そうです。私達巫女は上位の階級になると皆名前では呼ばなく階級にが其のまま名称になるのですよ?」
「はい。わかりました」
「こんな格好でご免なさいね。本来であれば王都の教会で会う予定をたてていたのですが、年のせいか体調を崩してしまって此方の教会ので静養しているのよ」
「一位様はお前に以前から渡したい物があったという事で私の方からお前を連れて会いに来たんだよ」
「わざわざすみませんね」
「いいえ。お気になさらず」
「いちいさま。ぼ、わたしにわたしたいものってなんでしょうか?」
「ショーン様。此方へいらしてください」
そして近寄った彼に手を差し出し一つの石を手渡した。