8.覇権国家と魔法大国との因果関係
魔法大国Mが成立するためには、仮定③「魔法大国を志向するある国に、世界的人材確保が可能である」がどうしても外せない条件となってくることは前回に確認した。そうなるとやはり、「覇権国家Hと魔法大国Mは、いずれが先に成立するのか」ということが問題となってくる。
要するに、「もともとO国が覇権国家Hであるがゆえに、O国は魔法大国Mとなったのだ」ということもできる一方、「O国は魔法大国Mになった。だからその後で覇権国家Mになったのだ」ということもできるはずなのである。O国に仮定③の「世界的人材確保が可能」という条件が成り立つ以上は、かならずO国に他国への強制力が存在することを示唆しているためである。
しかし、ここで読者には少し昔の講を思い出していただきたい。第六講において、O国が魔法大国化するプロセスというものを、私は時系列の観点から指摘していた。O国が魔法大国Mに変貌を遂げる際には、正負いずれにしてもインセンティブが存在しなくてはならない。そしてそのインセンティブが存在するためには、やはり仮定③「魔法大国を志向するある国に、世界的人材確保が可能である」が成立していなくてはならないのである。つまり、O国が魔法大国Mへと変貌する過程の中には、すでにO国が覇権国家Hになるという条件が組み込まれているのである。そして当然ながらこの覇権国家Hが覇権を握りうる背景に、魔法という条件は組み込まれてはいけないのである。