5.魔法大国の形成プロセスを鑑みる
「エルフやドワーフは人間の社会圏へ含めないこと」、これが和製ファンタジーにおける魔法を規定する大前提であることは、前回にも示した。
さて、このような周辺準備は終わったこととして、いよいよ実際に「魔法大国はどのようなプロセスを踏まえて形成されるのか」を考えていきたい。
時系列を踏まえて考えるのならば、ある普通の国Oは、何かしらの諸条件が組合わさることで、最終的に魔法大国Mへと変貌を遂げるはずである。このとき、普通の国Oにおける内外の特徴は問わない。O国は君主制でも共和制でも構わないし、重商主義でも原始共産主義でも構わないし、国民国家であっても多民族国家であっても構わないし、経済大国であっても貧困国であっても構わない(むろん、経済大国の方が有利であるだろうが)。
では、「何かしらの諸条件」とは、具体的にどのような存在だろうか。
考えられる条件としてもっとも妥当なのは、インセンティブに関わる条件である。
第一講で繰り返し言及したとおり、人間が魔力を保有する世界設定において、魔法大国の成立を妨げる最大の要因は「人口・人材」の問題であった。
前々回にも確認したとおり、「魔力を保有する者の総人口は、魔力を保有しな
い者の総人口より少ない」ことが和製ファンタジーにおける一般的な大前提としてあげられている(大前提3.)。そうである以上、魔法大国が成立・維持されるためには、定量の人材をいかに定期的に集められるか、というところに問題の核心部が存在するのである。
次回は、「では、そのインセンティブとは、具体的にどのような形態が考えられるのか?」について考察したいと考える。