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飛べない鳥  作者: 野々倉 稔
2/5

イバラ

イバラ




だめだ、と言われた



だから、行動に移した





「これやっていい?」って聞くときは、大概答えが決まっている。


「だめ」


間を置くことなく、こちらを向くわけでもなく、しかし第一声はしっかりと。

この人は、いつもこうだ。そして、過去の罪歴を並び立て説教を始める。



籠の中に住む鳥は、籠の外に出るために許可を乞え、と躾される。


世界を知った鳥は、付き合い、というものを覚える。

そして、いつしか、その言葉を実践してみたいがために許可を乞うようになる。

しかし、その度返される返事に、鳥は途方に暮れる。

自の欲動が抑制され、世界に置き去りにされる孤独に耐えきれず、次第に欲望は衝動に変わる。

鳥は、それを制御できずに、幾度も、籠の中でそれを爆発させるという過ちを犯す。


為す術がわからない鳥は、あきらめ、を知る。

自を抑えることに慣れる一方で、籠の中の世界、というものを覚える。

そして、衝動に自を合わせることで、衝動との付き合い方を探るようになる。

鳥は、世界から与えられる義務に追われて、許可を乞うことを忘れてしまう。


世界から自由を認められるまでに育った鳥は、付き合い、というものを思い出す。

友を作り、彼らを通して世界の広大さを、自由さを知る。

満足することを知らず、胸が躍動するままに情報を得ては、喜ぶ、を繰り返す。

やがて、自と他を比較し、自ら衝動を生み出すようになり、鳥は、苦しむ。


苦しみに疲れた鳥は、まいぺーす、たしゅたよう、というものを知る。

世界の波に乗ることを覚え、自由の甘美に酔う日々を続ける。

籠の中の世界を忘れるという罪を、犯しながら。



罪は、必ず暴かれる。

罰として、鳥は、籠の中に閉じ込めらる。

そして、今度は、自の中に広がる自由の世界と籠の中の世界の間で板挟みになる。

許可を乞うことで、行き来できると思ったが、考えが甘いことを知る。

過去幾度となく犯し続けた罪は、鎖となり、鳥の動きを封じ込める。

欲望が衝動に変わり、これを制御できない鳥は、抜け穴を工作し始める。


日常の自由を確保した鳥は、罪悪感に苛まれる。

鳥籠をより強度なものにされては、新しい抜け穴を作る。

やがて、犠牲、というものを解釈に入れることで、衝動を抑える術を覚える。


一時の自由を乞うた

しかし、許されることは滅多になかった

だから、日常を少しずつ犠牲にした

それゆえ、少しばかりの自由が手に入った


付き合いのために許可を乞う

しかし、許されることは滅多にない

だから、付き合いを断る

それゆえ、微かな孤独に苛まれる



鳥は、罪悪感と孤独の重さを天秤にかけて、判断を下すようになる。

いかなる時でも、天秤は罪悪感のほうに傾く。

それゆえ、衝動を制御するときは、ありのままの天秤を見て譲歩する。

しかし、衝動に身を委ねるときは、犠牲、という重しを乗せて葛藤する。

鳥は、衝動を制御する術を、手に入れた。




まいぺーすに、生きるということは、衝動を制御するということだ。




いつの日か、鳥は、まいぺーすに、生きることを覚える。

籠の外へ出たい、と許可を乞う

滅多に、許可は下りない

それゆえ、鳥は、抜け穴を通り籠の外へ出る。


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