終わる世界の憂いと共に
「ねぇ、王さま」
「なんだ」
「わたし、王さまが好きだよ」
「……」
「大好き」
「……あぁ」
「みんなも、大好きだったんだよ。表に出なかったけど、みんな」
「……」
「でもね、みんなこう思っていたの。わたしが誰より一番、王さまが大好きだって」
「……」
「わがままだよね」
「……いや、そんなことはないだろう」
「そうかな」
「その意思が、女神を退け……いや、女神を救い、あの二人を救った」
「うん」
「……我は滅びを司る神だ。ゆえに、永久を望んだ他の神々に疎まれた」
「ひどいね」
「そうでもない。彼らはただ、幸福を求めただけだ。そして、我は己の力をずっと疎み、呪い続けてきた。我とて神であるからこそ、己の力がもたらす『不幸』の味を恐れていた。ゆえに消すならば早く消してほしい。そう祈るように――神の分際で、祈り願ってきた。だが」
「だが?」
「ルシアがすべてを変えてくれた。この手は、誰かを『幸福』にできると知った」
「彼女は、幸せだったよ」
「知っている。知っていた……我も、幸せであったからな」
「でもね、わたしはやっぱりこう思うの。彼女なんかには負けないって。彼女がわたしの中で悔しがるくらいに、このわたしが――ラキ・メルリーヌが、あなたを幸せにするの。優しくて愛しいわたしだけの人、アレクシス・シルヴェリードを、わたしが笑顔にしてあげるの」
「……そうだな。目が覚めたら、身に余るほどの幸福をもらおうか」
「うん。がんばるね。……だから今は、おやすみなさい、アレクシスさま」
「……あぁ、おやすみ。ラキ」




