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君恋う  作者: 氷室 愁
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8.廉国 書斎

訪問有り難う御座います!

濫の秘密が明らかにーーなったり、ならなかったり

すぐに彼女だと分かった。昔と変わらない香り。だから、相手が全く気がつかないという現実が腹立たしかった。婚約破棄をしたのに、まるで気がつかない。

しかし、話をしていると彼女に求婚しているのは本当に1人だけ。それも気の進まない婚約らしい。

調べると、彼女の元に直接婚約話はいったことがないと分かった。つまり、自分の婚約破棄も、彼女の意思ではないのだ。そう思うだけで救われる自分は本当に単純だと思う。それだけで、また彼女を想える自分は――

側にいると、押せば手に入る気がした。

細い肩、頼りない腕、震える体。あんなにも弱いのに、気丈にも独りで立っていた。

抱きしめる度に見せた戸惑いの表情が忘れられなかった。

[少しでも、頼ってくれれば……手を伸ばしてくれればいいのに]

苦しいだろうに独りで抱え込むその姿は、愛おしいと思った。

[主、報告に上がりました]

[入れ]

不意に天井から声がかけられた。板が外れ、黒い影が床におり立つ。

[やはり、例の件は裏で何らかの動きがあるようです]

広い机の上には、沢山の書類が広げられている。山のように積まれたそれは、ここ最近の塩の価格報告だ。徐々にだが、値が上がってきている。

[やはりな……。相手の顔は?]

[それはまだ……]

首は横に振られたが、男の口元は笑っていた。

[なんだ?]

[ですが、見つけられないこともないですよ。証拠も掴めそうです]

期待以上の働きだ。

[引き続き、頼む]

[御意]

黒い影は再び闇の中に消え、濫はまた書類に向かうのだった。


有り難う御座いました

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