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30.そして二人は――
訪問有り難う御座います。
甘い香りがする。懐かしい香り。自分が愛しい人にと作った香。
[ん……]
[気がついたか]
[本当に……濫?]
[香鈴]
名を呼ばれるとともに抱きしめられ、香ったのは紛れもなく濫の香りだった。ずっと香鈴が作った香を焚いてくれていたのか、甘い香りが混じっている。
[濫だ……。本当に、濫]
[もう、大丈夫だ]
涙が溢れだした。
[ずっと、俺が側にいる]
[ずっと……?]
[ずっと、ずっと……。俺が側にいる。好きだ、香鈴]
唇を重ねると、二人の香りが混ざり合うようだった。
有り難う御座いました。
次話、最終です。




