24/32
23.濫
訪問有り難う御座います
あれから6日。香鈴はもう硫に着いた頃だろうか。急がねば取り返しのつかない事になる。しかし、焦っても、楼芽はまだ帰ってこない。
酪まで行きと帰りで4日。命令通り2日で話を付けることが出来ていたとしたら、もう帰ってきてもいい頃だ。
何も出来ずに、ただ待つ身は辛かった。
[……くそ]
打ち付けた拳が香合に当たった。慌てて支えると、ふわりと漂う香りに、ふと心が和らいだ。香鈴が残していったあの香は幾度となく、濫の逸る気持ちを抑えてくれた。
[……香鈴]
その時、部屋の戸を叩く音がした。
有り難う御座いました




