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君恋う  作者: 氷室 愁
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23.濫

訪問有り難う御座います


あれから6日。香鈴はもう硫に着いた頃だろうか。急がねば取り返しのつかない事になる。しかし、焦っても、楼芽はまだ帰ってこない。

酪まで行きと帰りで4日。命令通り2日で話を付けることが出来ていたとしたら、もう帰ってきてもいい頃だ。

何も出来ずに、ただ待つ身は辛かった。

[……くそ]

打ち付けた拳が香合に当たった。慌てて支えると、ふわりと漂う香りに、ふと心が和らいだ。香鈴が残していったあの香は幾度となく、濫の逸る気持ちを抑えてくれた。

[……香鈴]

その時、部屋の戸を叩く音がした。


有り難う御座いました

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