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君恋う  作者: 氷室 愁
16/32

15.密入国

訪問有り難う御座います!

大胆な香鈴です


どの国も、自国の紋章の入った服を着ていなければ入国できないようになっているが、さすがに硫の青の紋の入った外套を着て入るわけにはいかないので今は廉の白の紋を借りている。貸してくれた相手は、今は茂みでお昼寝中だ。

[それにしても、硫以外はよく来ているんだな。奔の赤に、洸の黄、酪の緑]

廉には他国の人も沢山集まっていて、活気に満ちあふれていた。そのお陰で、怪しまれることなく買い物を済ますことが出来た。

[おじさん、その服頂戴]

[あぁ?それなら銅三枚だ]

必要な物を買う中で耳に入ってきたことは、どれも《硫の姫が奔の王子と結婚する》とか《王子に求婚されている》といったものばかりだった。

[有り難う。そういえば、よくきく硫の話し、あれって結局なんなの?]

[さぁな。結婚したって話じゃなかったか?]

やはり、どこも噂は噂でしかなかった


[早く返してやらないと、風邪を引くな。それにそろそろ起きる頃だ]

外套をさっさと返すと、帰りは門を通らずに出るつもりなので、香鈴は酒場の裏へと回った。

裏には酔った男が寝ていたり、明らかに一般人ではない男たちが待ち伏せていたりと、あまり安全であるとは言えない状態だった。表の華やかさとは全く違う。

[多少もう一度危険を冒してでも、表から帰るべきだったか]

そう言いながら、足を投げ出して眠っている男を跨ぐ。

[お嬢ちゃん〜、ヒック]

急に、寝ていると思った男が香鈴の足を掴んだ。

[な、お、俺は男だ]

[くくくくっ、俺ぐらいの年になると〜、女の子ってぐらい、すぐ分かるよ〜]

[それ程年がいってるようには、見えないけど……]

[ま、実際いってないもん〜ヒック]

よろよろとおぼつかない足取りで男は起きあがると、香鈴にもたれ掛かってきた。面倒事が起こる前に早く帰りたいのに、よけいなものに引っかかった。

[俺、急いでるんだけど]

ふと、違和感に気がつく。

この男、酒臭くない……?

[そっちには行かない方がいい。急いでいるなら、尚更な]

今までよろけていた男が急にしっかりと立ち上がった。

[隠れろ]

そして香鈴の腕を強く引くと、酒樽の後ろに実を隠した。

[何するんだ!]

[静かに。来るぞ]

男の視線の先を見ると、森の方から男が二人歩いてきていた。

[本当か?ここに香鈴姫がいるってのは]

[確かな情報だ。情報を聞き回っていた人物の外套から白髪が見えたらしい]

また白い髪が原因……。

無意識のうちに、頭に手がいく。

[でも何でわざわざ敵国に?]

[さあな]

外套の紋章は赤。一般の旅客を装ってはいるが、歩き方からして兵だろう。まだ諦めていなかったのだ。でも、まさか廉まで捜査範囲を広げているとは。

[……行ったな]

ゆっくりと樽の裏から体を起こす。

[あなたは一体……誰だ?俺の事情も知っているようだし、何故俺を助ける]

[俺の名は楼芽。姫さんを助けたのは、ある方の願いがあったからだ。香鈴姫を迎えに来た]

正直、見るからに怪しげなこの男――楼芽にすんなり着いていく気にはなれなかった。しかし、楼芽からは何故か懐かしい匂いがした。だからだろうか、ついて行ってみようと思えたのは。


有り難う御座いました

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