14.逃亡生活
訪問有り難う御座います!
[くしゅっ]
小さなくしゃみが、洞穴に響く。
[うぅ……寒い]
身を震わせて毛布を巻くが、それだけではとうてい寒さを防げなかった。
あれから一週間経ったが、未だに連絡はない。香鈴が隠れているこの場所を知るものは濫以外いないが、優秀な人捜し専門の部隊が兵の中にはある。ほとぼりが冷めればすぐに迎えが来るはずだ。
[迎えが来ないって事は……まだ諦めてないんだな]
毛布の上から外套を巻くと、少しだけ寒さはましになった。
今隠れているのは濫の隠れ家である洞穴だ。また使ってくれと言われたので、お言葉に甘えて勝手に使わしてもらっている。まさか二度と使うとはないだろうと思っていたのに。
[流石にこれだけ遅いと……。情報を集めた方がいいな]
さすがに、国内を荒らし回ることはしないだろうが、第一王女が逃げ出したという話しは、どこかから漏れているかもしれない。
情報を集めるには出来る限り、危険もなく、今隠れている場所から近い国がいい。ついでに食べ物や衣類も買うつもりだ。
[奔と硫は論外。危険は廉。洸と酪は遠い。沢山買い物が出来る近場は……]
思ったよりも廉は雪が積もっていた。以前よりはいくらかましになっていたが。
結局、敵対国ということで危険は承知だが、買い物を優先し今香鈴は廉にいる。
[大丈夫だよな。目立つ髪は布で纏めたし、外套は借りてきたし]
有り難う御座いました




