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序章

 序章 「動き出す者達」


 やや暗めの部屋には、複数の人間がいた。会議室のような部屋の中で、向き合うように配置された大きな机を囲んでいる。

 部屋の隅には一人の少女がいた。

 金髪碧眼の少女だ。長い髪に、どこか寂しげな表情を必死に隠し、無表情を装っている。透き通るように白い肌の身体は華奢で、抱き締めたら壊れてしまいそうだった。

 静まり返った部屋の中、少女だけが立っていた。他の者は皆、椅子に腰を下ろして時が来るのを待っている。少女は、この場における立場がない。故に、彼女の椅子は存在しない。

「……揃ったか」

 机の一番奥で、声がした。

 大柄な男だった。

 鍛え抜かれた筋肉質な身体に、邪魔にならない短さの銀髪と、何者にも動じなさそうな堂々たる瞳の男だ。顔だけでなく、衣服の隙間から見える肌には無数の傷が刻まれている。何より特徴的なのは、男の身体は淡い光に包まれているという点だ。虹彩は黄金の光を帯び、静かにその場を見つめている。

 部屋にいる誰よりも威厳のある男だった。

「第二特殊特務部隊による作戦は、失敗に終わった。だが、別の成果がある」

 男の言葉に、皆が微かにざわめいた。

「新たな仲間だ」

 部屋の奥の扉が開き、男の声を合図にしたかのように一人の少年が現れる。

「カソウ・アキラだ」

 男の言葉に、誰もが感嘆の声を上げる。

 ただ、二人だけ反応の違う者がいた。

 一人は、アッシュブロンドの髪の青年だった。同系列の瞳を大きく見開き、信じられないものを見るかのようにアキラを見つめている。もう一人は、部屋の隅にいる少女だった。少しだけ目を細め、どこか哀しげに青年から視線を逸らす。

「彼は、私が直に力の使い方を教える」

 男が告げる。

 アキラの表情は引き締まっていた。だが、どこか楽しげでもある。期待感を抱いているのだと直ぐに判った。

「同時に、我等も新たな一歩を踏み出す」

 男の言葉に、皆が感嘆の息を漏らす。アッシュブロンドの髪の青年も、こちらには乗り気なようで穏やかな表情を見せていた。ただ、少女だけは浮かない顔のままだ。誰も気付いてはいなかったが。

「そのために、皆には一層の努力を期待する」

 組織が表舞台へと出るために、やらねばならないことはまだ数多く残っている。

 全て、布石が敷かれてから一斉に動く計画だ。

「期日は、予定通り一ヶ月後だ」

 皆が静まり返り、やる気に満ちた瞳を男へ向ける。

「それまでに、全ての準備を終わらせろ」

 誰かが息を呑む。

「そして、我等の世界を創り出すのだ!」

 歓声と拍手が部屋の中に響き渡る。

 少女は胸の前で両手を組んで、その様子をじっと見つめていた。少しだけ、辛そうな表情を覗かせて。

(……私にできること、すべきこと……)

 少女の願いは、まだ叶えられない。

 実現するために、どう動くべきなのか、何が必要なのか、まだ見えない。

(……ヒカル……!)

 ただ、確かな約束を交わした少年の名を、心の中で呟いた。

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