5.エンドロール
ある時御上くんが、僕の特別な映画の話をしてくれた。
そこには、必ず僕が泣いてしまうシーンがある。
主人公がただひとり映画館で、沢山のキスシーンを見つめながら涙を流す場面。
今僕の脳裏には、ただ僕と御上くんのシーンが、映画の光のように浮かんでは消えていく。
彼との全てが詰まっていた。
この胸に残る光の欠片を抱きしめながら、ここにいられる時間はもう僅かだと僕はわかっていた。
その時、僕へ向ける彼の言葉は、独り言のように病室に響き、君は僕の頷きを待つように皺が刻まれた僕の頬をそっと撫でる。
同じ時間を生きてきた僕たち。
きっと君には、僕の頷きも、声にならない言葉も、届いている。
もう彼が帰る時間が来ていた。
窓から差し込むオレンジ色の日差しが、僕たちを照らした。
彼はいつもどおり、ゆっくりと僕の頬に唇を寄せた。
無機質なはずだった白い壁には、
僕たちのシルエットが色をもって温かく映った。
僕と彼の最期のキスは、きっと映画のワンシーンのように絵になっていたはずだ。
エンドロールの最後には1輪のバラを添えよう。君と出逢った、あの映画のように──。
─ Fin ─
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読了ありがとうございました。
短い物語でしたが、少しでも心に触れるものがあったなら嬉しいです…。




