2.同じ心音
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その後、僕と彼は映画友達になった。
最初は月数回お互いの気になる作品を見に行き、帰りは近くの落ち着いたカフェで一杯のコーヒーをゆっくりと飲みながら、見た作品を語った。
心を動かされたシーンやセリフ、泣きのポイント、思わず吹き出してしまった笑えるシーン…。考察してみたり、違う意見にちょっと熱くなってみたり…。
仕事も日常も無く、二人で映画を語った。
語り合えば語り合うほどに、人柄が透けて見え、僕は彼に惹かれていった。
恋という気持ちは結構前に置いてきていて、それに気付くには少し時間が掛かった。
ある時、彼、御上くんが大好きな古い作品のレイトショーがあると言うので見に行った。この作品は僕もかなり好きな作品だった。
友情が描かれたヒューマンドラマだったが、友情の奥に違う感情も混じっているのではないかという、その滲む感情を僕は勝手に感じていた。そのストーリーの中では最後まで語られることは無い。
御上くんはどう思っているのだろうか。僕は時々、御上くんの横顔に目をやった。スクリーンの光が、シャッターを切るように彼の横顔を照らす。
主人公の想いと、彼自身が同化しているように感じて、僕の心は静かに波打った。
スクリーンの中では、背中を見つめる主人公がどこか切なく見えた。
帰り道、ひと雨降ったのかアスファルトは濡れていた。雨が空気を浄化したように澄んだ空気に月明かりがいつもより明るく感じた。2人で歩く道はさっきの映画の続きみたいで、鼓動の強さがやけに際立った気がした。
これまでも彼と歩いてきたかのように歩幅も歩調も同じ気がした。彼と歩く未来の道を、僕は自然と考えていた。
僕の十何年ぶりのこの心のきらめきは、この数ヵ月後に御上くんが抱きしめた。
ずっと同じ心音の僕と君だったとわかった日だった。




