表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

私の感動短編集

僕の愛を伝えるために

作者: 羽兎磨琉

感動作品です。


それでは本編、どうぞ

『俺』……、『僕』それから『私』………。


 自分には一人称が3つある。正確に言えば三重人格という訳だ。名をそれぞれ、O、B、Wといっている。

 

 『僕』は普段の僕。何の変哲もない中学一年生。マイペースでゆったりとしてるんだぁ。

 そんな僕が怒ったり悲しんだりすると、OやWが出てきてしまう。


 『俺』は怒った時の僕。『俺』になると、破壊衝動が収まらなくなる。最悪の場合、誰かを傷つけてしまうあり様だ。

 去年このモードに初めて気がついた。何故だか理由が思い出せないけど、とにかく僕は怒ると暴走してしまうんだ!

 そんなの誰だってそうだ! とかって思ったりするかもね。でも『俺』は歯止めが効かない。誰にも止めることが出来ない。ただ一人を除いて………。


 『私』は悲しくなった時の僕。この時は、『俺』とは違い、一人称まで「私」になってしまう。

 小学生の頃、帰ってきて誰もいなかった時にこのモードが発動した。それから2度、このモードは発動しているだけだ。

 滅多にみられない超激レアってやつなのさ!


 今日はぼくの誕生日。そう言っても祝ってくれる人は誰もいない。

 両親は僕を置いて家出。祖父母は僕が生まれてくる前に亡くなっている。親戚も誰もいない。学校なんてのも通っていない。

 誰もいなくなって6年。僕は7歳の頃から一人暮らしだ。案外楽しいもんさ!皆んなが思ってるよりもね!


「ハッピーバースデーイヤー雅哉(まさや)〜!」


 一人でハッピーバースデーの歌を歌い終えて、ケーキを買うお金すらない僕は歯磨きをして風呂に入って寝る。明日は朝が早いからね。

 でも内心はやっぱり寂しい。誰もいないって寂しいんだやっぱり……。


「神様……、一緒に居てくれる人が僕は欲しい……。どんな人でもいいんだ……。だからお願いします」

 去年も今年も同じ願いばかり。絶対に叶うわけがないと分かってるのに何故だろう……?


「ならひとつ約束してくれるかい?」


誰の声だろう……? 突然僕の頭の中に声が響いた。


「神様……?」

「いかにも」


神様だ。神様が現れたんだ!この僕のために……!


「家族が欲しいとな?ならばあげようではないか……」


 おっとりしてるなぁ。何だかとても優しそうなおじいさんだ。


「明日の朝にはきっともういるはずじゃ。でも君はもう2度と親に会ってはいけないよ。分かったかね?」

「もちろんさ!明日が待ち遠しいよ!」

 僕がそう言うと、神様は僕の頭から消えていった。



 朝早くに目が覚めた。新聞配達のアルバイトに行かなきゃいけない時間だ。すると……、


「雅哉〜!起きなさ〜いっ!」


お母さんそっくりな声が、台所の方から聞こえてくる。願いが本当に叶ったんだ!


「ママー!! 私ずーっと会いたったんだよぉ〜!」

「あらあら、そんなに泣いちゃって」


ママじゃない。そうだとしても僕は嬉しかった。


「私、ずっと寂しかったんだよ」

 ママにそういって僕はアルバイトに行った。


 バイトの途中、どこかで見たことがある人とすれ違った。

(あれ?前にどこかであった様な……?)

 きっと何かの勘違いだ。そう思って僕はバイトを続けた。


「ただいま〜!ママ〜!!」

 返事がない。それより玄関に靴が3足ある。一体誰だろう?


「いいから、あれは私達の息子なんだ!」

 どこかで聞いたことがある声…………、父さんだ!

「早くこの家から出てってください!」

 今度は母さんの声だ!帰ってきてくれたんだ!


「お父さん!お母さん!僕ここにいるよ!」

 二人の方に走りながら僕はそう言った。でも、二人は気づいてくれなかった。


「僕はここだって…………あれ……?」.

 母さんに抱きついたはずなのに、母さんが後ろにいる。僕が母さんをすり抜けたんだ!

 僕は神様が言った言葉を思い出した。


「2度と親に会ってはいけないよ」


 そうだ。僕は2人とはもう2度と会えないんだった。

でもそれって悲しい。2度と会えないなんて、私はそんなの…………嫌だ!


プツン!


何かがはち切れた。俺の何かがはち切れた。


「神様なんていなかった…………。信じた俺が悪かったんだ!」


 ドシャーンッ! ベキベキッッ!

 Oが全てを破壊していく。自分に関係するもの全てを…………!


「あなた、これ…………!」

 

(やっと俺のことに気づいたか……!)


「雅哉…………そこにいるのか……!?」

 まだ僕の姿は見えていない。何かがおかしい……。


「気づいたかね?」


頭の中から誰かが話しかけてきた。あの神様だ!


「何に気づいたって言うんだよ!」

「それはじゃな……、自分で考えるんじゃ」

 何を言っているのかさっぱり分からない。僕に何をわかれって言うんだ!


「そこにいるのか……雅哉!」

父さんの声だ。まだ僕を探している。


「やめなさいよ……噂頼りにここにきただけでしょ?」

  噂って何の噂だろう?そんな話あったっけ?

「誰も住んでいないのに電気がついてるって言うだけでしょう?」

 まだ何を言っているのか分からない!


「もう雅哉は…………死んでるんだから…………!」.


「え………………?」


「そうじゃ。君はもう死んでおるのじゃ。ずっと昔からじゃがのぉ…………」

「僕が死んでるだと?じゃあ何で僕はここにいるんだ?」


「それは、君にまだやるべきことが残っておるからじゃ」


やるべき事………! 

僕はこの時思い出したんだ。


 6年前、僕の両親は僕を置いて行ったんじゃあない。

僕のOから逃げたんだ。色んなものを傷つけてしまう僕のOを止められなかったんだ。きっかけはほんの些細な事だったのに、何故か僕のOが暴れ出したんだった、

Oを止められるのは僕だけだと言うことを、この時初めて理解した。

 Oのあと、僕はその時辺りの記憶がなくなる。故に誰から聞いたのか分からないが僕は、両親は僕を置いて出て行ったと聞かされていた。多分僕はその後、Wになって自殺したんだ。悲しさ故に…………。


「神様、最初から知ってたの?」

「さぁ、それはどうかのぉ……」

「どうかもう一度だけ、僕の両親に会わせてください」


「何故じゃ?」


「僕の愛を伝えるために……」


「よかろう。それでこそじゃ」


「雅哉……? あなた、雅哉がここに!」


「父さん、母さん……………」


「雅哉っ!ごめん……。ごめんねぇっ……」.

 母さんが泣いている。こんな母さん初めて見た。


「雅哉を置いてきぼりにしちゃって…ぇ……………

一人ぼっちにさせてごめんねぇ……っ」

 父さんも泣き崩れた。そして僕も……。


「僕の方こそごめん……なさいっ」

 嗚咽を飲みながら続けた。


「父さんや母さんのこと……何も知らずに……

傷つけてごめんなさい……っっ」

 

 言いたいことはまだたくさんある。

謝ることも、伝えたいことも山のようにある。

 

でも、もうすぐお別れの時間だ。


「父さん……母さん…………(ぼく)を見つけてくれて…………



ありがとう!」



 体がどんどん消えていく。でも父さんと母さんはよく見える。


気がつくと僕は消えていた。天に昇っていったのだ。


言うべき事は最後に全部言えた。

伝えたいことも伝えられた。

最後の最後にちゃんと全部届いたのだ。

僕の想いが全部……………!




そして僕は自分に打ち勝てた。

自分の心の弱さに打ち勝てた。

もう誰にも止められない。



僕の命が尽きようとも…………。


この度はありがとうございました。


いかがだったでしょうか?

結構真面目に描いたので、悪くないとは思うのですが……。


この先も色々と創っていきたいと思います。

応援よろしくお願いします。


それではまた今度お会いしましょう!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ