僕の愛を伝えるために
感動作品です。
それでは本編、どうぞ
『俺』……、『僕』それから『私』………。
自分には一人称が3つある。正確に言えば三重人格という訳だ。名をそれぞれ、O、B、Wといっている。
『僕』は普段の僕。何の変哲もない中学一年生。マイペースでゆったりとしてるんだぁ。
そんな僕が怒ったり悲しんだりすると、OやWが出てきてしまう。
『俺』は怒った時の僕。『俺』になると、破壊衝動が収まらなくなる。最悪の場合、誰かを傷つけてしまうあり様だ。
去年このモードに初めて気がついた。何故だか理由が思い出せないけど、とにかく僕は怒ると暴走してしまうんだ!
そんなの誰だってそうだ! とかって思ったりするかもね。でも『俺』は歯止めが効かない。誰にも止めることが出来ない。ただ一人を除いて………。
『私』は悲しくなった時の僕。この時は、『俺』とは違い、一人称まで「私」になってしまう。
小学生の頃、帰ってきて誰もいなかった時にこのモードが発動した。それから2度、このモードは発動しているだけだ。
滅多にみられない超激レアってやつなのさ!
今日はぼくの誕生日。そう言っても祝ってくれる人は誰もいない。
両親は僕を置いて家出。祖父母は僕が生まれてくる前に亡くなっている。親戚も誰もいない。学校なんてのも通っていない。
誰もいなくなって6年。僕は7歳の頃から一人暮らしだ。案外楽しいもんさ!皆んなが思ってるよりもね!
「ハッピーバースデーイヤー雅哉〜!」
一人でハッピーバースデーの歌を歌い終えて、ケーキを買うお金すらない僕は歯磨きをして風呂に入って寝る。明日は朝が早いからね。
でも内心はやっぱり寂しい。誰もいないって寂しいんだやっぱり……。
「神様……、一緒に居てくれる人が僕は欲しい……。どんな人でもいいんだ……。だからお願いします」
去年も今年も同じ願いばかり。絶対に叶うわけがないと分かってるのに何故だろう……?
「ならひとつ約束してくれるかい?」
誰の声だろう……? 突然僕の頭の中に声が響いた。
「神様……?」
「いかにも」
神様だ。神様が現れたんだ!この僕のために……!
「家族が欲しいとな?ならばあげようではないか……」
おっとりしてるなぁ。何だかとても優しそうなおじいさんだ。
「明日の朝にはきっともういるはずじゃ。でも君はもう2度と親に会ってはいけないよ。分かったかね?」
「もちろんさ!明日が待ち遠しいよ!」
僕がそう言うと、神様は僕の頭から消えていった。
朝早くに目が覚めた。新聞配達のアルバイトに行かなきゃいけない時間だ。すると……、
「雅哉〜!起きなさ〜いっ!」
お母さんそっくりな声が、台所の方から聞こえてくる。願いが本当に叶ったんだ!
「ママー!! 私ずーっと会いたったんだよぉ〜!」
「あらあら、そんなに泣いちゃって」
ママじゃない。そうだとしても僕は嬉しかった。
「私、ずっと寂しかったんだよ」
ママにそういって僕はアルバイトに行った。
バイトの途中、どこかで見たことがある人とすれ違った。
(あれ?前にどこかであった様な……?)
きっと何かの勘違いだ。そう思って僕はバイトを続けた。
「ただいま〜!ママ〜!!」
返事がない。それより玄関に靴が3足ある。一体誰だろう?
「いいから、あれは私達の息子なんだ!」
どこかで聞いたことがある声…………、父さんだ!
「早くこの家から出てってください!」
今度は母さんの声だ!帰ってきてくれたんだ!
「お父さん!お母さん!僕ここにいるよ!」
二人の方に走りながら僕はそう言った。でも、二人は気づいてくれなかった。
「僕はここだって…………あれ……?」.
母さんに抱きついたはずなのに、母さんが後ろにいる。僕が母さんをすり抜けたんだ!
僕は神様が言った言葉を思い出した。
「2度と親に会ってはいけないよ」
そうだ。僕は2人とはもう2度と会えないんだった。
でもそれって悲しい。2度と会えないなんて、私はそんなの…………嫌だ!
プツン!
何かがはち切れた。俺の何かがはち切れた。
「神様なんていなかった…………。信じた俺が悪かったんだ!」
ドシャーンッ! ベキベキッッ!
Oが全てを破壊していく。自分に関係するもの全てを…………!
「あなた、これ…………!」
(やっと俺のことに気づいたか……!)
「雅哉…………そこにいるのか……!?」
まだ僕の姿は見えていない。何かがおかしい……。
「気づいたかね?」
頭の中から誰かが話しかけてきた。あの神様だ!
「何に気づいたって言うんだよ!」
「それはじゃな……、自分で考えるんじゃ」
何を言っているのかさっぱり分からない。僕に何をわかれって言うんだ!
「そこにいるのか……雅哉!」
父さんの声だ。まだ僕を探している。
「やめなさいよ……噂頼りにここにきただけでしょ?」
噂って何の噂だろう?そんな話あったっけ?
「誰も住んでいないのに電気がついてるって言うだけでしょう?」
まだ何を言っているのか分からない!
「もう雅哉は…………死んでるんだから…………!」.
「え………………?」
「そうじゃ。君はもう死んでおるのじゃ。ずっと昔からじゃがのぉ…………」
「僕が死んでるだと?じゃあ何で僕はここにいるんだ?」
「それは、君にまだやるべきことが残っておるからじゃ」
やるべき事………!
僕はこの時思い出したんだ。
6年前、僕の両親は僕を置いて行ったんじゃあない。
僕のOから逃げたんだ。色んなものを傷つけてしまう僕のOを止められなかったんだ。きっかけはほんの些細な事だったのに、何故か僕のOが暴れ出したんだった、
Oを止められるのは僕だけだと言うことを、この時初めて理解した。
Oのあと、僕はその時辺りの記憶がなくなる。故に誰から聞いたのか分からないが僕は、両親は僕を置いて出て行ったと聞かされていた。多分僕はその後、Wになって自殺したんだ。悲しさ故に…………。
「神様、最初から知ってたの?」
「さぁ、それはどうかのぉ……」
「どうかもう一度だけ、僕の両親に会わせてください」
「何故じゃ?」
「僕の愛を伝えるために……」
「よかろう。それでこそじゃ」
「雅哉……? あなた、雅哉がここに!」
「父さん、母さん……………」
「雅哉っ!ごめん……。ごめんねぇっ……」.
母さんが泣いている。こんな母さん初めて見た。
「雅哉を置いてきぼりにしちゃって…ぇ……………
一人ぼっちにさせてごめんねぇ……っ」
父さんも泣き崩れた。そして僕も……。
「僕の方こそごめん……なさいっ」
嗚咽を飲みながら続けた。
「父さんや母さんのこと……何も知らずに……
傷つけてごめんなさい……っっ」
言いたいことはまだたくさんある。
謝ることも、伝えたいことも山のようにある。
でも、もうすぐお別れの時間だ。
「父さん……母さん…………僕を見つけてくれて…………
ありがとう!」
体がどんどん消えていく。でも父さんと母さんはよく見える。
気がつくと僕は消えていた。天に昇っていったのだ。
言うべき事は最後に全部言えた。
伝えたいことも伝えられた。
最後の最後にちゃんと全部届いたのだ。
僕の想いが全部……………!
そして僕は自分に打ち勝てた。
自分の心の弱さに打ち勝てた。
もう誰にも止められない。
僕の命が尽きようとも…………。
この度はありがとうございました。
いかがだったでしょうか?
結構真面目に描いたので、悪くないとは思うのですが……。
この先も色々と創っていきたいと思います。
応援よろしくお願いします。
それではまた今度お会いしましょう!