8.突然の、呼び出し➀
とりあえず、上から順番にと言うことで、二人で水属性から練習していくことにになった。
「体の中にある魔力を感じて、外に出すって書いてあるけど、まずそもそも、魔力を感じるってどうやってやるの!?そこからちゃんと教えてよーー。うがーー!」
本をペしぺしと叩いて、顔をうずめる。
「あんまり本に当たっちゃだめだよー。ほら、こんな風にすればいいんだよ。」
リリーは手のひらから水を出して繊細なバラの形を作る。また形を変えて今度は大きな龍を出して動かしてまで見せている。水で形を作ることは水属性基礎魔法の中では中級に当たり、生き物の形を動かして生きているように見せることは上級に当たる。魔法を初めて1か月だが、初級以前の部分で躓いているわたしとは雲泥の差だ。そもそもどうやって魔力を感じるのかがよくわからない。
「体の中でポカポカしてるものを見つければいいんだよ。ほら。」
「だからわかんないってー。」
むむむ........。これじゃあ、固有魔法習得にたどり着くまで先が長いな。はあ。せめて何か一つ属性があればよかったのに。魔法は無属性にきびしすぎるよ........。
龍を動かしてはしゃいでいるリリーがまぶしく見える。
「風の属性のほうもやってみようかなー。」
リリーがごく自然にページの先部分をぱらぱらとめくる。
(わたしが水属性使えるようになるの待ってくれないんだ........。)
チクリと何かが胸に引っかかるような感じがした。
◇◇◇◇
2年の月日がたち、わたしとリリーの魔法の差はさらに開いていた。火属性で少し躓く部分があったもののリリーは全ての属性の初級、中級、上級の魔法を網羅した。それぞれの属性を組み合わせて書には載っていない複合魔法も次々と編み出している。対してわたしはやっと今日魔力を感じ取れるようになったところだった。
「おめでとう!やったね!」
「もうすごい時間かかったー........。」
「ふふー、感じ取れたらここからは早いんじゃない?次々習得できちゃうよ。水とかで動物とか作れるようになるとかわいいよ。」
リリーが向ける視線の先にあるのは水のうさぎだ。初めの時よりもさらにリアルさと質感が増していて、毛先の1本1本が光に反射してきらきらと輝いている。動きも愛嬌のあるしぐさをできるようになっていて、最近では常に出しっぱなしのリリーのお気に入りだ。
「チューリップとか作ってみたら?思い入れのある花でしょ?」
チューリップはわたしが生まれた花だ。
「やってみる。」
身体の中の魔力を手のひらにギュッと集めて........、出す!ぽよんと水が手から出てくる。
「魔法使えた!」
感動すぎる。
次はチューリップの形に........。してみようとするがゆがんだ形になってしまった。さすがに一発じゃうまくいかないかー。
「なんか歪んでるよ。ほらここをもっと立てないと。」
リリーが指摘してくる。当たり前のようにわたしが失敗したとは思っておらず、わたしの花をいびつだと言ってくる。確かリリーは一発でできたんだっけ。
もやもやしたものが胸にたまっていく。
その時、周りの妖精たちが少しざわついた。
どうしたのだろうとあたりを見合わすと、わたしの誕生以来姿を見せていなかった妖精女王様の使いがこちらに向かって飛んできていた。
「リリー、妖精女王様がお呼びです。」
キャラクターを書くって難しい........。