3.なんとなく、潜入してみた
成り上がりタグをつけるのを忘れていたので追加しました。
魔道の書とは何か。私がその名前を聞いたのは50年前のリリーとの何気ない雑談の中でのことだった。
物語の序盤で出てくるようなそのチープな名前とは裏腹に、この世に一つしか存在しない唯一無二の伝説のアイテム。
曰く、世界中の魔道がその書には記されている。
曰く、その書を手にしたものは先の栄光が約束されている。
曰く、妖精の国はこの書を守るために存在している。
妖精たちの間では有名な話らしい。実際にこの国に侵入して来ようとする不届き者がいるそうだが、妖精女王様が追い払っている。
「リリー、この穴から中に入るよ!」
「本当に行くの?ばれたらただじゃすまないよ。」
「大丈夫だって。」
十中八九ばれるだろうがその時はその時だ。このまま何もないよりはいい。
リリーの手を引いておそるおそる中に入ってみると、ぐわんと少しの違和感を感じて、気づくと大きな回廊に立っていた。
壁や天井の素材が何かわからないが、石っぽい材質で、厳かな雰囲気が漂っている。絵のようなものが描かれていて、何かの物語のように見える。もしかしたら妖精の国の建国碑なのかもしれない。細かく装飾されていて、この世界にきて初めて文明を見た。
また、それらの全部がほのかに青く光っていて、どこか妖精女王様の気配を感じさせる。
「すごい........。」
リリーがその雰囲気に気おされて戻ろうとするが、入ってきた穴はなく、後ろにも長い回廊が続いているだけだった。これはもしかしなくても、
「魔法!?転移魔法だよね!?初めて魔法を見た!」
「魔法なんていつも使ってるじゃん。それどころじゃないって。本気でまずいよ。絶対私たちはここにいちゃいけない。こんなことなら日向ぼっこしてればよかった。」
「大丈夫だって。まだ見つかってないみたいだし。」
いざという時はわたしがリリーを無理やり連れてきたのだといえばいい。
「さっと取ってきて、さっと帰ろう。」
そこからは回廊をまっすぐ進み続けた。しばらくするとリリーも落ち着きを取り戻し始めていた。
もっと進んでいくと大きな扉に行き着く。わたしとリリーで目くばせをして、二人で扉を押していく。重く、ゆっくり開いていく扉の中を覗くとそこは大きな広間のようになっていた。真ん中に一段高くなっている場所があり、そこに一筋の光が天井のガラスから差し込んでいる。その光の先に一冊の本がぽつんと置かれている。
近づいていくとそれはかなり古い本だということがわかり、表紙にかすれた文字で『魔道の書』と書かれている。ドクンと胸が大きく弾む。
そっと手に取ってみる。ページをめくってみるとそこには細かくびっしりと文字と図形が並んでいて、時々魔力、魔法薬といった単語が見受けられる。
間違いなく話に聞いた魔道の書だ。
「うそ........。」
リリーがようやく言葉を発する。わたしも同じような気持ちだった。まさかこんなに簡単に魔道の書を手にすることができるなんて想像していなかった。何の計画性もないずさんな侵入ですぐにばれておしまいだと思っていた。
こうしてわたしたちは魔道の書を手に入れた。
◇◇◇◇◇
幾重にも真っ白な布がつるされてた静謐な寝台のの中で一つの人影が体を起こす。寝台の前には小さな妖精が飛んでいる。
「.…様、.......様。」
「大丈夫よ、起きているわ。」
「報告します。あの二人が無事、魔道の書を持って外に出ました。」
「そう........。報告ありがとう。」
寝台の中の影はそう言うと、また身体を白い布に任せて眠りについた。
なろうでよく聞くPV数ってアクセス数のことだったんですね........。
恥ずかしながら初めて知りました........。