2.超絶、退屈だった。
「暇だぁぁぁーーー」
わたしが生まれて数百年。妖精の国は暇だった。びっくりするくらい何も起きない。何もすることがない。新しい妖精が生まれてくることもないし、年老いた妖精が死ぬこともないし(妖精に寿命はない)、妖精の国の周りには妖精女王様が外敵を防ぐ結界を張っているので、外から新しいものが入ってくることもない。妖精がすることといえば一日中日向ぼっこだ。
「どうしたの、急に。」
一緒に日向ぼっこをしていた友達がのっそりと体を起こす。名前はリリー。妖精の中ではわたしの次に若くて(といっても100歳差だが)、面倒くさがりだ。名前のイメージ通り、真っ白でつややかな髪をしている。
「暇すぎる!100年毎日日向ぼっことかわたしどうかしてる!」
「えー、気持ちよくていいじゃん。」
「よくない!今まで100年間日向ぼっこしてきて、これからずーーっと日向ぼっこしてるとか、わたし何のために生まれてきたんだってなるじゃん!」
「また難しいこと考えてる。生まれてきた意味なんて考えてる妖精なんて誰もいないよー。」
「それがおかしいんだって!みんなポヤポヤしすぎ!」
「日向ぼっこが気持ちいいんだもん。そんな難しいこと考えるほうがあほらしく思えてくるよ。ほら見て、この景色を。今日もこの国は平和♡」
「日向ぼっこが気持ちよすぎるのが問題なんだよ!なんか日光にあたってゆっくりするだけで、脳の交感神経が麻痺してぼーっとしてきて、幸せホルモンどばどばみたいな感じになって........。そう、これは麻薬!妖精にとっての一種の麻薬だよ!よくない!」
「何言ってるのかわかんないー。素直に本能に身を任せて日向ぼっこしようよー。」
ガシッとリリーの腕をつかんで、寝転がろうとするのを阻止する。
「ええー。」
リリーが何をするんだという視線を向けてくるが関係ない。また日向ぼっこを始めれば、次に正気に戻るのは100年後だ!
「行くよ!」
「ええー、どこにー。」
「神樹。」
「また、大胆なこと考えるねぇ。」
神樹は妖精の国の中心に位置している大木で、妖精女王様の住まいだ。わたしは一度生まれたときに妖精女王様にお目にかかったが、普段はみんなの前に姿を現すことはほとんどなく、結界の維持のために深い眠りについているそうだ。妖精女王は全ての妖精の親であり、守ってくれている存在であることから、みんなから敬意を持たれている。(妖精が新しく生まれても普通は姿を見せることはないらしく、わたしの時は異例中の異例だったそうだ。)
そんな絶対不可侵のような場所に行こうというのだからリリーがあきれるのも当たり前だ。だけど、わたしは行く!
「一応何をしに行くのか聞いてもいい?」
「魔道の書を手に入れに!」
「うわー、想像以上に面倒だった。」