17.初めての、人間
心地よい風が吹いている。目を開けるといつもと同じ青空が広がっていた。さっきまでのことは夢だったのかと錯覚する。しかし、周りを見渡すと見慣れない森の中でがっかりする。
不意に視界の端っこに移っていた柱が動いく。びっくりして見上げると、その柱は人間の足だった。この世界では初めて人間を見た。大きい。妖精になった自分がどれだけ小さいのかを改めて実感する。その人間は若い男で、黒髪黒目の懐かしい色合いをしているが、顔立ちは日本人というよりはヨーロッパ系に似ている。わたしが顔を上げたことでその男とばっちりと目が合った。
「目覚めた?踏みつけそうになって悪かったね。俺はハンガス、人間だ。君はその小さいサイズを見るに、もしかして妖精?」
相手は朗らかにあいさつをしてくれたが、だんだんと頭が働いてきて、今の状況を思い出して、それどころではなくなった。
「わたしどれくらい寝てた!?」
「1時間くらいかな。」
「1時間!?ごめん、わたし急いでるから行くね!」
「待った。」
急いでいるのに男がわたしをガシッとつかむ。
「何するの!?急いでるの!!」
「君はどこから来たの?」
「は?!今はそんなこと........。」
どうでもいいじゃん、と続けようとして口を閉ざす。その男はうっす気味悪く微笑んでじっと私の様子を見ていた。途端にわたしの警戒心が発動する。
「あなた、何?もしかして人さらい?」
「ははっ、ここでは人さらいっていうより妖精さらいでしょ。大丈夫、安心して。俺は妖精さらいじゃない。」
「それなら、離して!」
わたしを捕まえる手を離そうと引っかいたりかみついたりしてみる。
「ひどいなー。せっかく君を虫とかから守ってあげたのに。感謝してくれてもいいんじゃない?もう一度聞くよ?君はどこから来たの?」
「だから、今はそれどころじゃない!友達も虫に追われて危ないの!」
「もしかして友達も妖精?」
「そうだよ!」
「これはほとんど確定かなぁ........。」
「何が!?」
この男、いちいちイライラする。
「条件次第では君の友達のこと助けてあげてもいいよ。」
「本当に!?」
「うん、本当。もし君が俺のことを君たちが暮らしている場所まで連れて行ってくれたら、君のお友達を助けてあげてもいいよ。」




