猿の男 エピソード0
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怪談や都市伝説的なオカルトアイテム。
猿の手を手に入れた男がいた。
皆様は猿の手という物をご存知だろうか。
古い本が元ネタと聞くが、事実は不明。
そもそもその本の元ネタになった話があったかも知れない。
その猿の手の形だが。
まるで猿の手のミイラみたいな見た目をした、木の枝だという話がある。
むしろ猿の手そのものだったとする話もある。
総じて堅い、枝みたいな姿をしている。
だがこの世界の猿の手は、違う。 斑模様の醜く歪んだ猿の手を連想する花を咲かせる3本の花束だ。
これはこの世界で猿の手を構成するモノが、人々が吐き捨てる悪意と邪な願いから出来ている事にある。
どんな世界でも存在するそれは、願いを3つ叶えるチカラが有ると言う。
だがその願いの叶え方は、呪いそのもの。
金が欲しいと願えば、家族の命や本人の大怪我という代償によって見舞金や保険料という形で手に入る。
死んだ家族を生き返らせて欲しいと願えば、ゾンビ等の正常に生きているとは言えない形で生き返って(?)くる。
ブラックと呼ぶには黒すぎる、ブラックな皮肉を込めた願いの叶え方である。
〜〜〜〜〜〜
そんな猿の手だが、とある男が手に入れた。
「これが本物の願いを叶える道具か」
手に持って観察しているその男は表情が死んでいて、壮絶な人生を送ってきた可能性を窺わせる。
「これがあれば、俺は……」
確かに表情は死んでいるが、よくよく見ると目の奥には炎が灯っていた。
だがしかし、この炎は真っ当なものではなく、あまりにも昏い怨嗟の炎。
これほどの気持ちを抱え、彼はどんな人生を歩んできたのだろうか。
深呼吸する位の間を置き、彼は口を開く。
皮肉に満ちた道具を相手に、怖気は無い。
我欲に満ちた顔つきですらない。
これがどんな物なのかを、かなり精確に分かった上であるようだ。
それでも叶えて欲しい願いがあるらしい。
「俺はもう、この世に期待はしない。 強欲で人を踏み台としか見ていない人間に対しての憎しみをぶつける手段を探していた」
そう、ポツリと吐き捨ててから。
「猿の手に命令する。
俺を今の俺の正常な意識と健康で動き回れる肉体を持ったまま、超常の能力を得る被検体やミュータント液を浴びる等の突発的な要因ではなく直様お前の力でお前と同じく、1人に対して願いを3つ破滅的な形で叶える力を俺に与えろ。
この願い方だとどうせ、食べ物を必要としない体とか死んでもまた人々の呪いで復活とかして死ねない体になるんだろ? それは受け入れてやる。
むしろこれからもそんな連中に痛い目を見せ続けてやれるなら本望だ」
皮肉的な悪い方向で願いを叶える呪いの品の性質を理解し、逆に利用して同等の存在になる。
そんな発想に驚くが、それより眼の前で不思議なことが起きている。
男が手に持っていた猿の手だが、ゆっくりと男の手に、体に沈み込んで行く。
とても痛そうに見えるが、なぜか血は出ておらず物理的に沈み込んでいるのでは無い事が、推察できる。
その様子を自身の目で見て体で感じつつ、何も言わず受け入れている男。
自身の体へ異物が入って行くなんて相当な痛みか拒否感かがあると思うが、動くことの無い表情からはどんな感じがするかは察せられない。
やがて男が目を閉じ、ゆっくりと深呼吸を1度する。
その後、自身の体に変化がないか観察し、少し体を動かして調子の確認を済ませ、おもむろにどこかを目指し歩き出す。
怒りで凶悪につり上がった目と、歪んだ笑みを浮かべながら。
このまま男は様々な人物と出会い、願われ、皮肉的で破滅的な叶え方をして生きて行く事でしょう。
なおこの世界の猿の手は花の形をしているので、猿の手と融合したら雄しべと雌しべがある花として、ふた◯りになるオチも考えたのですが、今の俺の肉体と前提されたので男のままです。 残念。
猿の手はどれだけ皮肉的な流れを封じるために細かく注文しても、漏れた部分からひどい結末を持ってくるんでしょうね。
でもその漏れを完全に防ぎきって願えれば、奇跡の品になりそう。
……まあ無理でしょうが。
例えばこれから買う宝くじを1等当選くじにしろ。
とか願っても、1等宝くじにはするけど、何らかのトラブルで換金出来ないまま抽選が無効になるオチが見えますし。