耕作放棄地と自然災害 その8
最大級のリスクへの備えはした方がいいんだろうけど、それでは日常生活に影響が出る。それはトレードオフ?みたいな関係かなって。
私たちはもしかしたら、今日と同じ明日がずっと続く、災害なんて文明が発展して先端技術が発達した現代では起こらないよねって、慢心や甘えがリスクに対して無防備になっているのかなって思ったこともあるの。
なので確実な災害対策っていうのは、打つことは出来ない。それをしたら日常への負担が大きすぎるから。だから私たちは災害への対策がそこそこしか出来ず、想定外があれば想定よりも遥かに大きいダメージを受けてしまう。
今回のイナゴのこともお父様は私たちの日常の安寧のために事前に話すことはなかったんだろう。今朝話したのは、知るべきタイミングが来たからということだろう。
「それでお父様、蝗害を前提に動くのは分かりましたが、実際にどのような対策をするのでしょう?」
お父様がパリパリと頭を掻いている。
「それなんだがな、実をいうと具体的な対策が何もない。だから、アカネが見た書物にその対策について何か載っていればと思ったんだが……。」
ひょえっ、まさかお父様が困ったと言いつつ、何も対策がなかったなんてそんな。
「お父様、残念ながら私もなにぶん読んだのは昔のことですので、詳細を覚えていませんの。なんとか思い出すように努力致しますわ。」
「そうか、いやすまん。こんな重大なことアカネにお願いしてしまって、思い出したら是非教えて欲しい。それでだな、その他にも具体的な対策が有れば施していきたいがどうだろう。」
「父さん、木や布を食べるんなら石や鉄なんかの鉱物は食べないんだろう?ならそれで防壁か石の小屋を作ってみてはどうかな?」
「なるほど良い案だ。爺様の地下室にいて逃げ延びたというし、それは妙案だな。ただ、コストと時間がかかるのが難点だな。」
ごもっともなお話で、いつ蝗害が来るのか分からないが一年以内に来るのならかなりきついことになる。私たちの家だけではなくて、領民や作物の保管倉庫なんかを全部石造りにするのは正直労働力的にも物資的にもかなり無理なことだと思う。
でも、
「マッシュ兄さん、来年の最低限の種籾を保管しておけば万が一来ても来年の作付けは出来そうですね。」
「うん、そうだろうアカネ。」
「お父様、虫なのですから来ても火で燃やせば良いのではないですか?ほらっ虫って夜間だと火に集まる習性があるでしょう?それを利用して。」
「なるほどキャロットそれも良い案だ。家や畑の周りに松明を置いて近寄れないように火をつけて誘導しよう。」
キャロットちゃんもすごい、私も記憶を思い出せればいいんだけど、虫の習性ってのはいいとこついているよね。虫なんだから、現代ならムシキラーや蚊取り線香が虫には有効なんだけど。
群れになった虫にどこまで効果があるんだろうね。虫が嫌いな香りなら除虫菊とか、マリーゴールドなんだけど。時間もないしどんどん上げていきますわね。
「はい、お父様。思い出したわけではありませんけども、虫の嫌がる香りで忌避剤を作って、周囲に散布するのはどうでしょう?」
「忌避剤?ああ、森に入る時に虫除けに肌に塗る虫除けペーストのことか。それも考慮してみよう。」
あとは、なにかあったかな?虫だから、水攻めもいいと思うのよね、ただ、バッタとイナゴって羽があって空を飛ぶから地面に設置するタイプの罠って効果無さそうなんだよね。
っていうか空中タイプの虫ってかなり厄介よね。防衛するのが平面じゃなくて空間だし、そうなると対策コストもかなりかかる。あー忌避剤も、散布した、地面付近は効果あっても空中から来られると意味ないか。
対処療法、後手に回って防衛している時点で私たちはもう詰んじゃうのね。なら、防衛がダメなら攻撃よね。攻撃は最大の防御っていうし、病も直すなら元からやらないと意味ないし。




