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4:旅

 私はいずれ四十七都道府県すべてに訪れて全国旅行制覇したいと考えている。ここ数年で未踏の地を少しずつ減らしているので、ちょっと振り返りたくなった。

 ちなみに私の旅の目的は基本的にミュージアム&建築物だ。そんな話ばかりしていく。



 まずは青森。

 去年の初冬、雪の降る青森へと旅立った――。

 と書くとなんか旅情とか風情が感じられるが実際単純に寒かった。元々、10月に行くつもりだったが宿をとるのをけっこう間際になっても放置していたら、空室が全然なくて仕方なく11月にした。そこが、寒波が来る日と重なってしまった。私の住む地域は晴れだったが、新幹線で移動するうちに空は薄暗くなり新青森駅に着く頃にはもう窓の外が雪で白くなっていた。

 とはいえ雪国出身の私なので雪の大変さは分かっているし、寒さが苦手なので積雪の予報を見てから冬装備はしっかりした。ダウンジャケットを着て、スノーブーツをワークマンあたりで買って、手袋も毛糸もこもこ帽子もかぶって、暖パンを穿いてヒートテックのレギンスをその下にしのばせ、万全の準備をしたはずだった。だが私が着ていたのは丈が比較的短いダウンジャケットだったために下半身の冷えがすさまじく、暖パンの限界を知った。足元まで伸びるロングなダウンコートを身に着けるべきだったのだ――。出身地での冬場の移動は基本車(というか田舎は基本車社会なので車でしか移動しない)なので、冬の帰省なら短めダウンでもよかったかもしれないが旅先ではバスと徒歩移動だったのでもうだめ。寒い。

 ところで、青森に行く理由はというと三内丸山遺跡さんないまるやまいせきだった。縄文時代の大規模な集落の跡があり、竪穴住居などの縄文時代の建物が再現されている世界文化遺産だ。復元した大型掘立柱建物が有名なのでその写真なら見たことがあるという人もいるかもしれない。

 私が好きな日本史の時代は、縄文時代、奈良時代、明治時代だ。建築を見るのも好きで、竪穴住居も好きなので以前から行きたいと思っていたのが、この三内丸山遺跡だ。

 更に弘前にも行ってみたかった。旧弘前市立図書館という素敵な建築があるし、知り合いがツイッターに弘前に行った写真をのせていて素敵だと感じたからでもある。


 そんなわけで新青森と弘前が目的地の一泊旅行だった。

 新幹線の駅新青森を降りてバスで三内丸山遺跡を目指す。バス停に少し早めに着きすぎて、屋根があっても舞い降りる雪が普通に全身を冷やす状況に既に自分の恰好(短めダウン)を怪しみはじめた。時間ギリギリまで屋内にこもるか迷ったが田舎のバスは本数が少ない、万一逃したらと思うと時間のロスは避けたいし、いつの間にか私の後ろにはバス待ちの乗客がけっこう並んでいた。また並び直すのもなと思い雪のわりと当たる中バスを待っていた。

 待望のバスが到着、前から数えて比較的前の方に並んでいた私はバスに座ることができたが、なんとこのバス、バス停で待っていた乗客を全員乗せられるほどの大きさはないやや小さいバスで、「満員なのでもう乗せられませんごめんね、歩くかタクシー使ってね(意訳)」と言われていた。寒い中早めに待機しはじめておいてよかった~~!!と思った瞬間である。

 そんなに三内丸山遺跡は人気なんだなあと思ったら、その手前のバス停にある青森県立美術館で大半が降りていった。

 三内丸山遺跡の入口である縄文時遊館といういわゆる博物館的な建物の中にまずは入る。観覧料を支払い、時刻は正午を過ぎていたので腹ごしらえを先にする。さすがのミュージアムレストラン、縄文時代に関連するメニューがある。事前にチェックした時から楽しみにしていた「発掘プレート」を注文した。ごはんの中からハマグリの貝殻が発掘できたらラッキーというもので、私は発掘できなかったがホタテが美味しかった。そして外寒いからしばし迷った末に頼んだ「縄文パフェ・極」も美味しかったしパフェに刺さる土偶クッキーが最高に縄文でかわいくてよかった。

 腹ごしらえの後は建物内にある縄文時代の展示物を見て、ついに縄文建築の復元された屋外展示へと向かう――!

 それなりに覚悟をしてきたはずだった。だがここは雪の降る冬にやってくるべきではなかった……。遺跡、けっこう広いんだ……寒い。雪が少しやんでいるタイミングへ外へ出たが、そのうちまた降り始めた。寒い。復元した大型掘立柱建物は本当に大きくて縄文人がんばってるなと感じたし、写真を撮る時に少し空が晴れたのでいい感じに写真が撮れた。その後いくつか竪穴住居を見て、大型竪穴建物というそこそこ広い建物も見れてすごくよかった。この大型竪穴住居なら住んでもいい。暖房があったなら。そんなものはない。縄文時代の人もこの住居の中で火を焚く程度のあたたかさのみで、この雪、この寒さに耐えてきたのだろうか……縄文の冬が体験できるなんてまたとない機会だ。降雪に感謝……と悠久の時をさかのぼるような心のタイムスリップを楽しめたのもせいぜい一分ぐらいのものだった。

 スノーブーツは優秀で雪の中をざっくざくと進んでもしみることなどなかったが、今ではもう薄っぺらく感じるズボンだけでは寒さを防げぬこの身としては早く博物館部分に戻ろ、と帰路を急ぐしかなかった。

 縄文遺跡、めちゃくちゃ楽しかった。でも次来るなら絶対に夏だぞ……と固い決意をして、三内丸山遺跡をあとにした。

 ここが一日目の目的地だったので時間が余った。私のプランBでは時間が余ったら青森県立美術館に行くということになっていたので、近いし歩いて美術館にも行くことにした。バス停ひとつ隣なので近いと思ったが冬場の近いは遠いであった(?)。入口が分からず遠回りをしてしまって無駄に歩いたのもあってまた体が冷え切ってしまった。

 とにかく青森県立美術館に到着だ。その時やっていた企画展示には正直なところそこまでの興味を惹かれなかったしけっこう疲れていたのでもうカフェであったかい飲み物を飲んで休みたいという気分でいっぱいだった。そこでカフェに行ったらこの日はいつもより早めに閉店するという日で、もうやっていなかった。残念だが仕方がない、早く駅に戻ろう……とバスの時間を調べたら一時間後である。田舎あるあるだ、田舎出身のためバスの本数の少なさなど身に染みるほどよく分かっている、仕方があるまい。しかしカフェがやってないとなるとあまり座れるところはなく、入口近くにあるベンチ(入口近くなので当然寒い)に座す。

 ヒマだあ……。

 旅支度は身軽に、をモットーにしているため携帯式充電器なんて持ってないし充電なくなるからスマホばっかいじりたくないし、何していればいいんだろう……寒いし……と一分過ぎるのもとても長く感じる謎の待機時間を過ごした。暇すぎて早めにバス停に行ったら当然のように寒くてもうこの時点で「自分はズボン穿いてないんじゃないか」とすら思えるくらいに足が寒かった。

 何はともあれ、今度は新青森駅ではなく青森駅へ(いいバスがなかったので)やって来た。

 実はホテルは弘前にとってあった。なので青森駅はわりと電車を乗るだけで通り過ぎた。青森駅で向こうのホームに停まっていた青い森鉄道という路線のラッピング電車がかわいかった。モーリーという青い森鉄道のイメージキャラクターが描かれていてかわいかった。

 そして、弘前駅へ着いた。

 先にホテルにチェックインして少しスマホを充電してから夕飯のためにホテルを出る。事前に調べていた青森独自のグルメを食べたくて出てきた居酒屋を目指したらどこも満席。そういえば今日は土曜日だった。ちえ。結局ラーメン屋に入った。津軽チャーシュー麺と納豆オムレツを頼む。納豆オムレツがめちゃくちゃ美味しい、ふわふわ玉子とマヨネーズが合う。ラーメンも美味しくて細縮れ麺の食感というか舌ざわりが楽しい、と当時書いたメモにある。最初に行きたいところじゃなかったけど、普段ラーメン屋は行かないからお店のラーメン食べるの久しぶりで美味しかったし、最終的にはこのラーメン屋にしてよかったと感じた。

 けっこうお腹いっぱいになりながらホテルへ戻る。部屋のユニットバスで熱めのお風呂に入ったら全身ポッカポカで昼間ひたすら冷やされた体がほぐれていくのを感じた。ホカホカしながら眠りにつく。


 二日目、朝食付きプランにしたので朝食バイキングを三回まわる。和食、洋食、カレーとお盆を三回もいっぱいにして昨日居酒屋で食べられなかったいがめんちやホタテ貝焼きその他の青森料理を食べられてご満悦。そしてとにかくりんごにしたい感じのリンゴジュースリンゴドレッシングリンゴゼリーリンゴコンポートリンゴデニッシュ生リンゴリンゴ入りのカレーとリンゴにあふれている素敵な朝食だった。美味しかったし楽しかったしお腹がいっぱいすぎてもはや苦しい。だが心は満ち足りていた――。

 そんな感じで苦しい腹を抱えつつ弘前観光へ。

 この日は雪がやんで、青空がのぞくような好天だった。寒さはあるものの雪がないだけでだいぶ過ごしやすさを感じた。よかった今日私ズボン穿いてる(昨日だって穿いてたよ!)。

 一番の目的は旧弘前市立図書館。ここは明治時代に建てられた赤い屋根の素敵な元図書館。窓は深緑でふちどられており、主観かもしれないがかわいらしい建物だった。晴れてきたから写真もいい感じに撮れた。内部は瀟洒ながら明治を思わせる歴史あるたたずまいで、私の大好きな「昔の建物の階段」があってとてもテンションが上がった。日本の昔の建物、和洋問わずやたらと傾斜があってそこに何故か私はひどく惹かれるのだ。そういう階段はわりと狭かったりするし、その裏側もとてもいい。「階段きた!!」とウキウキするとセットになってるいつもの「この先立ち入り禁止」。昔の建物の階段は上がれないことが多い。たぶん傾斜がきついのであまり安全じゃないからだろう。その立ち入れない神秘性も昔の階段に惹かれる理由のひとつかもしれない。

 そのあとも青森銀行記念館など複数の洋風建築を堪能して回った。弘前はわりと洋風建築の残っている地なので嬉しかった。お昼ご飯は調べていた、建築も素敵なカフェで食べようと思ったのだが、私が見て回った他のどの建築物よりも混んでいて(他の建築物ももっと見に来て……と思った)、思ったより早く建築めぐりを終えてしまったのでまだまだ時間はあるが行列があまり好きではない私は諦めた。時間があるなら、行けないかもと思っていた場所に行けるのではと考えたのもあって一度弘前駅へと戻った。

 ランチの時間だったので弘前駅で何か食べていきたいところだが、なんと朝食バイキングで食べすぎたお腹はまだ全然すいていなかった! なんならまだお腹苦しいのなくなってない。ということで駅ナカにあるまじで軽食しかないカフェでアップルパイとアップルティーというリンゴリンゴしたおやつのようなランチをいただく。アップルパイはさすがリンゴ王国青森、美味しかった。

 次なる目的地は、盛美園せいびえんだ。電車で少し行って徒歩でまた少し行ったところにある明治時代の洋風建築を見に来た。ここは弘前からは離れているから行きたいとは思っていたが時間がどのくらい余るか分からなかったので諦めていた場所なので、訪れることができてよかった。

 盛美園は一階が和風で二階が洋風という独特な建物で、外観がすごくよかったし、和風庭園も楽しめる。この時まだ紅葉もまだ楽しめる時期に急な寒波で雪がある、という時期だったので庭園の紅葉と雪を同時に楽しめるという秋と冬の空間になっているのがまた不思議な場所にいるようでドキドキした。二階部分は公開していなくて残念だったが庭園から建物を満喫した。

 そして帰りの電車の時刻を調べると――また一時間ぐらい待たないといけない。出た、田舎あるある。いいよ別に田舎出身だし知ってる……とはいえ寒い中待つのはつらいので駅の近くに飲食店でもないかと探しに向かう。結論から言うと長居できそうなおしゃれカフェはなかった。だが地域密着型っぽい喫茶店なら発見した。ちょっとだけ入りづらい雰囲気があるが外は寒いので避難させてもらう。パスタとかご飯類はあるがケーキみたいなスイーツはなかったのでホットココアだけいただく。寒さに疲れていたのでホッと一息つけた。

 これで青森で見たいと思っていたものはみんな見れたわけだ。

 帰りの電車の中がかわいいリンゴ提灯で飾られていてとても素敵だった。弘前で本屋に寄って帰りの電車や新幹線で読む本を買ってから新青森駅へ。帰りの新幹線の時間をけっこう遅くにしていたのでわりと時間が余って、お土産売り場をひたすらうろうろしていた。しかも青森土産はけっこう私の興味を惹くものが多く何を選ぶかかなり迷ったし人にあげる用と自分用といろいろ買い込んでしまった。

 さて新幹線に乗って帰路へつく。一昨年ぐらいから旅の帰りの新幹線で駅弁を食べながら帰るというのをするようになっていて、今回はイカとホタテと鶏めしの弁当を買った。美味しかった。

 住まいのある方へ戻ってくると、「たいして寒くないな?」ということに気づく。旅支度は身軽にをモットーにしているので履いてるスノーブーツ以外の靴なんて用意していないし、北国仕様の恰好は暑いくらいですわ……スノーブーツに守られてる感すごいな。日本は縦に長い国だなあと改めて思った。


 そんなこんなで青森旅行は終わった。とにかくリンゴでかわいかったしいい建築がたくさん見られたし縄文時代にタイムスリップできた。でも次は夏に来たいな……! とっても楽しかったです!

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