おばあちゃんのテディベア
私は小学生の女の子。
うちは、お父さんの仕事の都合で引越しをよくする。
所謂転勤族ってやつ。
毎年のように引越しがあるから、あんまり物を増やさないように言われていた。
引越しが大変になるから。
新しい学校では皆温かく迎えてくれて、楽しく過ごせていた。
でも、私は周りの女の子のあいだで流行っていたクマのぬいぐるみを持っていなかった。
家に帰ってから、お父さんとお母さんに相談した。でも、値段も高いし、人気で買うのが難しかったから買ってもらえなかった。
ある日の放課後、女の子達で集まって遊んだ。
皆、流行のぬいぐるみにお洋服を着せて写真を撮ったりして楽しんでいた。
中には、2つ、3つと買ってもらっている子もいた。
クラスの皆が私をお友達にしてくれて嬉しかったけど、話に加わらなくて、少し寂しかった。
家に帰ると、私も新しい学校で馴染むのが大変なように、お父さんとお母さんも、お仕事に慣れるのが大変と疲れて言っていた。
そんな私を可哀想に思ったおばあちゃんが、頑張ってクマのぬいぐるみを作ってくれた。
本物とはちょっと違うんだけど、よく出来ていた。
皆が持っているぬいぐるみとは違って、ボタンで手足が留められていて、それが動く仕掛けのテディベアだった。
大好きなおばあちゃんが作ってくれた、世界に一つだけのぬいぐるみ。
それにクッキーと名前をつけた。
なんでクッキーって名前かというと、クッキーみたいに茶色だから。
クッキーを大事にして、一緒に寝て、お洋服も作った。リボンをつけたりして、可愛がった。
学校であった楽しかったことも、悲しかったことも聞いてもらった。
時々、クッキーが笑ったり、悲しんだりしてるように見える時があった。
お友達に見せたら、凄いとか、可愛いとか褒めてもらえた。
また引越すことになって、色んな物を手放すことになったけど、クッキーは連れていくことにした。その次の引越しの時もそう。一緒に引っ越した。
後から知ったのだけど、おばあちゃんは、お裁縫がそんなに得意ではなかったみたい。
ぬいぐるみを作ったことも、数えるほどしか無かったらしい。
そんなおばあちゃんが、頑張って私の為に作ってくれたのだ。
それから暫く経って、本物の流行のぬいぐるみを買ってもらえた。
それも嬉しかったけど、やっぱりおばあちゃんが作ってくれたぬいぐるみが大切で、古くなってボロボロになった今でも大切に飾っている。