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初めての短編です。よろしくお願いします。
その青年は、撮影をしていた。将来はスピルバーグをも超える監督になるのが夢で、その第一歩として、友人と一緒に短編映画を撮っていた。彼は自分でカメラを持ち、撮影を始める。
「三、二、一、アクション!」
掛け声をかけて、映画を撮る。カメラを持っているので、カチンコは使えない。彼はカメラを回しながら、この映画は我ながらよくできていると思っていた。決して自惚れていたわけではない。だが、これで少しは自分という存在に気付いてもらえるだろうと確信していた。
そして、映画を撮り終わる。俳優として演技してもらっている友人も、かなり自慢できるような演技ができたと言っていた。彼は会話をしながら、車へ戻っていた。そしてそのまま落ちてしまった。
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彼は、気づいたらどこかおかしい場所にいた。言葉の通り、どこかおかしかった。黄色い壁紙、湿ったカーペット、一貫性のない配置の蛍光灯があって、壁で区切られた部屋はどこか統一感があった。そして、常にブーンというどこか不快な音が鳴っている。彼は、ここから脱出した時に友人たちに証拠を見せるために、一緒に落ちていたカメラを拾って、回し始めた。
17 SEP 1999 14:24
>再生します...
ビデオが再生されると、そこは黄色い壁紙、湿ったカーペットに蛍光灯がある、壁で区切られた部屋だった。聞こえるのは彼の息の音と、ブーンという不快な音だった。
「あぁ...頭が痛い...さっきまでニューヨークの路地にいたはずなのに、落とし穴かなにかで落ちちまったみたいだ...だけど、今僕の上には穴はない。多分転がってここまで来たと思うから、天井に穴がないか探してみる。このカメラにも電池があるから、とりあえず今は切っておくよ。」
17 SEP 1999 15:35
>再生します...
画面は、この不可解な大きい部屋を歩いているところから始まる。
「やぁ。天井を探してみたけど、何もなかった。それどころか、少し迷ってしまって、最初のところに戻れなくなってしまったよ。最悪だ。とりあえず、しばらくここを回ってみる。そうすれば、多分出口とか、手掛かりはあると思うから。」
17 SEP 1999 16:44
>再生します...
画面は、先程と同じく、歩いているところから始まっていた。
「やぁ。少し歩い」
その時、右の通路から音がした。ザッ...ザッ...と。まるで、誰かがこのカーペットの上を歩いているような音だった。
画面の動きは止まり、ゆっくり右を向く。
「そこに...そこに誰かいるのか...?もしかして?!人間かもしれない!そうすれば!一緒にこのクソみたいな所を探索する効率が上がる!」
画面は急に動き出し、右の通路にものすごい速度で近づく。まるで走っているかのようだ。そして、あらゆる壁を曲がったり、カメラを覗かせたりして、その人間の存在を確かめようとした。
「おーーーーーい!!!そこに誰かいないかー!安心して出てきてくれー!私は人間だー!君と同じ境遇だー!敵意はない!だから安心して出てきてくれー!」
その声は、必死だった。必死に自分と同じ境遇の存在を求めていた。画面の動きは止まり、彼の荒い息の音が聞こえる。
「よし。とりあえずこのカメラを構えながら走るのは疲れるから、切っておくよ。またなにかあったら記録する。急いで彼を探さないと。」
17 SEP 1999 19:19
>再生します...
画面は急激に動いていた。彼の荒い息遣いが聞こえ、走っている音が聞こえた。曲がり角を曲がり、頻繁に後ろを確認しているのか、よくカメラが横にぶれていた。
「あぁ、あぁ、なんてこった。僕が人間だと思っていたものは人間じゃなかった。今、僕は奴に追われている。君たち、すまない。勝手に僕の夢に付き合ってくれて。お母さん、お父さん、こんな事ならもっと話せばよかった。もっと親孝行してやればよかった。すまない。本当に済まない。」
17 SEP 1999 21:09
>再生します...
画面は、床から上を映す形で撮られていた。
「とりあえず、今日は寝ることにする。おとといから徹夜していて、眠気がすごいから。もしかしたら寝ている途中に見つかって殺されるかもしれないし、そんなに眠れないだろう。とりあえず、おやすみ。明日起きているときに生きていたら、また記録するよ。」
18 SEP 1999 03:23
>再生します...
「おはよう。やっぱり五時間しか眠れなかった。でも、生きて、こうして記録できているだけでも奇跡だよ。お腹は減っているけど、とりあえず、今日も探索を続けることにする。なにかがあったら、また記録するよ。」
18 SEP 1999 05:12
>再生します...
画面は、一つの扉とその隣に窓がある、謎の模様が刻まれた壁の前を映していた。
「なんということだ...ついに...ついに変化を見つけた...!見つけてすぐにカメラを回したから、まだ窓ものぞいてないけど、とりあえず、今から、この扉を開けて、入りたいと、思う。もしかし、たら、何か、脱出の、手掛かりが、ある、かも、しれない、から、」
どんどん息が荒くなる。過呼吸になる。ようやく見つけた手掛かりを前に、紅葉しているのだろう。
「よし、今から...入る...」
カメラを左手に持ち替えたのだろう。画面が少し動き、右手がドアノブにかかる。そして...回す。扉は音もたてずに自然に開いた。中は...
何も、無かった。
「う...そ...だろ...そんなわけ...あるはず...ない...」
絶望の呟きが聞こえ、画面が動く。ゆっくりと部屋の中に入っていっている。そして、部屋の中心に到達したとき...警報が鳴った。赤ランプに、耳をつんざく様なうるさい音が鳴り響く。
「やばい!やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい」
彼は走ってその部屋を出て、なるべく遠くへ行こうとした。
ザッザッザッザッザと後ろで足音が聞こえる。
彼は、近くの段ボールの影に隠れて、息を殺す。
しかし、後ろでドンッという大きな音が聞こえた。カメラが振り返ると、そこには怪物がいて、手を振り下ろす。そして、カメラは上空から落ちて...
18 SEP 1999 05:34
>再生します...
割れた画面は、草を映していた。