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SFC 鬼神降臨伝 ONI

SFCのマイナーRPGをやってみた感想文です。


SFCのRPGとしては名作といっていい作品の一つだと思いました。

GBからのキャリアの積み重ねがある作品なのでシステム面は成熟されていて非常に使い勝手が良いですし、音楽も熟れた感じでハズレが無い安定感があります。そして何よりストーリー展開が最早『職人芸』並にスムースで流れが上手い。実際、このゲームのストーリーはSFCのRPGの中でも特に長尺で、クリアまでに非常に長い時間を要するゲームなのですが、話の流れだけ追っていくには最後まで『飽きない』です。ストーリーの展開が最初から最後まで急展開の連続なのに、よくもまぁこれだけの長い話を着地無しで最後まで繋いだものだと感心してしてしまうような出来映えのストーリーです。正直、かなり面白い。

ストーリーは名作なので、後述にして先に、この良作ゲームの難点から書いてみます。

このゲームがなぜSFCの名作RPGと成り得なかったか、否、充分に名作なのになぜドラクエやFFほど普及しなかったのかと考えると、やはり幾つかの決定的な難点があるからだと感じました。まず、一番単純なところで、キーレスポンスが過敏過ぎます。メニュー画面や戦闘コマンドを選択するとき、ほぼルーレットに近いほどカーソルが高速で動きます。2択のカーソルでさえ、どちらに矢印が止まるか、最早運でしかないくらいカーソルの動きが速い。これが、このゲーム独特の戦闘システムでも厄介で、このゲームの戦闘はコマンド選択式のターン制なのですが、ドラクエみたいに仲間全員で一回のターン制じゃなく、FF6みたいに仲間一人ひとりのターン制のため、5人いる仲間それぞれ順番が回ってきたときに、それぞれ『たたかう』『にげる』『神降ろし(召喚)』『アイテム』など、数多くのコマンドの中から細かく選ばないといけないのですが、その度にルーレット並に速いカーソルを何度も行ったり来たりさせながら合わせなければならないのが物凄く面倒でストレスとなります。

あとは、このゲームには基本レベルというのが無く、FF2のように『たたかう』を使えば『腕力』が上がり、ダメージを受ければ『忍耐力』が上がり、といった具合に戦闘時の行動によって個々のステータスが上がるシステムとなっているため、魔力(信仰心)を上げようと思ったら先述のように選択しづらくてアクションの長い、神降ろし(召喚)をひたすら使うしかないという戦闘の延滞を強いられるのと、攻撃の順序が完全に素早さの値に依存するため、素早さの遅いキャラが動く前に戦闘が終了する事が多く、遅いキャラは何もしないため全く成長しないという不具合があります。

あとは、このゲーム、ストーリーが非常に長いのにHPとMPのカンストが999、基本ステータスのカンストが99なので、普通に全部のザコと戦っていると中盤過ぎには大体の仲間はステータスがカンストします。まあ、それはそれで良いにしても、このゲームの最大の問題点はSFCのRPGの中でも最もエンカウント率が高いRPGである事と、『腕力』が80くらいまで上がると、どんな初期装備の武器でも与えるダメージが999のカンストを叩き出してしまうザル設定なので武器を選ぶ楽しみも無い。終盤あたりになると高エンカウント率で足止めしてくるザコは、戦闘もワンパターンだし戦っても時間の無駄でしかなく、しかも『逃げる』も、一人ひとり個別に選択して全員逃げるまで、戦うより時間がかかるような、非常にバランスの悪い戦闘システムとなっています。『忍耐力』もカンストしてしまうとラスボスからもダメージを受けないくらい硬くなるので、後半は2、3歩歩いて敵が出て、毎回同じパターンで敵をそれぞれ一撃で切り刻んで、また2、3歩歩いての繰り返しで進んで行く事になります。この辺が詰めがあまいというか、せっかくの良いストーリーがもったいないと思ってしまうところです。

以下、ストーリーの大まかな流れです。

鎌倉時代、日本では人間と妖怪が、それぞれ棲み分けて共存していました。妖怪はある程度の秩序をもって平和に暮らしていましたが、人の世は平安末期の戦国時代。壇ノ浦で源氏が平家を撃ち倒し、源頼朝が鎌倉幕府を建てました。しかし、鎌倉幕府創建以降も源氏は身内の間でも争いが絶えず、ある日、将軍頼朝は実の弟である義経の異常なほどの強さとカリスマ性を恐れ、義経とその妻を暗殺してしまいます。

ここから本編が始まります。いきなりネタバレからいきます。

主人公『北斗丸』は義経の子で、義経が殺された際に生まれたばかりの赤子だったため、刺客の恩情によって殺されずに連れ去られて由比ヶ浜に置き去りにされました。翌日、偶然その浜辺に頼朝の実子である頼遠が遊びに来たときに赤ん坊が捨てられているのを見つけ、「自分が育てる」 と言って屋敷に連れて帰りました。それ以来、北斗丸は頼遠の弟分として頼朝の下で成長し13年の時が経ちました。頼遠も頼朝も未だ北斗丸が義経の子だとは気が付いていません。しかし、北斗丸は壇ノ浦の英雄義経の子であるため剣の腕前が並外れています。

その頃、急に鎌倉の都付近に凶暴化した妖怪が現れ始めていました。そんなある日、頼朝の屋敷にも妖怪が出たとのことで、北斗丸と頼遠が頼朝に呼ばれます。そして、屋敷内にいる妖怪を二人で退治しろと言われ、二人は屋敷内を探すと妖怪は姫の部屋にいました。北斗丸と頼遠は妖怪と戦いますが、あと一歩のところで妖怪は姫をさらって「姫を返してほしければ平泉に来い」と言い残して逃げてしまいました。妖怪を取り逃がした上に姫までさらわれてしまった事で頼朝は激怒して主人公達を叱ります。主人公達も自分たちの失態は自分たちで責任をとりたいと言い、姫を奪還するため鎌倉を出て平泉に向かいます。ここから旅の始まりです。平泉までの道中にいろいろあって主要な二人もこの道中で仲間になるのですが、この仲間のうちの一人『火鷹』という剣士が次のストーリーへのキーマンとなります。

平泉にある地底城で『悪路王』という妖怪を倒すと姫を奪還出来るのですが、同時に『鬼丸』という剣も見つけます。すると仲間の火鷹がこの剣を調べ『違う』と判断すると仲間から外れて立ち去ってしまいます。火鷹が言うには『北斗丸達の目的は姫の奪還。自分の目的は日本に5本ある天下五剣を探し出してそれぞれ調べる事。ここでお互いに目的を一つ果たしたので、これ以上一緒に旅を続ける理由はないだろう』とのこと。火鷹と別れ、主人公達は鎌倉に戻ります。

主人公達が鎌倉に戻ると、鎌倉付近はますます妖怪達が増えていました。そんな中、姫を頼朝のところまで連れて帰ると、最近の妖怪の増加について頼朝は 「これは恐らく義経の祟りだろう」 と主人公達に言います。そして、義経の怨霊を封じるために『三種の神器』を集めて、この鎌倉に持ってきてくれないかと言います。

これが、このストーリーの流れの一つの大きな目的です。ただ、このストーリーには天下五剣を全て集めるという、もう一つの話の流れも同時進行になってくるので一見複雑で枝の多いストーリーに見えますが、二つの話を別々に辿っていくとそれぞれはそれほど難しい流れではありません。

始めに、三種の神器の一つ『八咫鏡』は京都にあるという情報を聞き、京都に向かいます。

京都でもいろいろあって、無事に八咫鏡を預かって阿古耶という最後の固定メンバーを仲間にしてから、強そうな神(召喚獣)を求めて京都付近の山々を巡っていると、鞍馬山で『大天狗』に遭遇します。大天狗は、かつて義経に仕えていた『弁慶』の成れの果てで、北斗丸が義経の子であると察します。そしてその事を北斗丸に伝えた事で、北斗丸は、実の両親を殺したのは育ての親である頼朝だったと知ります。さらに鎌倉付近に妖怪を送り込み、自分達が今封じようとしている悪霊義経は自分の実の父であると知り、悩みます。

それでも北斗丸は父と戦うと決め、旅を続けます。その決意を見た大天狗は北斗丸に『近くにある位山という山に登って、そこにいる両面宿難という神様に会ってみると良い』と告げます。北斗丸が位山に登り両面宿難に会うと、北斗丸の潜在能力が覚醒し天下五剣の鬼丸と共振して『鬼』に変身する事が出来るようになります。天下五剣とは、それぞれの剣に適合した人物を鬼に変身させるキーアイテムとなる剣であり、終盤のボスなどは鬼の状態の攻撃しか効かない等の仕様があるため、それを集めるのが旅の目的の一つとなります。鬼に変身するというのは某ゲームの『バーサク』のような状態になり、魔法系は使えなくなりますが、攻撃力がメチャメチャ上がります。ただ、先述したとおり、このゲームはカンストが早いので、後半以降、別に鬼にならなくても敵に与えるダメージはカンストするので、わざわざ魔法の使えない鬼に変身する必要はありません。鬼の攻撃しか受け付けないボス戦専用の変身なのかなと思います。

その後、他の仲間達も『鬼』に変えるべく残りの天下五剣の情報を基に東北に向かっていると、石見にある聖水洞という洞窟の奥で火鷹と再会します。火鷹はこの洞窟で天下五剣の一つである『大典太』を見つけて、この剣が『適合』。無事に鬼に変身する事が出来るようになったので、ここで自身の目的は達成。暇になったので修行がてら北斗丸達の旅に同行する事になります。

その後、なんだかんだで北海道から九州まで巡って天下五剣を全て集め、仲間五人全員が鬼に変身出来るようになります。ここまでがメチャメチャ長い。

そして、全員が鬼に変身出来るようなってからようやく、三種の神器の一つ『草薙の剣』を持っている断絶した平家に会いに行くため壇ノ浦に向かいます。壇ノ浦に行くと、源氏によって討ち滅ぼされた平家の亡霊達に襲われ、NPC含め13人の仲間全員がいとも簡単に死後の世界のへと引きずり込まれてしまいます。

気が付くと、そこは冥界と現世の狭間。冥界へと続く橋の門番曰く『死んでいない者はここから先へは進めない』との事で北斗丸達に襲いかかります。門番を倒しても橋の向こう側から、いくら倒してもきりがないはど大量の魔物が押し寄せてきて捕まってしまい、『永久牢獄』という冥界の牢に投獄されてしまいます。するとそこに不思議な声が聞こえてきて、牢の鍵が開きます。そうして北斗丸達は無事に脱獄しますが、脱獄してすぐに、かつて源氏方だった『木曽義仲』という男に襲われ、勝つと義仲、巴夫妻がNPC仲間になります。

夫妻の案内で『霊鏡の杜』に着き、その一番奥には壇ノ浦の戦いで敗れた平宗盛の霊がいます。宗盛の手下達は源氏への恨みで北斗丸達に襲いかかって来ますが、宗盛は頭の良い人柄で、『現世の混乱の世を鎮める事が出来るなら』と言って三種の神器『草薙の剣』を渡してくれます。

草薙の剣を受け取って杜を出るとまた不思議な声が聞こえてきて、北斗丸達一行は現世の富士の樹海に戻されます。声の主は北斗丸の母、静御前でした。静御前は冥界にいたのですが、直接北斗丸に逢う事無く陰ながら北斗丸を助けていました。そして、最後にひと目会ってお別れとなります。

また、北斗丸達が現世に戻る間際、そうはさせないと大量に襲ってくる平家の怨霊を宗盛と巴が盾となって食い止めて北斗丸達を現世へと戻すシーンは結構感動ものです。すでに霊魂となっている宗盛と巴は、どんなにやられても『死ぬ』事は無いですが、平家の怨霊達もまた、どんなに斬られても死ぬことはない。この夫婦は冥界で永遠に戦い続けるのかと思うと胸が痛くなる話です。

北斗丸達が、やっとの思いで樹海から抜けると目の前に小さな村があります。とりあえず休もうとその小さな村に入ると、その村は『ぬらりひょん』に支配され、ぬらりひょんによって洗脳された村人達が北斗丸達に襲いかかります。相手が人間なので北斗丸達は戦えず、負けそうになったところを大天狗こと武蔵坊弁慶に助けられます。大天狗がぬらりひょんの妖術を解いて村人達を開放したことで、北斗丸達がぬらりひょんと戦おうと向かって行ったところでぬらりひょんは逃げ出して消えてしまいました。

大天狗は先に北斗丸達と別れた後、単独で義経や源氏の事を調べていました。大天狗がこれまでに調べた話によると、鎌倉に大量の妖怪を送り込んでいるのは確かに義経の怨霊らしいとの事。しかし、その義経の怨霊を裏で操っているのは、さっきいた、ぬらりひょん。義経は頼朝に妻諸共殺された時、確かに頼朝に強い恨みを抱いていました。義経の剣豪振りと、その強く人を恨む気持ちを感じとったぬらりひょんは死した義経に近づき、その体に妖怪としての新たな命を与え、義経を妖怪の世界の王に仕立て上げようとしているとの事でした。

北斗丸達は平泉の北の草原にある妖怪迷宮に向かい、妖怪迷宮の途中でぬらりひょんを倒し、その一番奥にいる怨霊となった義経と戦います。義経は始め正気で、北斗丸が我が子だと知ると『正気を失う前に、その手で私を殺してくれ』と懇願してきます。北斗丸が『父上、そんな事できません』と言っていると、義経は鬼に変身してしまいます。北斗丸が鬼に変身できたのは義経の性質を受け継いだからだと分かります。戦闘が終了すると、死に際にまた義経は正気に戻り『北斗丸、ありがとう』と言って死にます。

その後、北斗丸達一行はこれまでの経緯の報告と、とりあえず二つ集めた三種の神器をどうするかを頼朝に相談するため鎌倉に戻ります。しかし、鎌倉、頼朝の様子が少しおかしくなっています。鎌倉周辺に妖怪は一切いなくなっていましたが、それは義経がいなくなった事による成果ではなく、頼朝が軍備を必要以上に強化して目に見える妖怪を全て討ち殺しているからだと云うのです。その真意を確かめるため北斗丸達は頼朝の元に行きますが、そこにいたのはかつての頼朝ではなく、鬼神の如く妖怪狩りを楽しむ頼朝でした。そして、三種の神器の一つ『八尺瓊勾玉』は既に頼朝が持っていて、頼朝の目的は『三種の神器を集めて全て破壊して怨霊や妖怪を開放し、己の圧倒的な力を妖怪にも人間にも見せつける事で、妖怪も人間も一緒に住む統一されたこの世を支配する王となる』事を目論んでいると知ることとなります。

当然の如く、北斗丸達一行は頼朝と戦い、頼朝を撃ち倒してエンディングかと思いきや、ラスボスは梶原景時という頼朝の側近の大老です。梶原景時は、このストーリー本編の最初から出てくる頼朝の側近ですが、実は『魔神尼美湖』という魔物が化けていた姿であり、この尼美湖が頼朝を洗脳してこの世を支配しようとしていたのでした。

尼美湖を倒すとエンディングで『人間も妖怪も共存出来る平和な世の中になって良かった良かった』みたいなエンディングとしてこのゲームは終わるのですが、ちょっと待って頂きたい。北斗丸達は、魔神尼美湖によって洗脳され正気を失っていたとはいえ実の父親を殺めています。尼美湖に洗脳されていなければ頼朝もいい人だったかもしれないし、義経から怨まれるような事をしなかったかもしれない。それを尼美湖を最後にして頼朝も義経も殺めてしまって、果たして全て『めでたしめでたし』だけで終わってしまって良いのだろうか?という疑問の残るエンディングとなっている作品です。

また、このゲームには裏ボスが存在します。その裏ボスに到達するには始めからその到達条件を知っていなければ到達は不可能となっています。その条件はそれほど難しいものではなく、全ての神(召喚獣)をコンプリートして、ストーリー上必要ないと思われる『氷の花』というアイテムを最後まで所持していれば裏ボスである頼朝の妻、北条政子の正体『般若』と遭遇出来るのですが、このゲームは後半になると先に攻略したフィールドには戻れない仕様になっているため、後半に差し掛かる前に神のコンプリートと氷の花を所持しておかないと裏ボスに会うことは出来なくなります。つまり、序盤から裏ボスと戦う事を目的に収集しておかないと裏ボスに会うことは出来ない仕様になっているため、後半になってから裏ボス戦まで堪能したいと思っても、既にその時点ではどうやっても不可能になるので、一回で全てのストーリーを見たいと思うなら、完全攻略ページの閲覧が必須となります。

以上、様々な難点を含んだゲームではありますが、一本のソフトとしてのRPGとしては、ストーリーが長尺であるにも関わらず途中で飽きるような事もない『最後まで面白い』作品なので、私的にはイチオシしたいと思えるゲームでした。

私的には名作だと思いました。

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