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神々の愛し子は転生王子  作者: ヤッペ丸
第一章 王宮編
1/6

第一話 地獄から抜け出して

以前あげたのをもう一度あげたやつです

 僕はこの世界が嫌いで、そしてその世界に生きている自分が嫌で、高いビルから飛び降りた。何階かは知らないけど、多分十階は超えているのは確かだ。

 飛び降りた時、体は宙にふわりと少し浮き、ジェットコースターのように早く頭から真っ逆さまに落下し、そして後頭部から地面に着地した––––気がする。

 痛みはきっとあったと思うけど、それより僕はやっと死ねた事に嬉しくて、痛みより嬉しさが勝った。やっと、解放されるんだって。

 はい、これで僕の人生終了。さよなら日本、さよなら地球、さよなら平凡だった僕…………お疲れ様。

 そう心を軽くし目蓋を閉じて息を引き取り、あの世に行った。


 筈だった。


 拝啓元両親へ


お元気ですか?今は夏の頃でしょう。日本はやたらと暑くてクーラーをつけてもアイスのようにドロドロに溶けてしまうでしょう。

ちなみに僕は、今現在、湖で4人の神様に囲まれながら、のんびり船を漕いでいます。




 ……って、なんで神様がそばにいるんだ–––––!!




 °•.•°•.•°•.•°•.•°•.•°•.•°•.•°•.•°•.•°•.•°•.•°•.•°•.•°


 僕は白鐘(しろがね)ハル、高校三年生と、もうすぐ卒業間近だった。

 自分の両親、母親は人気女優として名が通っていて、父親は人気ベストセラー作家の間から生まれた。もちろん何不自由なく暮らせた。容姿も美人な母と中性的美男子の父の良いところ全部受け継いで、自分で言うのもなんだが、父親似のイケメンだ。

 明るい茶髪、キリッとした焦げ茶の釣り目、そして手足が長く高身長、クラスでは一番背が高かった。成績も学年一位を維持する程の優等生、おまけに生徒会の役員と、超エリート生徒のつもり

 もちろんそこそこモテた。それは女子だけではなく男性からも、トラック一台分は毎年もらっていた。

 ナルシストな言い方になるが、成績優秀スポーツ万能、そしてこの容姿、間違いなく勝ち組まっしぐらだった。


 あの時までは––––––––。



「はじめまして、*****です」



 今ではもう名前や顔は思い出せないけど、ある日やって来た転校生によって、僕の人生は一気に崩れ落ちた。

 成績、運動神経、容姿はそれ程良かった訳ではないが、そいつは有名財閥の息子で、みんなはそいつに媚を売るようになった。

 アイツが来る前のクラスの空気はとても穏やかで、青春って感じだったけど、そいつが来てからなんだかよそよそしく、アイツに媚び売ろうとか、少しでも繋がろう、仲良くなろうとアイツの言われた通りに動いたり、機嫌を損ねないようにとやけに必死に見えた。

 なんかそいつに関わるのが面倒だなと本能がいっていて、僕は関わらないよう常に距離を置くようにした……だが。



「ねぇ、ここどうすればいいのか教えて?」

「やり方教えて」

「どうすればそんなにカッコ良くなれるの?」

「ねぇメアド教えて」

「一緒に遊びに行こうよ~」

「ハルちんって、モテモテだよね。どうすればそんなにモテるの?」



 そいつはもうストーカー級に僕につきまとい、何度も何度もしつこく話しかけたり、関わってきた。

 僕はとにかくうざくてそいつを払いのけようとしていたが、そいつの取り巻き達がしつこくしつこくネチネチネチネチと、仲良くするようにとくどくど言われ、仕方なく上辺だけの関係で適当に付き合った。周りから見れば親しい友人関係に見えていただろう、まぁそれっぽく振る舞っていたから、見えて当然だろう。

 これで少しはマシになるだろうと思っていた。だが、そいつのストーカー級はそれだけで収まらなかった。そいつは急に僕の持つもの全てを欲しがった。

 金持ちなんだから、自分で買えよ。と言うが、コイツはそういうのではなく、僕が持つものだから欲しがった。もともと変なやつだと思っていたから、別に気にしなかった。いや、ここで気にするべきだった。

 はじめはシャーペンや消しゴムなど、そういった小物を欲しがった。ここまでは別によかった。いや別に本当にいいわけじゃ無いけど。だが次にノートや教科書、鞄や制服、私服や家、更に家族まで欲しがった。

 さすがにおかしいだろう。何でそこまで自分が持つものを欲しがる、いや、奪うのだろう。そしてコイツは、更にエスカレートしてついには…。



『俺、君自身が欲しいな』



 ついには僕自身を欲しがった。いつから?もしかしたら、はじめっから僕を狙っていたのかもしれない、だから僕に近づいたんだ。そう思うと背筋が凍りつく程寒気を感じた。

 本能が叫んでいる、今すぐ逃げろ……と。

 僕は怖くて逃げた。必要なもの全て鞄に押し込み、手早く両親に置き手紙をして家から出て行った。夜の街の中を走り、走り、息が荒くなりながらも、息苦しくても走り続けた。

 終電ギリギリの適当な電車に乗り込み、そのまま終点までガタゴトガタゴトと揺られながら夜の景色を窓越しから見つめた。

 終点まで着き、僕はどこか泊まれるホテルか宿を探した。正直手持ちは少ないから、安価のホテルしか泊まれない。それでも構わない、少しでも安心できる場所に行きたかった。もしお金が足りなければ、どこかバイトを募集しているところに行けばいい、そう思いながらスマホで近場の安価のホテルを探した。

 しかし、それが甘かった。安価じゃなく、ちゃんとしっかりしたホテルを探せばよかったと後悔した。

 僕は見つけた安価のカプセルホテルに入ろうと足を踏み入れようとしたその瞬間、誰かに肩を掴まれて、ゆっくりと振り返ったら、そこには満面な笑みを浮かべたアイツが立っていた。しかしその笑みは形だけの笑顔、まるで凍り付かせるほど冷え切った笑みだった。

 迂闊だった、僕を欲しいと言ったコイツは、手に入れるまでどこまでもついてくる、追いかけてくる、捕まえようと手を伸ばしてくる。

 

 あぁ、逃げても……無駄なんだ。


 そう思い知らされた。


 翌日の朝、何事もなかったかのように、いつも通り登校して来た。だが、みんなが僕を見る目が変わっていた。嘲笑っているような目で見ていた、あぁ、愚かな奴だな、なんて目で見ている。

 実際にそう見られていたのかわからないが、精神的に不安定だった僕には、汚いものを見るような目で見られている気がして不安に押し潰されそうになった。

 そこから一気に変わった。成績や運動、容姿はいつも通りだったが、僕はアイツのパシリとされた。命令されればされるがままにされ、逆らえばみんなからの針のような視線を送られる。あんなに仲が良かった友人やクラスメイト達が、アイツによって変わってしまった、簡単に作り替えられてしまった。その真実に、今まで過ごして来た時間は、一体なんだったんだと、自嘲した。

 地獄だ、僕はどうしてこんな目に会わなければならないんだ。アイツに何かした覚えは何もない。それに初対面だったし、何かをする理由なんてどこにもない。じゃあ一体、アイツは何がしたかったんだ?面白可笑しいおもちゃが欲しかったのだろうか、多分そうだろう、今の僕は……アイツに簡単に操られる人形そのものだ。滑稽だろう。

 僕は早く、この高校を卒業して、アイツから解放されたい、自由になりたいと願うばかり。けど卒業すればアイツとはもう会わない、解放されるんだと、少しの希望を抱いた。

 帰りの教室で、僕はアイツに頼まれた宿題をこなしていたら、そいつがやってきて。

 「終わったよ」と課題のノートを渡し、早くこいつから離れたいと急いで帰ろうとして、アイツがいきなり腕を掴まれ引き寄せられた瞬間、僕の唇に唇を重ねてきた。

 引き離そうとしても、相手の方が力が強く、逃げられなかった。

 何故自分がキスされているのかわからない、ただ言えるのは、気持ちが悪い。無理矢理口の隙間から舌を入れてきて、自分の舌に絡まって、ネチネチと口内を犯された。

 吐き気がした。今すぐにでも手洗い場に向かって、そこで念入りに口をゆすぎたい。感覚がなくなるで、何度でも、何度でもゆすぎたかった。だが、ずっと無理矢理しつこく口内を犯された。

 暫くして満足したのかやっと唇が離れて、僕はフラリと足元がふらついて近くの机に身を預け、足りない分の酸素を取り込むように深く呼吸を繰り返して、苦しくていつの間にか流れていた涙を拭い、ゆっくりと立ち直す。

 これで解放されると思ったら、今度はいきなり押し倒された。思いっきり頭を打って、なんなんだと思いきや、アイツは制服に手をかけてドンドン脱がされ、下着を剥ぎ取られ裸にされた。

 やめろと抵抗しようとしても、さっきのせいで上手く力が入らず、抵抗は虚しく、そいつのいいようにされた。結果、僕の童貞…いや、処女を奪われた。唇だけでなく尻処女まで奪った。

 最悪だった。嫌だと叫ぼうと嘆こうと、アイツは聞き入れず自分のやりたい放題にした。そのせいでナカが傷ついて血溜まりができ、何もかも汚された。

 しかもそいつは、その様子を動画に収め、ニヤニヤと笑みを浮かべていた。


「これをばら撒かれたくなかったら、一生俺の奴隷になるんだな」


 奈落の底に突き落とされた気分だ。この男は僕から何もかも奪い、奪い、奪い、地獄の底へと吸い込まれていく感じがした。僕は潰されたんだ、プライドを……希望を……。

 その日から、僕はそいつに脅されながら、従順な奴隷とされた。両親に助けを求めても、両親はすでにアイツに買収されていて、助けてくれる人は誰もいなかった。

 孤独だ。友達と思っていた奴らも、今では奴の言いなりの下僕、僕よりずっとマシさ。

 僕はどんな手を使ってでもアイツから逃げたい、その手段として、自殺を図った。何度自殺しようとしただろう。だが全て、アイツが阻止し、お仕置きと言う名の無理矢理の性行為を強いられて、犯されていった。


「逃げようとしたら、許さないからね。ハルちん」


 なんてったって–––––––––君は、俺のものなんだから。


 悪魔の笑みだ。

 もう嫌だ、逃げたい、でも逃げられない。助けて、助けてくれる人もいない、信用できるやつなんて、どこにもいない。僕を救う人、場所、その全て、どこにもなかった。

 アイツが来るまで、僕の人生は優しかった。幸せだった。なのになんで、なんでこうなるんだ。

 憎い、憎い、この国が、この世界が、そして、この弱い自分自身が。


「––––死にたい」


 誰もいないところで、出来るだけ小さな声で呟いた。

 いつしか、それが口癖になり、ただ死ぬだけを目標にして、何度も自殺をしようと繰り返していき、いつの間にか自分から生気を感じなくなってきた。ただ頭の中では、死にたい、死にたいと何度も繰り返していた。

 そんなある日の夜僕は、アイツがいない時、狙われていない時を見計らい、あるビルの裏口に入り、一気に最上階、屋上へとつづく階段を駆け上り、たどり着いた。

 夜景が綺麗だった、いくつものビルの光、車の光が交差して、キラキラと世界を照らしているように見えた。ここから飛び降りれば、僕はアイツから解放される、もう2度と、あんな目に合わなくて済む。



 自由になるんだ。



 僕はなんの躊躇いもなく足が動き、ゆっくりと格子を乗り越えて、楽になれるんだと安心したからか、涙が溢れて、久しぶりに笑いながらビルから飛び降りた。

 どんどん落ちる速度が早くなり、どんどん地面に向かって落下して、後頭部から地面に着き、そこはもう血溜まりとなった……はずだ。本当はどうなっているのかわからない。けど、そんな事はどうでも良かった。

 解放されたんだと心が弾む気持ちだっだ、もうあんな奴なんかに会わなくて済むんだ。やっと願いが叶った、それだけで満足たった。


 そう思って瞼を開けたら、4人の美形の男性女性達に囲まれていた。というか、見下ろされていた。

 1人はどこにでもいそうな平凡顔のメガネをかけた男、1人はよく見かける金髪チャラ男、1人は新宿原宿とかでよく見かけるギャル、1人は神秘的な雰囲気を出している美少女だった。

 この人達は一体何者なんだ、僕はビルから飛び降りて、死んだはずだ。なのにどうして、かすり傷負っていない。僕はまたしても、あの男に助けられて、今もこうして、奴が来るのを待たされているのか。

 嫌だ、もう嫌なんだ。これ以上、僕になにしようってんだ。なにもしていない、神様が本当にいるなら、助けてくれよ。もう、辛いのは…苦しいのは……嫌なんだ。


「えっと、白鐘ハル君…かな?」

「……はい、僕が白鐘です。貴方達は、アイツの従者かなんかだろう。なら、さっさと済ませてくれって言ってくれ。こんな状態、さっさと終わらせたいから」


 僕は膝を抱え、顔を埋めかせた。

 現実から逃げたくて、今アイツの手のひらで踊らされるのが、無茶苦茶嫌だから、けどアイツは自分の思い通りにならないと無茶苦茶キレるから、色々と思考回路が矛盾して、おかしくなっている。はぁ、マジで胸糞悪い。

 アイツは、どこまでも僕の人生を狂わせ、希望を潰し、絶望へと誘うのだろう。


「あのさぁ、アタシ達、従者じゃないんですけど」

「じゃあ、下僕かなんかですか?それとも奴隷ですか?」

「あ、あの、私達はそのどちらでもないの」

「じゃあ、なんなんですか!!どれでもないのなら、アンタ達は一体なんなんだよ」


 言い方が完全に八つ当たりだし、最低だな。このギャルと女の子は、別になんだって関係ないのに、それなのに僕は、苛ついているからってこんな人に当たり散らすような言い方、はぁ、性根が腐ったな。まぁ、あんな事を毎回繰り返されれば、いやでも腐るか。

 すると美少女は優しく僕の肩に触れてきた。そして自分を見る瞳を見て、何故か安心している自分がいた。


「君の事は、『天界の鏡』から見させてもらったよ。辛い思いをしていたようで。ですが、もう大丈夫です。貴方の念願と言うのでしょうか、貴方はビルから飛び降り、そのままお亡くなりになられました」


 ………………え。


「つまり僕は…死ねたんですか?本当の本当にですか?」

「はい。ですからもう、大丈夫ですよ」


 僕は……やっと死ねたんだ。アイツから、やっと逃げる事が出来たんだ。もう、あんな屈辱的な日々を、生きていた感覚のないあの日常から、あの世界から、逃げられたんだ。

 現実逃避みたいな言い方だけど、凄く、物凄く嬉しい。やっと、アイツから解放されて、自由になれたんだ、泣いても…いいのかな。だめだ、目尻からもう涙が出てくる。

 僕はやっと悲願を達成できて、凄く嬉しすぎて、今まで溜まっていた分の涙が、洪水から溢れてしまい、ついにダムが崩壊したような感じで、涙が止まらなかった。

 やっと、やっとなんだ–––––––。

 僕は情けなく、子供のように声を上げて泣いた。嬉しくて嬉しくて、自由を手にする事が出来た事に、泣かずにはいられなかった。

 するとメガネをかけた青年が恐る恐る僕の隣に立ち、柔和な笑みを浮かべた。なんだろう、凄くホッとする感じがする。なんというか、見ているだけで癒される。

 青年はポケットからピンクの花の刺繍の入ったハンカチを渡して来てくれて、一言お礼を言ってから、ハンカチで涙を拭った。


「あの……ところで、貴方方は一体…?」


 今になって思った。さっきは勢いで聞いたが、改めて彼らは何者なんだと疑問符を浮かべる。


「えっとですね、僕らは君達が言う所の“神”という存在です」

「神……って、あの神様?本物の?」

「はい。僕は、生命の神のラフュイです」


 神と名乗る青年が、ニッコリと自分の名前を名乗ると、その後ろからチャラ男が前のめりに僕に顔を近づけ、にぱっと白い歯を見せて笑顔を見せた。


「俺は、太陽神兼月神のソライムだ。見た目こんな感じだけど、これでも心は繊細だから」

「そういえば、ハル君と話をする前、自分と話して平気かな?怖がられないかな?なんて心配してたもんね」

「ちょっ、それ言うなって言っただろ、メルティアナ」


 メルティアナと呼ばれたギャルは腰に手を当てながらニコッと微笑んだ。


「アタシはメルティアナ、愛を司る愛の神、というところかな?そんで、隣にいるこのこのお方は、創造神のミュウ様」

「創造神のミュウです、宜しくね、ハル君」


 創造神と名乗る少女は、可愛らしく朗らかな笑みを浮かべ、ペコリと頭を下げた。僕はつい余所余所しく頭を下げた。

 なんだろう、彼女とはどこかであった気がするんだよね。なんでだろうなぁ。初対面な筈なのに……なんだろう、この感覚。

 するとソライムさんはいきなり僕を肩に担いだ。


「な、何するんですかいきなり!」

「何って、決まっているだろう。今からお前をどう転生するのか決める為に、選定するに決まっているだろう」


 選定するなら、まず担がなくていいと思うんだけど。この人、悪い人では無いと思うけど、行動が大胆というか、なんというか、大雑把というのかな?

 うーんと頭の中で思考を巡らせていると、ミュウさんは分厚い本で軽くソライムさんの頭を叩いた。こんな大人しそうな子が、意外にもそんな事が出来るんだな。


「ソライムさん、別に担がなくて平気です。それに、いくらソライムさんがいい人だからといって、男の人に担がれるのは、彼が困っているのでは?」

「えっ、そうだったか、ごめんね」

「あ、いえ、気にしないでください」


 ソライムさんは僕を下ろし、もう一度「ごめんね」と、本当に申し訳なさそうに謝った。なんか、こうして人(?)に謝られたのは、久しぶりかもしれない。

 今までは、アイツの思うようにこき使われて、悪い事をしても、全部僕のせいにされて、いつもみんなから刺さるような冷たい視線を浴びてきたから、こう優しく接しされると、なんか、凄くむず痒いというか、こんな事は何度もしたりされたりしてきたのに、今更何に照れるんだよ。

 照れて顔を赤面にさせていると、ソライムさんは覗き込むように僕の顔を見て、少し驚いたような表情だったが、すぐに優しい笑みを見せた。


「そうだ、選定は聖水の泉の広場でやらないか?あそこは気が楽になるし、何より周りの景色は綺麗で最っ高だ。どうだい、ハル君」

「えっ、そう…ですね。うーん……えっと、そこがとても綺麗な場所なら、一度見てみたいですね」

「よしわかった、まぁそこは本当は神様以外あまり連れてきては行けないけど、特別に許可しよう」


 本当に連れてきちゃいけない所に連れてこうとするとか、この人、きちんと神様の務め果たせているのか?


「あ、ちなみに言い忘れてたけど、俺達は神だから、君の考えは全部聞こえているからね」


 とりあえずコイツは神様だった。というか、声が聞こえるのなら、無闇に考えない方がいいな。いや、それは無理だな。思考がなければ人はただの頭の悪い猿も同然だろうな、いや、猿もバカにしちゃいけないな。本当、腐ったな。まだ猿の方がマシだろう。





 しばらく歩き続けて、僕と神様4人は、ある泉の前に来た。そしてそこから少し離れた先に、ボート乗り場があり、僕と神様4人は一番大きいボートに乗って泉の上を漕いだ。

 泉の色は、埃や汚れなんて何一つなく、触れるのが恐れ多く感じるほど、とても透き通っていて、光に反射するたびにキラキラと輝いていた。日本じゃ、こんなに綺麗な泉なんて、どこを探したってない。

 周りを見ると、青々しく木々が生い茂っていて、中には葉が白く、その気の幹さえも純白で、真っ白な木が生えていた。それに、見たことない植物も生えている。

 前までは、草木なんかにまったくもって興味なかったけど、こうして見ると、案外楽しいかも。例えるならば、ワンダーランドのような、そんな感じだ。


「気に入ってもらえたようですね」

「はぁ、まぁはい。見たことの無い植物が沢山ありますから、見てて飽きないと言いますか–––––––」

「そろそろ、ハル君の転生場所を決めないか?こうしているうちに、もうすぐ5年が経つぜ」

「5年?」

「そっか、目覚めたばかりだからわからないよね。ここ神の領域は、君が生きていた地球とは、時間の流れがここより遅くて、地球時間が1分だとして、この世界では、1日なの。つまり、1時間経つと、60日は経過しているの。貴方がこの世界に招かれて目を覚ますまでの時間は、地球時間で言うところ、大体約27時間くらい、そしてこの世界では、4年と半年です」


 僕この世界に来て、そんなに時間経っていたんだ。はぁ、通りでやたらと体がダルい訳だ。寝過ぎると、体は鈍るからね。

 コキコキと手足をストレッチしていると、ミュウさんは空に向けて手を伸ばし、そこからポンッと少し分厚い本が現れた。なんの本かとジーっと見ていたら、ミュウさんが真剣な眼差しでこちらを見てきた。


「それでは、今から貴方の転生先を選定しましょう」


 ミュウはとても真剣な顔で見てきたので、唾を飲み込んだ。これから、僕の転生先が決まるんだと、少しワクワクしている自分がいた。




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