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僕はほんの少し魔法が使える  作者: 白洲詠人
絡まった蛇の足 Side P
68/69

Side P-8 僕は現(うつつ)へ還る。

ひ孫たちに差し出された謎の魔道具の中をちらと見たフィリップの脳裏に、突如稲妻が走る。

(んんん…!?こ、これは………)


フィリップはすっくと立ち上がる。

「あ、あの…」「ひいお祖父様…」

ひ孫達が見つめる中、フィリップはアイテムストレージから取り出す。


チキュウからくすねて来た、鉄の巨人の残骸を!!


「こ…これは………」

さすがにたまげるひ孫達に、フィリップは、

「よく見て。この巨人の膝下を…中身が見えてるでしょ…」


「これは…私達が探し求めていたエネルギー源…」

ひ孫達は巨人の内部を凝視し、そして互いを見つめ合う。


「ウズメさん!!僕の役目は終わった。帰らせてもらう!」

フィリップとモリガンの背後に空間の歪みが生まれる。フィリップはその中に入ろうとすると、2人のひ孫が止める。

「待って…待って下さい、ひいお祖父様!!」「もっと、もっと私達に教えて下さい!!」


「甘えられるんじゃあない!!」

フィリップが一喝すると、ビクッと振るえる2人。フィリップは続ける。

「君達に僕の事がどう伝わっているか知らないけど、自分を紛い物と蔑んだ世界に一泡ふかせてやりたかっただけの矮小な男、それが僕の正体だ。

僕の存在を過去の遺物にしてみせろ。でないと君等は僕に潰されてしまうぞ。

後は自分達でやりなさい。大丈夫、僕に出来て君等に出来ない訳が無い。それじゃ。」


そう言い残して、フィリップはモリガンと空間の歪みの中へ消えて行った。


後に残された2人のひ孫達は、消え行く曾祖父母と空間の歪みをしばし呆然と見つめていたが、やがてどちらからともなく見つめ合い、深く頷き合った…


     ※     ※     ※


それから時は流れ………


『港街』付近の海の見える人気の無い入江に、並んで座るひ孫達…


「エルフのひいひいお祖父様達…帰って行っちゃったね。妖精界に…」

「これで『境の街』の町長の次男坊も『ニール』を名乗る事を止め、『パイライト』乗っ取りの野望も捨ててくれるでしょうね…」

何より、これでもう彼の事を、祖母の代にこの『中央大陸』を捨てた分家の出と蔑む者もいないだろう。


遠くで鳴くカモメの声を聞きながら、少年が呟く。

「ひいお祖父様すごかったね…僕だけじゃあどうにもならなかった…」

少年は思い出していた。『新大陸』から『中央大陸』の『港街』に渡って来て、初めて訪れた曾祖父母の墓。海の向こうの『新大陸』を見つめ、今もなお、自分達の営みを見下ろしているかの様な…

「ひいお祖父様はあの丘の上から、一体何を見て、どれだけの事を知っておられるのだろう…」


その言葉に、隣りに座っていた女性が、少年の胸に自身の頭を寄せ、優しく言う。

「ひいお祖父様はすごかった、そして、あなたもすごかった。」

その言葉に恋人の顔を見つめる少年。彼女は上目遣いに言う。

「…過去に囚われるのはもうお終い。私が興味があるのは、今と、未来の事だけ。私とあなた、2人の未来…」


少年は彼女の肩を抱き、2人で海空を見つめる。微かな海風が、恋人達の周りを優しく吹き抜けて行った…


     ※     ※     ※


「あらあら…」


モリガンは呆れ声で言った。彼女の目の前には、本を開いたまま、机に伏して眠るフィリップと、まだ5歳のスティーブ…父の読書の真似をして坊やも隣りで本を読み始め、2人揃って居眠りしてしまったのだ。


「まあ、わたしもついさっきまでうとうとしてたんだけど…」

モリガンが言うと、ポコっ!彼女のお腹が蹴られた。

「おやおや…あなたもおきたみたいねぇ。さっきまでおとなしかったのに…」

モリガンは大きくなった自身のお腹を愛おしそうに撫でた。もうすぐ彼女に会えるだろう。


スティーブが広げている本の背表紙には、”Science”、フィリップが広げている本の背表紙には、”Advanced Science”。フィリップの本の広げられたページの最後には、こう書かれていた。


“...Thus, we finally discovered the MAGnetIC monopole and we call them ‘Blue Stones’ and ‘Red Stones’...”


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